2.光の女神
読んでいただいて有難うございます。
【……起きなさい……】
【起きるが良い……人の子よ……】
うぅ~ん……誰かが呼んでいる……
お母さん?……まだ眠いよ……
「お母さん、あと五分寝かして……って……あれ?」
大学生になって、一人暮らしをしていたんだ。そうでなくても……見限られた私が、母に起こされるわけ無い。
何かがおかしい……そう思って私は横になったまま辺りを見回した。
「ここ……どこ?」
【起きましたか?人の子よ】
今度は頭のすぐそばで声が聞こえた。私は慌てて身体を起こそうとして、危く叫びそうになった……
足元に星が……天体写真の様に星雲とか惑星がある……
「な、なに……何が、どうなって……」
【落ち着きなさい……人の子よ】
私は声の聞こえてきた方角……頭上に目を向けて、周囲を覗った。
声は聞こえるのに、その姿は見る事が出来ない……お、オバケ?
【……オバケでも、幽霊でもありません。落ち着いて話しを聞きなさい】
凛とした声が空間に響いた……
【姿が見えないと不安ですか……これならどうです?】
私の考えている事がわかったのだろうか……
気が付けばすぐ目の前に、光り輝く美しい女性が現れた。
それは、正に……
「め……女神様……」
思わずこぼれた言葉に、目の前の女性はニッコリと微笑んだ。
【如何にも、我は光の女神リュミエール……】
「光の……女神様……」
何て神々しくて、美しいのだろう……美の女神様と言われても、納得してしまうだろう。
あれ?でも、女神様が現れたって事は……私ってば、もしかして死んで……
【その通りです、人の子よ……貴方は……貴方の身体は、生命を維持する事が、出来無くなっていました……】
私、死んじゃったんだ……え?でも待って、触った感触あったよね……何で……私って、今どうなってるの?身体は?
【貴方の身体は……生命機能を維持する事が出来無くなったので、新たに造り替えました】
「造り替えたって……ど、どういうことなんですか?私は……」
【貴方が死ぬ前に、縞々の……生き物を助けましたね】
縞々の生き物……?あの猫の事だろうか?
【あの生き物は、猫では無いのですが、まぁ、それは後にして……】
猫じゃない?じゃあ、あれは何だったの?虎の子?
【これからいう事を、よく聞くのです。良いですか?人の子よ……】
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私が女神様と話していた場所は、世界の狭間と言われている空間だった……
元の世界での私は、あの火事で死んでしまって……死ぬ前に、猫だと思っていた生き物を助けた事で、女神様が私を生き返らせてくれた。
私が猫だと思って助けた縞々の生き物……それは、女神様の大切な聖獣の子供だった……
親子で移動中に、聖獣の子供だけが世界の狭間から落ちて、あの場所に閉じ込められていた。
自らの意思で聖獣の子を助け、それが原因で死んでしまった私を憐れんだ女神様が、創世した世界に私を転移させることにしたのだ……
元の世界で死んでしまった私の体は、女神様に造り替えられ、元の世界では生きていけなくなってしまった……
両親にも、妹にも……二度と会う事は出来ない……
大学生になった私は、初めての一人暮らしで、自由気ままに過ごしていた……
五月の連休の時に、実家に顔を出せば良かったな……
お父さん、お母さん……親不孝な娘で御免なさい……
私の物を借りても返さない三歳下の妹……
私のもの何でも使っていいよ、全部あげる……お父さん、お母さんを頼むね……
光の女神リュミエール様の世界、アルシオーネは魔法が存在する世界だった……
女神様の管理する世界で、私は一人で生きていくことになる……知る人が誰一人いない世界で、私一人でも生きて行けるように、女神様が加護と、望む能力……ギフトを授けてくれた。
私が異世界転移するにあたって、女神様から授けられたの能力は、主に五つ……
・ 翻訳能力……あらゆる言語を理解、話せる能力。
もしかしたら動物とも話せるかも?
・ 鑑定能力……見た物・手に触れた物が何か識別できる。
・ 作成能力……材料が有れば、大抵のものは作れる。兵器は不可。
・ 検索能力……私が日本で見ていた物に対して、記憶の底から呼びだす能力。
覚えていなくても、目にしていた物……料理やお菓子のレシピ、植物の栽培方法、物作りに必要な知識が、目の前に浮かぶらしい……
・ 治癒能力……怪我を治す能力。どの程度使えるかは、私の頑張り次第との事。
う~ん……五つもチートな能力を貰ったら、もしかして俺tueeeができるかも……?
そう思ってはみたけど、戦闘系のチートは無いから勇者には成れそうにない……無理ですね。
翻訳能力は、基本だよねぇ。言葉が通じない世界で生きていける気はしないもんね……
最期に女神様が、異世界転移するのに、似たような状況下での転移になるから、死なないけど……死なせないけど、注意してね~と軽く言われた。
私が何か言うより早く、女神様に、じゃぁ~がんばってねぇ~と、
手を振られた。
「ちょ……ちょっと待ってぇええ……」
目の前が一瞬ブラックアウトした……。
私が異世界転移して、出現した場所は、燃え始めた木造の、建物の中でした……