27.王国騎士団
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ローゼン王国には三つの騎士団がある……
王都の守りを担う、第一騎士団……
中でも王族の警護を担当する近衛師団は、王立騎士団の精鋭なだけで無く、見目良く家柄も良い貴族子息で編成されていた。
国の守りを担うのは第二騎士団……
民草の命を守る守護兵団と実力主義の実行部隊……間諜・謀略・暗殺に優れた特殊戦術部隊と魔道部隊といった専門分野に優れた団員が揃っていた。
国土と施設の守りを担うのは第三騎士団……
焼野原を実り豊かな土地に変え、壊れた建物を修復する。
物造りの職人集団と鬼畜な錬金術師、脳まで筋肉なのかと疑ってしまうガテン系集団だった。
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「第三騎士団……ですか」
お茶の時間も終わり、風花は人件費について、上司のコストナーに質問していた。
「ジャスティンが王都まで出掛け、王宮で交渉して貰った結果です」
「そうそう、頑張ったの……だから俺に、ご褒美頂戴、フーカちゃーん」
寝転んでいるソファから首を伸ばすようにして、ジャスティンが振り返っていた。
「あれ?ジャスティンさんが王都に行って、帰って……って、早くないですか?」
風花が辺境伯城に着いた日、ジャスティンも一緒にいたのだ。あの日から今日迄、六日しか経っていない……
「交渉が二日で済んだからね。ほらぁ、フーカ、褒めて褒めて!」
「すごい……頑張りましたね?」
「えぇ〜?何で疑問系なの?フーカに早く会いたくて、本気出したのにぃ……」
拗ねた態度で、不満を呟くジャスティンの頭に、コストナーから手刀が叩き込まれた。
「煩い!かわいい部下にちょっかい出して、仕事の邪魔をするんじゃありません!」
「えぇ〜、だって、フーカ成分がまだ足りな……」
「ジャスティン、望みどうり騎士団が到着するまで休みをやろう。喜べ!」
「休暇!マジで?……ったあ、騎士団が出立したのが昨日だから三日、いや四日は休める……アルフレッド様、有難う御座います!!」
アルフレッドは、煩わしいジャスティンを排除する為に、約束していた休みを与える事にした。
「休みは二日間だ。騎士団が到着する前に迎え入れる体制を整えろ」
「はっ!了解です」
「休みが貰えて、良かったですねぇ……とっとと、宿舎にお帰りなさい」
シッシ、と手で追い払うコストナーにも笑顔で挨拶し、ジャスティンは執務室を出て行った。
昨日出立した騎士団が辺境に着くのが四日後……ジャスティンさんが王都まで行って帰ってきたのが今日……単独行動だから?交渉に二日使って、第三騎士団が出発してから帰ってきた、って片道二日?え?早くね?
首を傾け、どこか釈然としていない風花に、アルフレッドが応えた。
「ジャスティンはグリフォン乗りだ。飛んで行くからこそ、王都まで一日で着くことが出来る……」
「グ、グリフォン!?グリフォンがいるの?グリフォンってアノ、グリフォンですよね?え〜……」
「グリフォンと言ったら、グリフォンだな……」
何てことない様に、アルフレッドは言うのだった。
「もしかして竜とか、ペガサス……羽の生えた空飛ぶ馬も、いるのですか?」
「守備隊にいるのは、グリフォンと飛竜ぐらいか……」
「飛竜……?世話してるんですか?」
「ああ、乗り手が世話をしなければ絆が結べんからな」
私の頭の中で、守備隊見学ツアーが組まれた。
「第三騎士団では、地竜を扱っているはずだ」
さすが異世界……誰かに頼んで外に連れて行ってもらおう……角ウサギとか、カーバンクルとか可愛い魔物がいるといいなぁ……
風花はニヤつきながら、のん気にそんな事を考えていた。
あれ?そういえば、何を話していたんだっけ……?
「あ、それで、ボス、第三騎士団の話の続きを、お願いプリーズ!」
「フッ、何です?そのプリーズというのは……まぁいいでしょう……第三騎士団の話しですね」
コストナーは、コロコロと表情を変える風花を見て、無表情を装っていた。
フフッ……まったく、見ていて飽きませんね。フーカがいれば、我が家も明るくなりそうですが……
「ぁ〜、その、第三騎士団は、職人集団なのですよ」
「職人集団……?ですか?」
「ええ、土魔法で土台を作り、錬金術で建物を作る」
「錬金術師!?」
フフフッ……フーカの目の色が変わりましたね……
「錬金術師の筆頭は、性格に問題有りですから、近寄ってはいけませんよ」
「ひゃい!?そ、そんな事、考えて無いです」
ぅひゃぁ〜、コストナーさんってば、思考読んでない?
「とりあえず、第三騎士団の連中がいる間、フーカは部屋で大人しくしている事だな……」
「な、何故ですか?アルフレッド様」
土魔法とか錬金術とか……興味津々の風花は、アルフレッドの言う事に、納得できない、絶対見に行ってやる……
という、心の声がダダ漏れになっていた。
「はぁ、出歩く時は、単独行動は絶対にするな……わかったな?」
「ふぁ〜い」
小さいからって、アルフレッド様、過保護だよ。これでも前は、大人だったんだから、一人でも大丈夫なのに……
数ヶ月後、この時のアルフレッドの言葉が、身にしみる風花だった。