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第170話 新天地!南大陸の冒険!

前回のお話

アルマを失ったユキト達は一路、南の大陸を目指した。

なお、(いとま)は異世界で好き勝手やってます。

 

「南大陸……思っていたよりも普通なんだな」


「当然です。別に異世界に来たわけではありません。南大陸と言っても、同じ世界(ディオネイア)の中なのですから。急に科学帝国やら魔界やらが出てくるようなことはございません」


 メイド姿のクレアが、船を降りて周囲を見回しているユキトにそう説明する。口調も実に丁寧だ。


 確かにユキト達が降り立ったこの港町は、北大陸のそれよりもエルフやドワーフなどの異種族が多いように見える程度で、そこまで大きな差異があるわけではない。もちろん、文化や植生などの違いはあるが、それは北大陸においても地方や国によって異なるものだったことを考えれば、至極当然であろう。


「……なんだありゃ?」

「メイド連れ……どこぞの貴族様の道楽か?」


 一方で港湾の作業員らしき人々にとっては、メイドを連れた冒険者という存在が珍しく、ユキト達に遠慮のない視線を送っている。エルフの格闘家、銀髪の魔法使い、老剣士、巨乳の美女、メイドさん、黒髪の冴えない男というパーティ構成は、やはり存分に人目を惹くようだ。


「あのエルフ……可愛いな」

「俺はその後ろの銀髪の娘の方が好みだがな」

「待て待て待て!あの巨乳は反則だろ!」

「ふん、これだから素人は。メイドさんの良さが分からんのか?」


 港町だけあって、不躾な海の男達が好き勝手に女性陣へ批評を開始する。

 セバスチャンが剣の柄に手を乗せつつ、チラリとユキトに視線を送るが、ユキトは肩をすくめつつ首を横に振った。


「絡んでこないなら放っておこう」


 セバスチャンが『教育』をすれば、すぐに大人しくなるだろうが、行く先々でそんなことをやっていたら時間がいくらあっても足りない。ファウナ達も「男ってしょうがないわね」という表情だ。


 なお、メイドさんの良さに言及した男以外には、後日タンスの角に小指をぶつけるという神罰が下ったらしい。実に不思議なことである。



 周囲の人々の視線を集めながら、ユキト達は船を離れて市街の方へ向かう。見ると、数名の兵士が港と市街を隔てている門の前に立っていた。不審者を国に入れないために行う入国審査があるのだろう。


「港町パープロンにようこそ、北大陸からのお客人だな。まずは無事の到着なによりだ」


「ありがとう。冒険者のシジョウ ユキトだ」


 隠すこともないので、ユキトは自身の名を素直に申告しておく。


「ユキト様の使用人のクレアと申します」


 ユキトの後ろで、クレアが軽く一礼した。


「冒険者のファウナよ」

「同じくフローラです」


 クレアに続いて順次名を告げていく。


(ウチのパーティの中では、メイドさんが一番偉いんだよなぁ……)


 そんなことを思いながら、ユキトはこの場にはいないメイド――アルマの顔を思い浮かべる。


 メイドロボであったアルマは、クレアに対してユキトの世話を任せるとの言葉を残して散った。それを受けて、クレアールはクレアとしてユキトの傍にいることを選択しているのだろう。彼女なりの弔いの意があるのかもしれない。


 だが、そんな事情を知らない兵士達からすれば、メイドを連れた冒険者というのは些か奇異に映ったようだ。


「メイドを連れた冒険者か……それで危険な海を渡れたんだから、運が良いと言うか何と言うか……」


 兵士が述べたように、南と北をつなぐ航路は、海の魔物や天候などの関係で危険極まりない。そのため、両大陸の交流はさほど活発ではなく、国の親書を携えた官吏やユキト達のような冒険者、商機を見込んだ商人が、それも少数だけが行き来するのみだ。


 とはいえ、ユキト達の航海には危険など一切ない。確かに巨大なシーサーペントが出現した時は、歴戦の船員達も真っ青になっていた。


「もうおしめぇだ……あんな巨大なサーペントは見たことがねぇ……」

「すまねぇ! 無事に運んでやれんかった……」

「くそっ、ここまでか」


 ちなみに、そのシーサーペントは、ファウナがパンチ一発で数キロほどの距離を吹き飛ばしている。巨体が水を切りながらすっ飛んで行く姿は壮観であり、その光景を目の当たりにした船員達は彼女を「エルフのアネさん」と呼ぶようになった。


