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第157話 不穏の影。シムシティの結末

私事多忙につき更新が遅くなっております。時間を有効に使いたいところです。

年末を乗り越えたら、一息つけそうですが……

 

 ジコビラ連合国は混乱していた。


 連合の核とも言える国のコビル。そのコビルが突然に連合から脱退したためである。なんでも、とある男が1日にしてコビル国を支配してしまったらしく、一方的に連合からの脱退を通告してきたのである。

 常識的に考えて、1人の人間にあっさりと国が乗っ取られるとは思えなかったが、ジコビラ連合国の指導者達は、アスファールのシジョウ卿のような人智を超えた存在の仕業を疑った。


 もちろん、ジコビラ連合国を形成する諸国も、この事態を黙って見ていたわけではない。国力的にも地理的にも連合の核となるコビルが脱退すれば、ジコビラ連合国の力は大きく損なわれるのだ。


 まず連合は、カルダンという名の初老の特使を派遣し、新たにコビルを支配したというイトマなる人物との接触を図った。

 だが、結論から述べると、その行為は事態の改善に対して全く意味を為さなかった。


「イトマ殿と言われたか? 貴殿はいったいどのような心積もりですかな?」


「いや、この国はボクが治めることになったってことと、連合からは脱退するって通告した通りだよ? それ以外には何も言うことはないけど?」


「イトマ殿は連合からの脱退という行為が、何を意味しているのか理解しておられますかな? 食糧や物資の流通は滞ることになりますぞ。さらに言えば、貴国が独立すれば、我々の軍事行動の標的にも成り得るわけですが?」


「それも理解しているよ。用事はそれだけ? なら、とっと帰ってくれるかなぁ。ボクはシムシティの続きをするのに忙しいんだ」


「しかし、こちらとしては脱退を認めるわけには参りませんな……あと最後にもう一つだけお聞かせ願いたい。オーフィスト殿は御健在か?」


「オーフィスト? 誰だっけ、それ。さ、帰った帰った」


 取り付く島もないとはまさにこのことである。無礼極まりない対応であるが、特使はそのまま帰還するしかなかった。


 だが、カルダンも全くの手ぶらで帰ってきたわけではない。コビル国内で見聞きしたところによると、驚いたことに、イトマは国内の軍備を解き、職を失うことになる兵士達に治安維持の役割を持たせたらしい。おかげで国内の治安は大幅に改善したという。

 だが、これはつまるところ、新生コビルは軍を有していないことになる。


 当然ながら、戻ったカルダンはジコビラの指導者達にその事実を報告した。


「ほぅ……自ら軍を解体するとは、愚かな男だな」


「コビルに駐留していたジコビラの兵は精鋭揃いだったから助かるのぅ。尤も、すぐに再編成も可能であろうが」


「そもそも、コビルがイトマとやらに国を開け渡した理由が分からん。オーフィストはどうしたのだ?」


「その件も含めて、まずは密偵を送って状況を調べさせよう。その後で兵を送ればよい」


 元々、ジコビラ連合国は、オーフィストを中心としつつも、連合を構成する国々の指導者の合議制で成り立っていた。オーフィスト1人が欠けたところで、意志決定の手順が変わることもない。

 それに今回の案件はセオリー通りの手順を踏めば良いので、意見が違うこともないだろう。


「うむ、まずは情報収集が肝心だ。先のアスファールとの戦争でも、相手にシジョウとかいう化け物がいると分かってさえいれば、他に手があったはずだ」


「よし、ではコビルに密偵を送ることにする。場合によってはイトマの首を掻き切って来させよう」


「それはいい。ちょうどウチに暗殺の技術が高いヤツらがいる」


 この時まで、ジコビラの指導者達は事態を軽く見ていた。強力な加護持ちが、調子に乗っているくらいの認識であった。


 だが、状況は静かに狂い始める。コビルの状況を探るべく放った8人の密偵が、1人たりとも帰って来なかったのだ。


 ……いや、帰っては来たと言うべきか。送り込んだ密偵達は、互いにその身体が融合した肉団子となって、コビル隣国の郊外の納屋内で発見されたのである。


「うぐぐぐぇぇぇけ」

「ぼえぇぇごぉぉ」


 彼ら彼女らは全員が正気を失い、人間の言葉を操ることもできなくなっていた。その光景を目にした兵士達は顔を顰め、何名かは堪らずに嘔吐したようだ。


「なんだ……あれは……うっぷ!!」


 その密偵達の成れの果ては、極秘のうちに処分されたが、その任に当たった兵士達は、しばらくの間その光景を夢に見て、うなされたらしい。


 もちろん、この情報はすぐに指導者達に伝えられている。ここに来て、流石のジコビラの指導者達も多少の危機感を覚えたようだ。


「イトマはおぞましい魔術を使うようだな」


「その力で国を奪ったのか?」


「油断ならん。一気に攻め落とすべきだ」


「うむ。元々、コビルにはジコビラの精鋭が駐在していたわけだ。数は少なかったが、イトマはその精鋭を制圧したと考えるべきだろう」


 密偵達の異常な末路を踏まえて、ジコビラの指導者達も(いとま)を危険人物と見做し、兵を差し向けることを即決する。

 こうして、少なくないジコビラの兵士がコビルへと向かうことになった。



 それが約一ヶ月前である。


 当初、連合国が送り込んだ軍隊は、順調にコビルへと向かっていた。重装歩兵に、竜騎兵隊も含む布陣である。

 だが……途中から一切の音信が途切れた。その様子を見に走らせた密偵も同じだ。定期的に届いていた連絡が、コビル国に侵入した直後からプツリと届かなくなる。

 第二、第三の派兵も実施したが、例外なく、誰一人として戻って来なかった。


「いったいどうなっている!!」


「誰ひとりとして、戻らぬとは……」


「それだけではない。コビル国からは旅人の1人も出てきておらぬ。中の様子が全く分からぬ」


 コビルの国内からは、商人も旅人も誰一人として出てくる者がいない。何も知らずに入国していく旅人がいても、そこから出国する者がいない。ひいては内部の様子が一切分からない状況である。


 尋常でない『何か』が起こっているとしか考えられないが、ジコビラの指導者達にそれを知る術がない。



*********


 その頃、遠く神界から地上の様子を確認していた女神の一柱がいた。人間界へと通じる門が開いたことで、神々は久方ぶりに地上の様子を知ることが出来るようになったのだ。

 そんな中、慈雨を司る彼女がコビル国を見たのは全くの偶然だった。そして彼女はコビル国の様子を知ることになる。


「あ、あれは……なんと悍ましいことを……」


ここまで読んで頂きありがとうございます。

少し更新が遅れ気味ですが、停滞はしないつもりですので、どうぞ宜しくお願い致します。

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