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7.風花の年齢は……


読んでいただいて有難うございます。

ブックマーク登録有難うございます。


 風花の年齢を聞いて、レオンハルトとカーディナル、リカルド、の三人は、風花が勘違いをしているのだと思った。特に薬師のカーディナルは、風花の骨格を見て年齢を十三歳だと判断していた。


 レオンハルトは風花の事を、九歳か十歳程度とみていた。実年齢より少し上に言うと子供が喜ぶので、ワザと十二歳だと、言ったのだ。それがまさか、二十一歳だなどと、言われるとは想定外もいいところだった……


もしもフーカが言う通りで、見た目も二十一歳の娘だったなら……出会った時に手を出していたかもしれない……

レオンハルトの胸中は、複雑だった。




 風花は日本では、二十一歳の女子大生だった。

だがその身体は、火災によって多くを失っていた……


光の女神リュミエールに、火災によって受けた損傷を廃棄され、再構築された風花の身体は、身体年齢も、大きさ(サイズ)も、十四歳の頃まで戻っていた。


そうとは知らなかった風花は、持っている記憶のまま、自分の年齢は二十一歳だと、三人に言ったのだった。





「それで、リカルド副長……相手がまだ子供とはいえ長々と……いつまでフーカを抱きしめているのです?いいかげん、離しなさい!!」



 カーディナルは風花を膝に乗せたまま、いつまでたっても離さないでいるリカルドを注意していた。

リカルドは甲冑を着けたままだったので、風花を抱きかかえていても、直接触れ合っている感覚が無く、リカルドも、抱きかかえられている風花も、まるで意識していなかった。


 風花は、男性の膝の上で抱きかかえられている事実を思い出し、顔を真っ赤にして、暴れだした。


「は、離してぇ……」


 風花に離してと、懇願されたリカルドが手を離すと、逃げる様に膝の上から飛び降りた。

リカルドの膝の上に座っている時、風花の足は床に付いていなかった。

十四歳の風花の身体は、全体的に縮んでいた……

勝手が違う体の感覚に、飛び降りて着地する事が上手く出来なかった風花は、バランスを崩して前にいたカーディナルに倒れこんでしまった。



「危ない!……何をやってるんですか、フーカ。君が二十一歳だなんて、骨格から考えて、あり得ませんよ……」



 カーディナルから指摘を受けた風花は、唖然としていた。自分の身体が十四歳に戻っている事をしらない風花にしてみれば、自分の年齢を聞かれれば二十一歳というしかなかったのだ。



「寝る前に、女神様にお祈りして尋ねてごらんなさい。夢枕に立たれて、本当の年齢を、教えて下さるかもしれませんよ。今の君は急に故郷、家族から離れて、混乱している様ですからね……」


「そうだな、それがいいかも知れんな……」


「そうですよ。フーカが二十一歳なんて……不憫すぎます」



「ぐぬぬ……」


 レオンハルトとリカルド、カーディナルの三人は、風花が二十一歳だという事を、まるっきり信じていなかった。


 レオンハルトには、女子供が見たら失神するか泣き叫ぶかする様な凄惨な出来事を、目の前で見せてしまった事で風花が混乱しているのでは?……という罪悪感もあった。



「……フーカ、嫌かもしれないが、今日はこのまま、この天幕で過ごしてほしい。俺か、リカルドが常に一緒にいるが、いいか?」



 風花がどうしようか考えていると、カーディナルが不穏な事を言い出した。



「フーカ、君が関わった怪我人は、傷が全て完治していました。軽傷とはいえ、あり得ない事です。特別製の塗り薬が効いた、と納得させましたが、完治したのが君の能力(ギフト)によるものだと人々が気付いたら……」



「碌な事にはならないだろうねぇ……特に、教会関係者の耳に入れば……」


リカルドは低い声で、脅かす様につぶやいた……


「フーカ、お前の望まない事はしない、誰にもさせない……相手が何であっても、俺がお前を護る。だから、逃げたりしないでくれ」


「隊長だけでなく、俺だってフーカを守るよ……」


レオンハルトに続けて風花を護ると言ったリカルド……二人の言葉を聞いて、カーディナルはウンウン、と頷いていた。


「あ……あの……」


 迷っていた風花だったが、ライオン隊長の言葉を信じよう……と、心を決めるのだった。


「よ、よろしくお願いします」


 ライオン隊長とカーディナル、そしてリカルドに向けて下げた頭を上げ、微笑んだ風花を見た三人は、心を撃ち抜かれたような気がした。



 なんだ……この可愛い生き物……

レオンハルトは、風花を可愛らしい愛玩動物の様に、囲い込んで、自分だけに懐く様に甘やかしたいと思った。



 可愛いですねぇ……こんな可愛い娘がいたら、いいですねぇ……癒されますねぇ……

男の子しかいないカーディナルは、娘がほしいと零す妻の願いを叶える為にも、風花を養女として迎える事を、とてもいい考えだと思い始めていた。


 かわいい……こんな子に、お兄様って、呼ばれたい……

男兄弟しかいないリカルドは、可愛い妹が欲しかった。両親を説得して、養女にしてもらえば、可愛い妹が出来る。リカルドは心の中で、一人ガッツポーズをしていた。



 ???……何だか、背中がゾクッとした……

三人を見ると、私の事をジッと見ている……何で?



