恋の行方
ガールズラブほどの描写はありませんが、匂いはあるので苦手な方はお気をつけて。
告白しなかった恋は、どこへいくんだろう
数年前のロフトの広告をふと思い出す。夕陽のさす廊下、校庭から聞こえる運動部の声、わたしだけのがらんどうの教室。
「涙にとけて消えちゃうよ、そんなもの」
窓際から2列目、前から3番目の席。撫でる指先に伝わる机の木目はざらざらしていて、ささくれ立っている。古い机、歪んでガタガタいう。当たりが悪いあの人の、席について不機嫌そうにする顔が浮かぶ。
整えられた眉をきゅっと寄せる、垂れる長い髪をはらう指先は男のように節だっている。けれど、ふっくらした白い頬にその指先を添えられれば妙にちぐはぐでわたしの心臓を跳ねさせる。
「机一つでこんなにも愛しいのに」
触れたい、あなたのその指に手に頬に顎に耳に腿に首に。全てに。
「でも、できない」
「告白?」
わたしだけしかいないと思っていた世界に、あの人の声が聞こえた。振り返れば、愛しい彼女の姿。見られていたことへの羞恥より、影の落ちる目元、陽に照らされた丸い頰、少しだけ皮の剥けた小さなくちびる、そして上擦った声にわたしの意識は奪われてしまった。
「やらない後悔とやった後悔、やらない方が後悔するなんて誰が言ったんだろうね」
告白なんてしなきゃよかった
彼女の机で微動だにしないわたしの元へゆっくりと近づいて来る。涙の跡がよく見えてしまう。
告白しなかった恋の行き先を知らないわたしたち、それなら報われなかった恋はどこへいくの?
「告白しなかった恋は、どこへいくとおもう?」
一生懸命作ったチョコレートは、口の中で柔らかく溶けて、喉を通り胃の腑でグチャグチャになって最後は白いトイレの便器にさよならだ。
でも、わたしたちの恋にはゴールも墓場もない。宙を舞う埃と同じ、行方知れずだ。