第84話 同行!王都への旅路!
前回のお話
暇は海に沈められました。
「前回はセミルトで飛んで行ったんだけどな」
ユキトとアウリティアこと紺スケ達は、アスファール王国の王都へと向かっていた。ユキトは、アウリティアはそのままエルフの里へ帰るのだと思っていたが、気まぐれなアウリティアが「久々にアスファール王国の首都に寄ってみるか」と言いだしたのである。
アウリティアが王都へ行くとすると、彼がアスファール王と面会する可能性がある。そうなると、サブシアとリティスの交流が話題に上げられることになる。
ユキトの領地であるサブシアとアウリティアの治める里リティスとの交流については、現段階では、ユキトとアウリティアの口約束に過ぎない。これから、技術情報や作物などを交換していくことになる。
だが、ユキトからアスファール王へと正式に報告していない状態で、アウリティアからそんな話が伝えられたとすると、貴族として非常に良くないということは、ユキトにも容易に想像できた。だからと言って、アウリティアに交流の件を秘密にしてもらったとすると、後にユキトが報告した際に「そう言えば、アウリティア殿が立ち寄った時、彼からその件で挨拶はなかったな」ということになり、アウリティアが不義理となる。
もちろん、この程度の不義理で、七極の一人であるアウリティアが王国から批難されることはないし、この程度で七極を敵に回す程に愚かな王国ではない。だが、厳密な礼儀としては、アウリティアに非があるということになってしまう。友人に非礼を強いるのは、ユキトの方針ではない。
そういうわけで、アウリティアを見送るつもりであったユキトは、急遽アスファール王に「リティスとの交流を開始する」という報告をすべく、アウリティアに同行することにしたのである。今は馬車に揺られながら、ユキトはアウリティアと言葉を交わしていた。
「セミルト……ってサブシアで会った百九年蝉のあいつか。あの種族が人語を操るなんて知らなかったから驚いたぞ」
「極魔道士にも知らないことがあるんだな。まぁ、セミルトも途中で覚えたって言ってたから、個体ごとに違うんだろうけど」
今回、百九年蝉のセミルトは、ユキト達の人数が多すぎるためにサブシアで待機である。流石に定員オーバーというヤツだ。アウリティア達と別れた後の帰路ならば、便りを出すことでサブシアから王都へ飛んできてもらうことも可能である。
「百九年蝉を乗りこなすなんて、まるで異世界転生モノの主人公だな」
アウリティアが若干メタな前世ネタを振ってくる。実際はこの世界の人々でも、魔物を乗りこなす例はないわけではない。魔物使いなる職業があるのだから、翼竜などに騎乗することも可能だ。
だが、大型の魔物は従えるのも困難であるケースが多く、多人数を同時に運搬する魔物を有するのは、国中でも数例のみだ。
「初めから百九年蝉に乗ろうと思って倒したんじゃないぞ。成り行きでこうなったんだ。紺ス……アウリティアは、乗用の魔物は飼ってないのか?」
紺スケという呼称は2人以外の人間がいるときは使わない方がよいだろうとユキトは判断した。紺スケはこの世界では数百年もアウリティアとして生きてきたわけで、それに対して敬意を払いたい。それに、ぶっちゃけ他人に説明を求められると面倒でもある。
「乗用の魔物? 獣車用の魔獣は里にいるけどな。その気になれば俺も飛べるし、近距離なら瞬間移動もある」
イーラが、近距離瞬間移動を開発したのはアウリティアであると言っていたのをユキトは思い出した。確か、移動が面倒だと開発した魔法だと言っていたはずだ。
「まぁ、サブシアに行く時にはサジンとウヒトもいたし、のんびりと旅路を楽しみたかったから馬車にしたけどな。そもそも里から出たのが久しぶりだわ」
馬車でやってきたアウリティアに合わせて、ユキト達も王都へ向かう交通手段として馬車を選択した。2台の馬車でガタゴトと王都へと向かっているわけだが、ユキトはアウリティアの馬車に乗せてもらっている。
「お気になさらず。色々とつもる話もあるでしょう」
サジンはそう言ってユキトの同乗を快諾してくれた。一方、ウヒトは「じゃあ、僕は向こうの馬車に……」とサブシア側の馬車に乗ろうとして、サジンに引き戻されていた。ファウナのところに行こうとしたのだろう。まだ若いエルフとは言え、実に分かりやすい。
「エルフの里からサブシアまで来るのに、それなりに時間がかかってるんだろ? 魔物とかも出たんじゃないか?」
ユキトは当たり障りのない話をアウリティアに振ってみる。
「少しズルをしていたから、数週間ってところだな。馬に補助魔法をかけてやると速度が段違いになるんだ。ああ、もちろん道中に魔物は出たさ。これも俺が七極だから問題ない」
アウリティアは胸を張りつつ答える。まぁ、本人が言うように七極なのだから、普通の魔物などは相手にならないのだろう。イーラが氷結竜を従えていたことからも分かるように、七極の実力は上位竜よりも上であるようだ。
「おっと、進行方向に魔物のようですが、私が片付けておきます」
タイミング良く、御者席にいるサジンが魔物発見の報告を上げてきた。それと同時に馬車が停止する。
「いや、暇つぶしに俺とユキトでやるわ」
「おいおい、勝手なことを」
サジンの報告に対し、アウリティアが勝手な答えを返し、思わずユキトが抗議する。
「まぁ、いいじゃないか。俺も異世界無双してるところを見せたいし、ユキトもそのチートな力を少し見せてくれよ」