「ちょっと、アネさんはやめてってば!」


「いえ、そうはいきません」

「アネさんはアネさんです」

「アネゴの方が良いですか?」


 また、巨大な雷雲が近づいて来た時は、フローラが数百万度程度の温度に抑えた火球(ファイアボール)を放つことで、雷雲を消し飛ばしていた。


「雷雲が……消えた。神か!?」

「アネさん2号だ!」


 もっとも、この行動は一時的な嵐の回避措置としては有効だが、相当に広い範囲で大気を不安定にするらしく、さらに巨大な雲を生じさせる危険性を秘めているらしい。創造神(クレアール)様が言うことなので間違いないだろう。ちなみに、そういう複雑な因果関係の処置については、その創造神様が対処してくれたので問題なしである。


 そのようなわけで、航海中のユキト一行は、クラーケンを使ったタコ焼きパーティに興じてみたり、超巨大な肉食魚であるギガロドンを一本釣りしてみたり、セイレーンの群れにアニソンを合唱させてみたりと、かなりの好き放題をしていた。しかも、それだけ好き放題したにも関わらず、航海は予定より随分早く終了している。途中、ファウナが船を引っ張ってくれたり、フローラが魔法で風を発生させてくれたりしたおかげだ。


「ま、何はともあれ無事に着いたのだから、せっかくの命を大事にしろよ。通って良し!」


 航海中の出来事を知らない兵士達は、ユキト達を運の良い冒険者だと認識したようだ。手配書の人相と比較する程度の入国審査で、ユキト達に市街への通行許可を出してくれた。兵士達に促がされ、ユキト達は門を潜る。


「航海中には全く危険はなかったよな。でも、クレアが瞬間移動してくれれば、そもそも船にすら乗らなくてよかったのに」

「それでは風情がございません」


 門を過ぎて、お喋りを再開したユキトの愚痴をあっさりとメイドが斬って捨てる。ご主人様に対しても、なかなか手厳しい。


「そぉよぉ。ユキトくぅん。せっかくの船旅だったんだしぃ。私の水着姿も見られたじゃなぁい」


「ああ、ストレィのあれは大きかっ……って何を言わせんだよ」


「ちょっとユキト」

「ユキト様」


 お胸の話になるとファウナとフローラが厳しい。


「いや、船旅も悪くなかったよなってことだよ。旅の目的から外れているわけでもないしな」


 ユキトとしても、セイレーンに歌わせたロボット系アニソンが予想以上に熱かったこともあり、船旅には満足している。セイレーンはソプラノボイス専門と思っていたが、意外とテノールやバスもいけるようだ。


 そもそも、今回の旅の目的は2つある。1つ目は、長いこと創造神業をやっていたクレアールこと木安 藤華(きやす ふじか)に、この世界(ディオネイア)を人間の視線で見て回ってもらうことだ。だが、これはあくまでもクレアールの希望であって、緊急を要するものではない。

 重要なのは2つ目の方だ。こちらはクレアールが考案した(いとま)対策の一環だ。それは、ユキト達の実力を全世界の人々に見せつけ、ユキトの付与(エンチャント)能力を広く印象付けることである。


 なぜ、そのような行動が(いとま)対策に繋がるのかについては、別途説明するとして、今のユキト達はその尋常でない力を、積極的に人々に示していく必要があるのだった。


 今回の航海では、船員達にファウナ達が卓越した能力を有していることを十二分に知らしめた。その力はユキトが付与(エンチャント)した加護に起因していることも説明済みである。


「では、まずは宿を確保して、その後に冒険者ギルドへ向かいましょう」


 クレアはそう述べると、宿のある方角へ向かって歩き出す。神の力を使えば、初めての街であっても、どこに何の施設があるのかは把握できるのだ。アドミニ権限、恐るべしである。


「便利だよなぁ」


「いや、ユキト。創造の女神様に便利って」

「確かに便利ですけど……」


 ちなみに、ユキト達が冒険者ギルドに向かう理由は先程と同じだ。ユキト達の力をこの街にも知らしめるためである。


 南大陸に渡る前、ユキト達は北大陸も一回りしているのだが、積極的に冒険者ギルドに寄り、難易度の高い依頼を瞬殺していた。


 中でもレッドドラゴンの討伐が10分で終わったのは、伝説になるだろう。依頼を受けたファウナが即座に飛んで行って、倒しただけなのだが。むしろ、事前に倒しておいたレッドドラゴンの討伐部位を持ってきたのではないかと疑われ、そうではないことを証明する方に時間がかかった程だ。


「アルファール王国とかハルシオム皇国を回った時も随分と驚かれたけど……」


「ユキト様の逸話を聞いたことがあるはずの王国や皇国の皆さんですらあれほど驚いていたのですから、こちらの方々は腰を抜かしてしまうのではないでしょうか」


 ファウナとフローラが少し心配そうな表情で呟く。


「驚かせてやりゃいい。女神様というバックがついてるからな。こっちは」


 ユキトは気楽な返事をすると、先導するクレアの背を追って歩みを進めるのだった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

南大陸の話はそんなに長くならないと思います。

基本的に瞬殺なので。ええ、それはもう。

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