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31.部屋探し

読んでいただいて、ありがとうございます。




 マクシミリアンが自分の脚が動くことを認識した。

それはマクシミリアンにとって大きな一歩だと、風花は思うのだった。


 成長期の五年間、動かさずに、筋力の無い脚に、筋肉をつけて……いや、その前にストレッチとか、体操が必要?いずれにしろ、脚が動いたからといって、すぐに歩く事は出来ないだろう……


 私はアビゲイル様と抱き合って喜んでいる、カーディナルさんに声をかけた。


「カーディナルさん、お話ししたい事が……」


「フーカ!」


話しかけた途端、カーディナルさんに抱きしめられてしまった。


「有難う……有難う、フーカ……」


「フーカ……マックスの脚を治してくれて有難う……」


 アビゲイル様に、カーディナルさんの反対側から抱きしめられた。


サンドイッチハグだ……


「私は何も……マックスが、頑張ったから、それに……」


「フ、フーカ……」


ドタン……


 ベッドの端から、立ち上がろうとしたマックスが床に倒れていた。


 私はサンドイッチハグから抜け出し、急いで倒れたマックスの側に寄った。


「マックス、無茶しないで……」


 マックスを抱き起こそうとした私の前に、アルフレッド様が割り込むと、軽々とマックスを抱き上げ、ベッドに戻した。


「マックス、大事ないか?」


「…叔父上、有難うございます」


 ベッドに戻されたマックスは、悔しそうにシーツを握り締めていた。

私は俯くマックスの顔を両手で挟み上向けると、目線を合わせた。


「……っんだよ、離せよ……」


「マックス!」


 アルフレッド様が、怒ったようにマックスの名を叫んでいた。


私はマックスの顔を、手で挟んだまま話し始めた。


「マックス、焦ったらダメ。貴方の脚は動いたけど、今のままでは、歩く事は出来ないの……」


「へ?歩けない……?な、なんで……?」


「フーカ、それは、何故だ?」


歩くことは出来ない……そう言った私に、マックスは唖然とし、アルフレッド様が何故なのかと詰め寄った。


「それは……マックスの脚が、あ、歩くのに……」


なんて説明すればいいのか……考えていたら、言葉が出て来ない……


「マックスの脚は、歩く事を忘れているの……だから、歩く事、歩き方の練習が必要なのよ」


「練習?それをすれば、歩ける様になるのか?」


 マックスの右手が、縋るように私の服を掴んでいた。

私はマックスの顔から両手を離し、マックスの頭を抱える様に抱き寄せた。


「マックスが歩ける様に、協力するから……マックスも、途中で投げ出したりしないでね」


「そんな事するもんか!歩ける様になるなら……歩く練習ぐらい、今すぐにでも……」


 抱えていた腕から逃れる様に、マックスが勢いよく頭を動かすと、その反動で後ろに傾いた私を、アルフレッド様が支えてくれていた。


 


「フーカ、歩く練習って、何すればいいんだ?」


マックスが早く、早く答えろ、と急かしてくる……


「今日は、脚を動かすのに疲れたでしょう?歩く訓練は、明日からにしようね……」


「僕は疲れてなんて……」


疲れていると言われて、マックスはムッとしたのか唇を尖らせていた。


ふふっ、可愛いなぁ……

「マックスが早く歩けるようにどんな練習を、どうやるか、計画と、準備があるの……だから、明日から、ね」


 私は言い聞かせるようにマックスに話をした。

それからアルフレッド様とカーディナルさんに、相談したい事があると言うと、アルフレッド様の執務室に移動する事になった。


アビゲイル様は、ギル君とマックスの部屋に残られた。




******




アルフレッドの執務室にカーディナル、風花の三人が入ると、中で仕事をしていたコストナーが退出しましょうか?とアルフレッドに声を掛けた。


「いや、そのままで構わん……それで?フーカの話というのは……」


ソファに腰を下ろすのと同時に、風花はアルフレッドに

商才を話すように促された。


「アルフレッド様、使っていない部屋を一つ、私に下さい」


「は?部屋……?」


「はい、出来ればベッドも欲しいです」


「それは……今いる部屋から移りたいという事か?」


「違います、そうじゃなくて……」


「では、なんだ?」


「……マックスに専用の、トレーニングルームを作りたいです」


「トレーニング?」


「え、と、歩行訓練をする、専用の部屋にしたいんです」


「歩行訓練……それは、どういったものかな?ベッドは何故?何に使うのかな?マックスの部屋でやっていたように、脚を揉んだり、撫でたりするのかい?」


 カーディナルが意地悪く、風花を揶揄うように言うと、

隣で聞いていたアルフレッドは眉間に皺を寄せていた。


「撫でて……って、あれは、マッサージで……次からは、カーディナルさんが、やって下さい」


マックスの脚を撫でていたと言われた風花は、顔を赤くして、カーディナルに説明していた。


「それで……私が自由に使ってもいい部屋はありますか?」


「部屋の場所に希望は、どこでもよいのか?」


「階段をあまり使わないで、移動できるといいですけど……」


「ベッドは無くてもいいのかな?」


「部屋に無くても大丈夫です……それと、寝る為じゃないんで、古くて使ってないベッドとか、寝具とか、家具とか、折れた剣とか壊れた鎧とか、何か金属で出来た物が欲しいです」


「家具とか、折れた剣……?」



 部屋はいいとして……折れた剣に壊れた鎧、いや、金属か……一体何に使うというのか……


風花が欲しいと言った物を聞いたアルフレッドとカーディナルの二人は顔を見合わせ、何気に聞いていたコストナーまでもが首を捻って呆れた様な顔をしていた。


どう使うかは言った本人(フーカ)までもが、やって見ないとわからないと言うので仕方なく、アルフレッドはコストナーに言って準備をさせるよう手配を命じた。




******




「訓練ならば、守備隊の鍛錬場を使えばよいのでは?」


「鍛錬場……は、どんな所か確認してからです。歩けるようになって、移動できるようになってからがいいですね」


「う~ん……アレクの、アレクシスが使っていた部屋はどうでしょう?」


「戻ってきたときに、困らないか?」


「戻ってきたら、客間で対応すればいいんじゃないかな?守備隊の寮でもいいし、マックスの部屋から近くて、現在使用していない部屋だから、条件に合うのでは?」


「フム……フーカはそれでよいか?」


「マックスの部屋に近い部屋よりも、建物の端から端へ移動するぐらいの距離があるとベストなんですけど……」


「ベスト……?」


 聞きなれない言葉を耳に拾ったカーディナルは眉根を寄せ訝しんでいた。


 アルフレッドは顎に手をやり、目を閉じて何事か考えている様だった。


「建物の端から端ぐらい、か……うん、見に行くか……」


 何かを思い付いた様なアルフレッド提案を受け、風花とカーディナル、コストナーまでがアルフレッドの後を追うように執務室を後にした。


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