第3話:私の特技は画像を撮ることです
10ヶ月ぶりくらいです。終わらせるので続きです。
直接の残虐描写はありませんが、ちょっと類似する描写があります。ご注意下さい。
私が異世界にやってきてから、一夜明けました。
1日の長さというのは、私のいた世界とあまり変わらないみたいです。
1日が24時間という考え方は無くて、朝、昼、夜くらいでしか分けてないみたいです。
この世界の方々は。
昨日の夜にドナールさんに、4時間ほど魔力をこめていただいて、電池は100%になりました。
ん~、20%くらいからの充電なので、20%で1時間くらい掛かります。
実際に、会話が出来る状態ですと、1%減るのに1時間の消費になります。
結構、効率悪い気がしますね。
スリープモードだと周りの音だけが聞こえる状態になります。
基本、スリープモードで持ち歩いていただくようお願いしております。
あと、怖くてまだ、電源そのものは切っていただいてはいません。
いやー、だってですね……
電源切ったら、二度と再起動、出来ないんじゃないかと思って怖いんですよ。
だって、あの神様、信用出来る方じゃないじゃないですかー。
でも……そういう場合もいつか必要かもしれませんね。
極端に電池が減ってしまった時には。
と言いましても、生? 生きるということでしょうか?
二度目の人生、まあもとい、スマホ生でのやり直しみたいなものですから。
ん?……現代社会での私って、自我とか無かったから、一度目って人生とも呼べないんじゃ?
あ、この話やめましょう。泥沼です。
やめやめ。
さてはて、それからですね、私に1つ特技が見つかったんです。
めでたいことです。
それは!
画像を撮ることです!!
だって、この異世界で画像を取ることが出来るのは私だけですから。
例えば、世界で1人しかやっていない競技でしたら、その人が世界1位ですものね。
ならば、私の特技は『画像を撮ること』と断言しても間違っておりません。
私、すごいです。
私の特技です。
……素に戻ると、かなりの空しさがきますね、これ。せつない。
「すごいですね、スマホさん。
こんなに広い景色をこの中に収めることが出来るなんて」
「ありがとうございます。
ほめられたことがないので嬉しいです」
ドナールさんは私を使って、この村の画像を撮っております。
昨日の夜、そこそこ使い方を覚えてもらいました。
ドナールさん、飲み込み早いです。
……SNSとか、マップ機能だとかは、軒並み『圏外』なので全く使えませんでしたけど。
未来永劫そうなんでしょうねー。もう、期待してもしょうがないです。
今日、この村を出てお城の戻るとのこと。
出発の時間まで、まだ時間があるので朝の村風景を眺めております。
「これならば、子供の頃の夢が叶いそうですね」
「どんな夢なんです?」
「地図を作りたいのです。
大まかな地図は確かにあるのですが、距離をしっかり測ったものはないのですよ。
地図もそうですが、私はもっとこの世界を広く知りたいのです。
それを皆で共有したい。そうすれば、もっと暮らしが楽になると思っているのです」
聞きました、奥様?
って、なんでしょうかね、奥様って突然言い出して。
大変、申し訳ありません。
イケメンが、しんみり自分の夢をつぶやくなんて、なんて素敵なんでしょう。
いやー、私の持ち主がドナールさんで良かったですよ。
ルックス悪くて、性格悪い方でしたら、職務放棄してましたね、ほんと。
「そうですね、良いですね。
私もこの世界を色々と見てみたいです。
画像で色々な場所を撮ってみていただきたいです」
「ええ、私もそれを望みますよ」
「あとは、スマホさん、少々、おつらいかもしれませんがお願いしたいことがあります」
「私が出来ることでしたらなんなりと」
機嫌の良い私は軽く応えてしまいます。
「ありがとうございます。
でしたら、私は彼の画像を撮りたいのです」
ん?
彼の画像?
えー、申し訳ありません。
この先はですね、割愛して端的に。
ちょっと苦手な方には申し訳ありませんが。
ドナールさんが討伐した魔法使いさんはですね、首を刎ねられております。
罪人の首を持っていくのはしきたりだそうです。
ただ、だいたい持って帰るまでにもたないので、確認作業よりも形式になっているとのこと。
はい、想像がつくと思います。
私のフォルダ内に、お遺体の画像が数枚保管されました。
いやー、異世界生活2日目に、現代社会の日本だったら、他人に見せられないスマートフォンになるとは思いませんでした。
致し方無しです。