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第4話:マニュアルは必要ありませんでした

皆様に、大事なご報告があります。

ドナールさんが、『文字』というものを知らないそうです。

日本語を知らないのとは話が違って、この世界の人間社会、まだ『文字』がないんですって!

『言葉』は確かにありますけど『文字』が無いんですよ。

魔法とかは口伝のみで伝えてるそうです。

んー、そういえば昔のアイヌの方達って、そういう文明なんでしたっけ?

ないわけではないんでしょうね。

私の知識量って、新橋駅で私をぶん投げた持ち主に準拠してるみたいです。

30代サラリーマンの一般的くらいな知識量というところですか。

知識量って意味で言えば、検索すれば完璧超人なんですけどねー、出来ないですけどー。

文字がないということは、まあ、マニュアル必要ないですね。ええ。


持ってませんけどー。


私の操作は、文字読めなくても出来ましたね、さすが直感というか指でやれば誰でも使える。

人間じゃなくても使えるって話になりますね。

まあ、その話はおいておいて。

「ははは、何かスマホさんに映っているとは思っていたのですよ。

気にしていませんでした。

それが、スマホさんのいた世界の『言葉』なのですね」

「ええ、そうなんです。気にしないで操作していたことにはちょっと驚きました」

「すいません、後でお聞きしようとは思っていたのですが、聞きそびれましたね」

「まあ、お気になさらずに。旅路の間に色々お話しましょう」

「そうですね」


さてさて、馬に揺られて、騎士団の方々と一緒にお城へ向かっております。

皆さんのイメージするお馬さんより、一回り小さい感じですかね。

競走馬とロバの中間くらいなイメージです。

あと、今日は騎士団の方々ともお話しました。

軽く挨拶をするのみとしました。

方々と言っても、ドナールさんを含めて5人の方ですね。

最初は、同じようなやりとりをしました。

声出しているのは私ですよーって伝えるわけです。

慣れないといけませんねー。

騎士団の方々には、私の存在は秘密にしていただくようお願いしました。

一応『神様からの御使い』と言われても、間違いではないとは思いますが。

この世界の方に、私は私のことを知ってほしくないと思いました。

あまり直接的に、この世界に関わりたくはないのです。

偽善な気もしますけど。

神様も、勘違いしているんですよ。


スマートフォンは万能機じゃないんですよ。


なんでも言えば叶うと思った方が、私を持ったら失望するだけですよ。

私には、物理的干渉力が一切無いわけですから。

ん~、私自身を、軽くて絶対壊れない投擲武器として扱えるでしょうけど。

それは、してほしくありませんし。

投げられるのは、新橋駅の構内レンガにぶつかったのが、最後にしていただきたい。


「そういえば数字ってわかります?

