最終話:「最初で最後の、実行犯です」
※少々、残虐描写チックなところがあります。ご注意下さい。
懐かしのお城に戻ってこれました。
ザケナーさんと初めてお会いして、10年の歳月が流れました。
『レイボー』王政の打倒に成功し、ザケナーさんが王様になることが出来ました。
そして、私の敵討ちの対象であるレイボーさんは、まだ生きています。
長生きしていただいてこんなに嬉しいと思ったことはないですね。
いまは、両腕と、両足を縛り上げて、王座の前に連行してもらっています。
『ありがたくない』ことに、私の存在は、国民、皆さんの知られることになってしまいました。
神様が使わした神秘の道具、御使いという設定で、国中に知れ渡りました。
私はザケナーさんを王様にするために。
その血族の正当性を証明するために。
私の声は、私を持った人にしか聞こえません。
ザケナーさんに、代わりに宣言してもらいます。
「これより、神の御使い、スマホさんによる裁きとなる。
レイボーの血族にも処罰を下すが、我々を苦しめ続けたレイボーは、スマホさんが直接、処罰を下す!」
私はずっと自分のことを『スマホさん』と呼んでいただいていました。
様付けとか、殿付けとか、嫌いだったもので。
王様とのやりとりだけでしたら、それで良かったのでしょうが、民衆の方々に宣言する際は、少々しまりませんね。
苦笑してしまいます。
長かったですね。
もう、色々とガタガタです。
電池の持ちが良かったのは、アプリを一切入れなかった、あの人のおかげかも知れません。
新橋駅でぶん投げられた事は、いまだに忘れていませんけど。
さて、ザケナーさんの手で、私のことをレイボーさんの手に握らせ、それからさらに拘束させてもらいます。
防火対策もばっちりです。
床は石材ですから燃えません。
四方を鉄の板で覆ってもらって、その中心にレイボーさんがいます。
「はじめまして、レイボーさん。
『スマートフォン』と申します」
「聞こえる。私を陥れた悪魔の使いの声が!」
私を初めて持った方の定番の反応、ありがとうございますね。
それもこれで最後です。感慨深い。
「数々の卑劣な罠で、我々に厄災をもたらした悪魔が!」
「悪魔で構いませんよ。
家族を殺されたら、どんな人でも怒ります。
加害者のくせして、被害者ヅラするのは、おやめなさい」
ドスを効かせた声で伝えたら、ひるんでくれました。
「手短にいきましょう。
あなたを道連れにします」
私は、電池の方に、気合を入れました。
最後は、こうしようと決めていました。
もう寿命です。最後は発火して、一緒に燃えてやろうと考えたんですよ。
燃えやすい服を着させ、魔法でこの空間に油性の霧を掛けてもらっています。
予定通り私の発火によって、レイボーさんと私は、あっという間に、炎に包まれます。
ああ、レイボーさんが何かわめいてますね。
でも、もう、良く聞き取れません。
今まで、ずーっと、自分の手を汚していない私の『最後のけじめ』です。
この世界でずーっと、私だけが、物理的に傷つきませんでした。
それを少々、引け目に感じていた時期もありましたから。
このことだけは、満足出来ましたね。
まったく、神様は100年寝るとか言ってましたけど、1度も顔を出しませんでしたね。
はー、まったく。
でも、それで良かったかも知れません。
ザケナーさんは、私のことを『永久に語り継ぐ』とか言っていましたけど……
特にそういうのは求めていませんが、あえて止めませんでした。
もう、疲れてしまっていたんでしょうね。
ああ、終わった。
そう最後に思いながら、私という存在は消滅したのでした。
スマートフォンが異世界にて永久に
-完-
というわけで、随分と間が空いてしまいましたが、お話としては完結になります。
読んでいただきありがとうございました。