 ジリッ、ジリッと、笑顔を張り付けた三人が迫ってくる。そして、三人はにこやかに私に手を差し出した。

まるで、お見合い番組の告白タイムか何かの様だ。出会ったばかりの、良く知らない相手の手を、しかも三択で選べなんて、無理……

全力でスルーさせていただいた……




 ******



「そういえば……隊長さん、さっき辺境伯様の所に、一緒に行ってほしいって、言ってましたよね?」



 年齢の話をする前に、ライオン隊長が言っていた……

辺境伯って国境付近を守る貴族で……有事に素早く対応するために、領土や権限が、他の貴族より大きいんだったかな……検索すれば、詳しくわかるかも知れないけど、ここで出すのは悪手だよねぇ、多分……



「もしかして隊長さんの守備隊って、辺境伯様直属って事ですか?」



「……ほぅ、何故そう思う?」


 ライオン隊長の目が、急に険しくなった気がしたが、風花は、怯むことなく言葉を続けた。


「だって国に属しているんだったら、辺境伯様じゃなく、別な人の所に連れて行こうとするかな?って……」


「へぇ、フーカって、案外賢いね。これは、侮れないかな……」



ぅ?何だろう、リカルドさんの纏う空気が変わった……警戒?ううん、不審人物に、認定されちゃった?余計な事言っちゃったかな……


「それか、王様のいる所が遠いから、近くの有力者の所に、取りあえず連れて行って、判断を仰ぐっていう事なのかなぁ~って……」


そう言えば、ここが何処なのか、国の名前とか聞いてなかった。


「隊長さん、私が始めにいた場所が『ラッセン』とかいうのは聞いたけど、ここって、何ていう国なの?私はこれからどうなるの?」


 私が国の名前も知らない事で、リカルドさんは呆れたような顔をしていた。そして、これからどうなるのか何も説明されていない事に、リカルドさんは隊長の事をジトっとした目で見ていた。


カーディナルさんも、あきれた様に隊長の居る方を振り返って、えぇ~っ、って表情で、二回も振り返っていた。



「あ、ああ……フーカの話ばかり聞いて、説明してなかったな……それにしても、国の名前も知らんとは、な……」

 フーカがいたのは、どんな所だったのか……


 隊長さんは残念な子供を見る様な目で私を見ながら、椅子に座るよう手で示した。座ろうと思ったけど、椅子の座面が腰の位置より若干高い……どうしよう、座れない……

私は椅子を前にして、呆然と立ちつくしていた……



「ぶふっ……くくっくっ……」


始めに噴き出したのは、リカルドだった。


「ふふっ……小さいのだからしょうがないですよ、ねぇ、フーカ……」


 カーディナルさんは、笑いながら残念な子を見る様に、私を見た。そして、笑いを押さえながら、こう言った。


「私の膝に乗りますか?それとも、君が椅子に座れるように、持ち上げましょうか?どうします?フーカ?」


「そんな事、薬師のカーディナル殿にはご迷惑でしょう?私がしますよ」


「いや、だからリカルドは、独身なんだから止めなさいって……」


 二人が言い合いを始めた。どうして当人の私の意見を聞かないのだ?距離を取って、二人を眺めていたら、ちょうどいい感じの箱があった。


私は言い合っている二人を放置して、隊長さんの側まで椅子を移動してから、その箱を踏み台代わりにして、一人で椅子に座った。どうよ?一人で出来たわよ。

私は思いっきりドヤ顔で、隊長さんの事を見た。


 隊長さんは目を丸くしたあと、私の頭を軽くポンポンと叩くと、顔を寄せて囁いた。


「騒がしいから、距離が近いけどいいか?」


隊長さんがそんな事を言ったので、私は無言で頷いた。


それから、隊長さんが私に、おおまかに説明を始めた。


「……っと、先ずはフーカが今居る此処は、ダンガールド辺境領……で、国の名前だがこの国はローゼンという。王都は、ローダンセで王がいる城もそこにある。ここからは、二週間ぐらいかかるな……」



 ライオン隊長の説明によると、此処は国境にあるラッセンと、バンデールという町との中間位に位置している場所だということだった。


 国境を接する隣国フランクの兵に、フランク国の辺境モンフォールからローゼン国の国境の街ラッセンからバンデールという町まで侵攻され戦場となってしまった。

隊長さんの率いる、ダンガルディ守備隊が迎撃し、フランクの兵をラッセンまで追撃して来たのだという。


隊長さんに助けてもらえなかったら、私はあのまま……モンフォールまで連れて行かれていたかもしれない。私は改めて、隊長さんに感謝の言葉を述べた。


 バンデールからリカルドさんが引き連れてきた領民と、ラッセンで生き残った領民を合流させる為に、中間地点である此処で野営して、安全な街ローシェンには、明日の朝移動を始めるという。守備隊は更にその先、ダンガールド辺境領の領都セントールへ向うということだった。


 私はセントールで、ダンガルディ辺境伯と対面しなくてはならないらしい……ライオン隊長は、辺境伯様なら私を悪いようにはしないだろうから、安心していいと言う……イヤイヤ私的にはまるで安心出来ないのだけど……


 不安ばかりだけど、考えていてもしょうがない……色々と補足説明が必要です。


 光の女神リュミエール様、わからない事があります。

教えて下さい、お願いします。


 私は、夢の中で女神様に会えるように、お祈り(おねがい)してから簡易ベッドに横たわった。のんびりまったり、好きな様に生きるのは簡単には出来ないね……

それとも、使命的な何かがあるのだろうか?

まさか魔王討伐は、無いよね。……まさかね?


 そんな事を考えていたら、いつの間にかウトウトして、

深い眠りに落ちていた。


 ……女神様に、会えますように…



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