第112話 捕縛完了! 皇国軍との決着!
前回のお話
ケロン公爵が使った魔道具の効果は加護を失わせるというものだった!?
ケロンの突発的な行動の直後、カウェイは自身の身体の中から何かが消失した感覚を覚えていた。どうやら、ケロンの使った魔道具は本物だったようである。
「加護が失われるだと? そんな魔道具、聞いたこともないぞ! くっ、ステータスは……」
カウェイ ショリコ
師団長・将軍・達人
戦闘ランク A
カウェイは慌てて自身のステータスを確認し、茫然とした。ケロンの宣言通り、これまで彼のステータスに記載されていたはずの「神弓の加護」が失われていたのだ。そんなカウェイの様子から、無事に魔道具の効果が発揮されたことを把握したケロンは、その醜悪な笑みをより深くする。
「くくく、この魔道具はこの場にいる全ての者に対して、神界との繋がりを遮断する効果がある!」
勝ち誇った表情でケロン公爵が説明を始めた。勝利を確信しているのだろう。この世界の住人である彼は、敗北フラグというものを知らないのであるから無理もない。
「貴様らの加護は神々の偉業の断片を顕現させたものに過ぎん。その神々の世界との繋がりが断たれたことで、加護も失われたのだ」
そこまで説明すると、カロンは振り返って、兵士達に呼びかける。
「さぁ、もはやこのエルフ達は凡人に過ぎん! 殺……いや、生きたまま捕らえろ!」
「え…?」
だが、ケロンの指示を受けた兵士達は、事態の急変ぶりに混乱していた。急にこの場の全員から加護がなくなったと言われても、その状況の変化についていけていない。
「どうした! 王国の切り札たるこやつらを捕らえれば、褒美は思いのままだぞ!」
「……褒美」
「ゴクリ……王国の切り札を捕えたとなれば、一生、遊んで暮らせる……」
混乱していた兵士達は、目の前に餌をぶら下げられたことで、急激にそのテンションを高めていく。そんな風に兵士達をけしかけながら、ケロンは内心でこの戦場にユキトが出てきていないことを残念がっていた。
(噂のシジョウという若造がいないのは誤算だったな。そいつもここで殺しておきたかったが……)
ケロンのそんな考えを余所に、兵士達は褒美という言葉に勢いづいて、ファウナ達に向かって駆けだそうとする……だが、次の瞬間、兵士達はその動きをピタリと止めた。
「「……あ」」
「ん、どうしたお前達!?」
兵士達の方を向いていたケロンは、急に兵士達の動きが止まったことを訝しんでいる。だが、その原因はすぐに判明した。ケロンのすぐ背後からファウナの声がしたのだ。
「えっと、私の加護は……消えてないみたいなんだけど」
「なっ!?」
慌ててケロンが振り向くと、目の前には金髪のエルフが立っていた。ケロンがファウナ達から目を離し、自軍の兵士達の方を向いたのはほんの僅かの間だ。その一瞬でファウナはケロンの背後まで移動したことになる。となると、ファウナの加護は消えていないとしか考えられない。
「な……あらゆる加護が失われる……ベズガウトのヤツがそう断言しておったはずだが……」
露骨に狼狽するケロン公爵。この状況は完全に「詰み」を示していた。この場の皇国軍は全員が加護を失っており、目の前には山をも簡単に破壊するファウナが立っている。しかも、彼女は人間とは思えないほどに速い。逃げることも不可能だろう。
もちろん、ケロンの敗因はファウナ達の加護がこの世界の神々を参考にしたものではなかったことに尽きる。まさかケロンも、ファウナやフローラ、セバスチャンの加護の参考元が異世界の漫画やアニメだとは思わないだろう。
結果として、ファウナ達の加護は残り、皇国軍の加護が消えるという結果になったのだ。
「き、貴様……ワシに指一本でも触れてみろ! ただでは済まさ……」
ケロンの口上の途中だったが、ファウナは呆れた表情のまま、指に僅かな闘気を集めて、デコピンの要領で、ケロンの額へ向けて撃ち出した。
バシッ!!!
激しい打撃音とともに、ファウナのデコピン闘気弾の衝撃が、ケロンの意識を見事に刈り取る。意識を失ったケロンは白目を剥き、仰向けに大地に倒れこんだ。
「お望み通り、指一本触れてないわよ」
こうして、皇国軍の指揮官は王国に捕縛されたのである。
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時は少し前後して、ファウナ達が皇国の侵攻を知って、王都を出立した日のこと。皇国の侵攻のことなど露知らず、ユキト達は対グリ・グラトの討伐戦を継続していた。
激しく脈動するグリ・グラトからは、先の竜の頭の他にも、6つほどの魔物の頭が生えてきている。それぞれの頭が光弾や火炎、毒液などを吐きかけてくるのを、アルマイガーGは空中を縦横無尽に飛び回って、回避していた。
「アルマ! 大丈夫か!」
「はい、マスター。 この程度の攻撃ならば回避は容易いです」
アルマイガーGは、足の裏及び背中に広げた主翼の端からジェットを噴射することで推進力を得ているようだが、空中での自由な動きを見ると、些か物理法則を無視しているようにも見えた。
「お前……物理法則ってものを……って、魔法のある世界で今更か」
ユキトは「ツッコミは無粋だな」と目の前の現実を受け入れることにする。大事なのはアルマイガーGが空中を自在に飛びまわることができるという事実だけだ。
尤も、ユキト達ものんびりアルマとグリ・グラトとの戦闘を眺めていたわけではない。グリ・グラトの意識のほとんどはアルマイガーGに向けられている。だが、アルマイガーGとの戦いで千切れ飛び、地面に落ちたグリ・グラトの肉片は、不気味に蠢めいた後、手足のようなものを生やして、ユキトやアウリティア、ティターニアに襲い掛かってきたのだ。
強敵という程ではなかったが、後から後から出現するので、性質が悪い。その特性として、グリ・グラトと同じく魔力を吸収してしまうので、アウリティアは岩をぶつけるような質量攻撃や異次元への穴を作り、そこに肉片の怪物を放りこむという手で対処していた。
ユキトも全身メタリックスーツの宇宙警察へと変身して、ビームサーベルでサクサクと敵を細かい肉片へと変えていく。この細かくなった肉片も、放っておくと互いに集まって復活するようなので、さらに「火遁の術」で焼却する。
シュボウウウウウウ!!!!