この世界に早々にやってきてラノベの主人公を一通りやったアウリティアだが、やはり同郷の者にその無双っぷりを見せたい欲求は残っていたらしい。同時に極魔道士としてユキトのチートっぷりにも興味があるようだ。
「仕方ない……」
ユキトも渋々ながら、極魔道士の戯れにつきあうことにして、停車した馬車からのそのそと外へ這い出した。
「キルルルルルル……」
現れた魔物は不思議な姿形をしていた。木の幹のような細い身体の先端に、蟲の翅のような透明の翅が何枚も円形に並んでいる。その翅が波打つように羽ばたくことで空を飛んでおり、翅の逆側となる身体の下端には、鋭い爪を持った4本の腕と口が付いていた。つまり、ヤシの木の根っこ部分に口があり、葉の部分で飛んでいるような形状である。
「キルメッツか」
アウリティアは魔物を見て、すぐに名前を述べた。なるほど極魔道士というだけのことはあると、ユキトは感心する。
「流石に博識だな」
「正式にはプランタ・タルタリカ・キルメッツという」
自慢げに正式名まで伝えてくるアウリティアだが、ユキトには心底どうでもよい情報だ。そもそも、そんな正式名称を誰がつけたのだろうか。目の前の極魔道士が命名者である可能性もある。
だが、魔物の方から見れば、グダグダと話している人間は格好の獲物として映ったようで、キルメッツはユキト達の方へ向かって真っ直ぐに飛んできた。変な姿だが、意外と速い。
「どっちがやるんだ?」
相手が1匹なので、俺TUEEEができるのもどちらか1人ということになる。ユキトの問いかけに対して、無言でアウリティアが一歩前に出た。
「神雷破天極」
アウリティアがそんな中二めいた魔法名を口にしながら、指でキルメッツを指し示す。その瞬間、激しい雷撃が10本ばかり、魔物を中心として天と地をつないだ。いつの間にか空には黒雲が広がっている。雷撃はそのまま竜巻のように螺旋を描き、荒れ狂い、周囲を焦土と化していく。哀れなキルメッツはとっくに黒焦げになり、塵になってしまったようだ。
「オーバーキルも良いところだなー」
ユキトは極魔道士から放たれた魔法に素直な感想を述べる。サブシア側の馬車からも、ギャラリーが降りてきており、皆で雷撃の狂乱を眺めていた。
「……アウリティアさんと戦わずに済んでよかったわ」
「同感ですわね」
ファウナとフローラが感想を述べ合っている。確かにこんなド派手な魔法を使う魔道士と戦いたくはない。百人程度の軍勢なら、一発で消し炭にできそうである。
「……威力だけで言えば、お主の火球の方が無茶苦茶じゃからな?」
フローラの背後に立っていたイーラは、冷静に突っ込みを入れた。イーラから見れば、この世界の理の範囲内であるアウリティアの魔法より、一兆度の火球の方が余程チートである。これには、アウリティアも同意するだろう。
やがて、荒れ狂っていた雷撃はある瞬間にピタリと止み、大空も元の青さを取り戻した。流石は魔法である。ユキトは目の前のアウリティアに声をかける。
「派手な大技だったな」
「だろう? 最強の魔法ってわけじゃないけど、発動も早いし、魔力消費とのコストパフォーマンスもいいんだ。お気に入りの作品だぜ」
どうやら、この魔法はアウリティアが開発したもののようだ。極魔道士という称号は伊達ではないのである。
「さて、次はユキトの番だな」
アウリティアはそう言うと、ある方角に顔を向けた。つられてその方角を向いたユキトの目に別の魔物の姿が飛び込んでくる。少し離れた森の近くの地中から、何かが這い出していた。
「げっ……あれ何?」
その魔物は、複数の骸骨がランダムに組み合わさった醜悪で巨大なスケルトンだった。いや、もはや人型というよりは球形に近い。明らかに人間以外の動物の頭骨が見えることから、人骨以外の骨も混ざっているようだ。一目で完全にアンデッドモンスターだと分かる。だが、そんな醜悪な魔物を前にしても、アウリティアは涼しい顔だ。
「多分、地中で眠っていたところを俺の魔力に当てられて目を覚ましたんだろう。マージドスケルトンの類だな。この辺、古戦場だったのかもな」
「古戦場かどうかは知らねえけど、アンデッドモンスターってこんな太陽の下に出てきてもいいのか? スケルトンとか燃えたりしねぇの?」
ユキトの常識ではアンデッドモンスターは夜間や洞窟内に出現するものである。世界観によっては、太陽の下では燃えてしまう場合もある。
「この世界でも、下級のアンデッドは太陽を嫌うぞ。つまり、あいつは大物ってことだ」
アウリティアからのお墨付きをもらった大物アンデッドは、カシャカシャと骨の音を響かせながら、ユキト達の方へと近づいて来る。手も足も複数生えており、移動はそこまで早くはないが、あまり近づいて相手をしたい姿ではない。
「じゃあ、俺も派手にやるわ。3分以内でな」
ユキトはそう告げると、さっそく銀色の巨人へと姿を変えるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。時間がとれず、今回の更新は少し日数が空いてしまいましたが、ご容赦ください。
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ユキト「そろそろ新しい加護も出さないと」
紺スケ「ユキトラマンばかりだと、マンネリだもんな」
ユキト「巨人化は強いからな。デカさはパワーだ」




