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33.護衛隊員 ランドルフ


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 作業を終えた風花がトレーニングルームから出ようと扉を開けると、城内警備担当なのか守備隊の隊員が通路に立っていた。


その隊員は風花に気が付くと、いきなり跪き風花の右手を両手で自分顔の前に引き寄せていた。


「フーカ様ですね。フーカ様の警護を担当する事になりました護衛担当のランドルフと申します。どうぞ、ランディとお呼び下さい」


そう言うとランドルフは、風花の右手の甲に唇を落とした。


「ぅひゃっ!」


 突然の事に狼狽えた風花は女子らしからぬ声を出し、勢いよく右手を自身の身体に引き寄せた。ランドルフは狼狽えた風花の様子に頭を下げ口元に手をやり、肩を大きく震わせていた。


「っく……くくっ」


 ぬぅう……笑ってるし……

表面上笑うのを堪えようとして、堪え切れずに笑っているランドルフに、風花は太陽で干からびたミミズが雨で()()()()()様子を見る様に嫌悪感タップリの目で見ていた。


「くくっ……ゴホン、失礼致しました。これから、どちらへ?」


「……アルフレッド様の所へ行きたいです」


「了解です。では……此方へ」



 ランドルフは何も無かったような表情(かお)で、風花に左手を差し出した。

風花はニコッと口角を上げ、右手でランドルフの左手を思いっきり叩くと、パンっと予期せず大きな音が響いた。


 塩対応に驚いたランドルフが、風花に目をやると、顔をしかめて舌を出していた。


ランドルフは目を大きく見開くと、大笑いした。


「ちょっ、笑いすぎ!笑い過ぎだから!!」


風花は口を尖らせ、ランドルフを恨めしそうに睨みつけていた。


「ブフッ……」

 口尖らせて、睨んでる可愛いなぁ……


ランドルフは辺境伯の執務室に着くまで、肩を震わせ、笑い続けていた。


「ハァ……」

 奴め……笑い上戸か!


 含み笑いが止まらないランドルフの様子に、風花は小さく溜息を吐いた。



 執務室まで風花を案内してきたランドルフは、執務室のドアをノックし、風花を案内してきたと告げるのだった。


入室を許可する声が聞こえると、ランドルフは風花と共に入室し、付かず離れずの距離で守護する様に風花の背後に立った。


「フーカ、作業は終わったのか?」


 アルフレッドは風花の顔を見ると、風花を手招きした。そんなアルフレッドの様子にコストナーは片眉を上げ、息を吐いた。


「はぁ、仕事になりませんねぇ……休憩しましょう……」


 コストナーは机の上にあるベルを鳴らし、メイドにお茶の用意をする様に言うのだった。


 アルフレッドは風花をソファに座らせると、自分はその隣に座った。


間も無く、お茶の用意をしたマリーとアイシャが執務室へ入ってきた。


愛想笑い一つすることも無く、黙々とお茶の支度をするマリーをアイシャが心配そうにチラッと見ては、知らない振りをしていた。


二人が何故か、普段の様子と違う事に風花は気が付いていた。コストナーは二人の……というよりアイシャの落ち着きのない様子を不審に思っていた。



「そういえばフーカも……部屋に入った時、様子が変でしたね」


 風花の対面に座っていたコストナーは、飲んでいたカップをソーサーに戻しテーブルに置くと、風花の顔を正面から見据えた。


「うぇ゛っ?」


コストナーの鋭い眼差しに焦った風花は、変な声を出していた。


「フーカ?顔が赤い……」


アルフレッドは、すぐ隣に座っている風花の顔を両手で押さえ、お互いの額を合わせた。


「!」


「熱は無いようだが……」


そう言ってアルフレッドが額を離すと、風花の顔は先程よりも真っ赤に染まっていた。


「何やってんですか……」


風花の顔から手を離そうとしないアルフレッドを、コストナーは呆れたようにジトっとした目で見ていた。


隣にいる男(アルフレッド)に、額と額を合わされ、手の平を額に当てられたりうなじに触れられたりして、耳まで赤くなってしまった風花にコストナーは憐憫の目を向けていた。


 うぅ~、アルフレッド様のばぁかぁ!セクハラ大王!


風花は沸き上がる羞恥心に涙目になりながら、心の中で悪態をついていた。


「それはそうとフーカ、部屋の改装……ええっと、“とれぇにんぐるぅむ”でした、か……は出来たのですか?」


「イエス、ボス!……トレーニングルーム……練習場なので短く『ジム』と言いますね」


「いえす?……『ジム』ですか……まぁ、言いやすくていいですね……」


「そうですね……それで、『ジム』ですけど、ほぼ出来上がっています。あとは実際に使ってみて、調整する感じでしょうか……」


 早速見に行こうと、アルフレッドはソファから立ち上がろうと腰を上げた。


「あの、カーディナルさんとアビゲイル様の二人を呼んでいただいてもいいでしょうか?」


「ここ(執務室)にか?」


「ち、違います、アルフレッド様……ジムまで来て欲しいんです」


「お二人をですか……」


 コストナーは風花に確認するかのように聞き直した。


「駄目でしょうか?」


「駄目じゃない……が、姉上はマックスの側を離れがたいだろうな……」


「そう、ですね……ですが、カーディナルさんには来て欲しいです」


「……わかった。マリー、マックスの部屋にいるカーディナルを、一階の備蓄用の空き部屋まで連れて来てくれ」


 アルフレッドの指示にマリーは返事をするとランドルフを横目でチラッと見てから部屋を出て行った。


 アルフレッドと風花は、アイシャと風花の護衛ランドルフを伴い、一階のジムへと移動するのだった。


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