炭化した肉片はもはや動く気配はない。
日本人が見れば、メタリックスーツのヒーローが忍術を使っているので、ツッコミを入れたくなるところだ。現に、アウリティアは「それはアリなのか」というような視線をユキトに向けている。
一方で、地球のエンタメと無縁のティターニアは、ユキトのパフォーマンスにテンションを上げていた。
「鎧の武装と魔力を含まぬ炎の術……これは見事だな!」
そんなティターニアも補助魔法による援護に余念がない。肉塊から生まれた魔物は少しずつ数を減らしていった。
だが、地面に零れ落ちた大半の肉片を片付けたところで、グリ・グラトから奇怪な音が響きだした。と言っても、ユキト達が、この戦闘中に何度か耳にしていた音だ。
グブグブグブグブ……ブシュ……
「この音……また頭が生えるようだな」
ティターニアの呟きの通り、グリ・グラトの体内からは新たな魔物の頭が生えてきている。今回は巨大なムカデと呼ぶべきような蟲の頭部だ。グリ・グラトの内部から肉を喰い破るようにして出現しているが、これもヤツの一部なのだろう。
だが、ユキトはその状況を待ち望んでいたような表情を見せる。
「おっ、遂に頭が8つになったな」
ユキトの言葉通り、グリ・グラトの肉から突き出している魔物の頭部は計8つとなっていた。様々な種族の魔物の頭部が集まっている姿は、ユキトに国民的RPG第5作目のラスボスを思い出させる。ユキトはそんな雑念を振り払いつつ、アルマへと視線を移して、大声で呼びかけた。
「アルマ! お前、何か武器を出せないか?」
何も持っていないロボットに武器を出せというのも無茶な話であるのだが、ユキトの見立てでは、アルマの加護は、ロボットアニメの中でも物理法則を無視する系のロボットを参照しているように見える。となると、異空間からハンマーやらソードやらを取り出すくらいはデフォルトのはずだ。そんな風にユキトは推測していた。
「確認します、マスター。 ピッ……機能検索…………異空間格納機能を確認。 異空間より専用武器を出現させます」
アルマはユキトの想像通りの答えを返してきた。やはり、スーパーロボットは異空間から武器を出せなければならない。これがスーパーロボットの常識である。
「アルマイガーハルバード!!!!」
アルマが声を響かせると、彼女の目の前の空間に亀裂が入る。アルマイガーGは、その亀裂に手を突っ込むと、むんずと何かを握り、そのまま力強く引き抜く。
シュバババッ!!
派手な効果音が響き、アルマイガーGの手には長いハルバートが出現していた。ハルバードは槍斧とも訳される武器であり、槍の先端部に斧頭が取り付けられているのが特徴である。アルマイガーハルバードには、黄金色の艶のある長い柄の先端に、黒光りする巨大な片斧と槍が備わっていた。
ユキトはそれを見て、満足そうな表情を浮かべる。
「よし! じゃあ、加護の付加を試すぞ! 剣じゃないけど、敵が8つの頭だし、どうにかなると思うんだ」
ユキトはそう叫ぶと、加護を与える対象として、アルマイガーGの構えるハルバードに定めて、自身の能力を開放する。だんだんと自分の能力の使い方も分かってきたところだ。ユキトの能力は、適切な条件さえ整えてやれば、かなり思った通りの能力を導くことができる。
「十拳剣の力が得られれば……」
グリ・グラトから生えている頭が8つとなると、古事記にあるヤマタノオロチに類似している。これを退治した十拳剣の伝承を、加護へと変えて、アルマの武器に宿らせようというのだ。
(8つの頭を持つ巨大な魔物を退治する力を……)
ユキトの力に導かれ、遠い世界の伝承が力となって、アルマイガーGの持つ槍斧へと流れ込んでいく。
+多頭殺しの加護:一定時間(3時間)、多頭の魔物及び蛇系に対する特攻を得る。
攻撃力 +300%(特攻時)
ユキトのイメージは無事に加護として付与された。多頭の魔物と蛇系に対して効果を示すあたり、伝承そのままである。流石に武器の形状がハルバードだったためか、有効時間があるようだが、3時間あれば十分だろう。
「よし、準備OKだ。 これで火力は揃った! このまま一気に殲滅するぞ!」
ユキトはグリ・グラトにトドメを刺すべく、行動を開始する。
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