感覚で良いんですけども」

「数のことですか?」

「数をなにかに書いたことはありますか?」

私は今、ドナールさんの皮鎧の胸元部に巻きつけてもらっています。

皮鎧越しでも会話が出来る事を発見しました。

「『書く』ですか?」

「絵を描くということと、同様な意味になります」

ドナールさんが悩みます。

これ本当の異文化交流ですね。お互いの価値観と世界観が離れているわけですから。

「地面に棒で丸を描く。書いた数をお互い数える。

そのようなことはしたことはあります。

ただ、数そのものを何かで表現したことはありません」

「なるほどなるほど。伝わりました。

すいません、悩ませてしまいまして」

それから、この世界、と言いますか、今の人間社会は『100』までしか存在しないんだそうです。

私「200」

ドナールさん「100が2個ですね」

私「1000」

ドナールさん「100が10個もあるんですね、多いですね」

というように、ずっと100が何個かという表現しかならないんですもの。

数で言う10万という数字が、100の塊が、100個あって、それが10個ある。

とか、そういう表現にしかならないのですよ。

一部の方には、つまらないお話かもしれませんけど、私にとっては結構衝撃だったんですよね。

神様が、100より大きい数字を表現出来なかったのも、この人間社会にまだなかったためだったんですね。


「文字はですね。

数を何かで描いて表現するのと同義にはなります。

この世の中全ての事柄を、何かに描いて表現するようなことなんですよ」

文学者の方がいらっしゃたら、謝っておきますね。私の主観で話をしていますので。

「言葉を、実際の『もの』から置き換えたものになるとも言いますか」

どうかなー、これで伝わるかなー。

神様も変換機能がどこまで有効かなー。

「なんとなくは、解ってきたような気がします。

実際に、スマホさんに表示されるものが『文字』なわけですから。

今の我々には無いけども、実在するものがあるわけですよね」

「そうですそうです。イメージが伝わればまずはありがたいです。

そして、問題は『文字』があれば便利ということです」

「便利ですか?」

「そうです。言葉だけでも意志の疎通は出来ますが、大勢の人間で認識を共有するのには『文字』が必要と考えます」

「人間社会の発展には『文字』が必要なわけですね。なるほど、納得しました」

「納得ですか?」

そこまで私、そこまで説明出来てましたかね?

「ええ。実は、私達の領土の北部にオーガ種族の方々がいます。

彼らは彼らで、文明圏を築いています。

その彼らが、最近、動物の皮に何か絵が描いてあるものを持ち歩くようになった、というのが噂になっているのですよ」

「オーガ種族ですか? えと、たぶん2,3mくらい普通に大きい方々?」

「そうです」

「噂というのは、どれくらい前からですか?」

「3年くらい前です。

オーガ種族の動向は、我々人間にとっては死活問題です。常に動向を探ってはいるのです」

人間文明より、オーガさん達が文明レベル高くなってるってことですか?

3年ですか……これって、色々とまずい気がします。

ん~、神様がこの世界に私を転生させた理由が、なんとなく解った気がします。

文明育成シミュレーションゲームでしたら、差が大きくなり始めているところなわけですよね。

ちなみに、年周期も私のいた世界に近いみたいです。

100以上の数がないので、30日が12個で1年という概念ですね。

同様に、春夏秋冬の季節もあるとのこと。

私は考えこんでしまいます。

「ふむ、この流れですと、スマホさんが、我々に『文字』を授けてくれるというわけですね」

ドナールさんの言葉に、私は押し黙ります。

そうです、流れ的にそうなりますよね。

でも、それって本当にいいのか、すごく迷うわけですよ。

私は、この世界にとっては『異物』なんです。

神様は、この人間社会を救うために私を送り込んだわけですが、その大きな要素が、私の世界の『言葉』を彼らに伝えること。

そう思います。

「どうかなさいましたか? 考え込んでおられるようですが?」

「……そうですね。文化、文明というのは、たやすく世界を変えてしまうと考えます。

言い出しておして申し訳ありませんが、簡単に世界そのものへの影響が大きいことをするというのは、悩みます。

自分の行動には、責任を持ちたいと思うと余計に迷うんですよ」

「責任をですか?」

「ええ、私はモノです。人ではありません。

ですのでモノだからこそ、人の役にたちたいと思っています。

私の行動が、逆に人の迷惑にならないかを考えてしまいます」

「スマホさんは、優しい方ですね。

悩むというのは相手への気遣いからかと思います。

そのお気持ちは汲ませていただきますが、今の私達の状況は芳しくないことをご理解いただきたい。

私は、王国が存続するためなら、どんなことも為す覚悟があります。

なので、我々に『文字』を教えて下さい。

我々というのに、抵抗があるのなら、私に教えて下さい。

それならば、抵抗感も和らぐと思いますが」


……でた。


お知り合いになって数日ですけど、こういうところで絶対曲げない人なのは良く解りました。

「では、こうしましょう。一緒に『文字』を作っていきましょう。

この世界の人達が使うものを、ドナールさんと一緒になって作っていきたいと思います。

それでどうでしょうか?」

「『教える』ではなく、『作っていく』ですか?」

「ええ。そうです。

そちらの方が楽しいと思います」

「ああ、なるほど。それは良いですね。

私達の文化を私達で作りますよ。あなたの責任にはさせません。

そちらの方が確かに好みですよ」

ドナールさんの笑顔が眩しいです。

私は、この世界の人間の方に多大に干渉する覚悟を決めました。

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