第11話 確認!ステータス!
8/27 文字数調節のためにいくつかの話を分割したので、話数がずれました。
ユキトとファウナは、絡んできた男達の撃退に成功したようだ。
とりあえず、重傷者4名は街の衛兵が引き取っていった。路地から転がり出てきた男達を見て、通行人が衛兵を呼んだのだろう。
男達は全員Dランクの冒険者ではあるが、以前より新人冒険者を相手に金品を強奪していた疑いがあるらしく、今回の件も正当防衛ということで済まされた。
これはギルド前でのやり取りについての目撃者がいたことが大きかった。その目撃者というは、冒険者ギルドにいた銀髪の女性と初老の執事っぽい男性の2人組である。どうやら、3人組の男達が俺たちの後を追うようにしてギルドから出て行ったのが気になって、様子を見に出てきてくれていたようだ。
「何事もなくて何よりでしたわ」
美しい銀色のロングヘヤーをした女性は、ユキトたちが無事だったことに安堵した様子だ。
「証言してもらって助かったよ」
「それにしても、お二人であのならず者を簡単に倒してしまうなんてお強いのですね」
「ええ、まぁ」
銀髪ロングの女性に褒められるが、実態はファウナが一人でふっ飛ばしている。正直に説明するとややこしくなりそうなので、その点は伏せるユキトであった。銀髪の彼女も、路地から男達が射出されるところしか見てないらしい。
そんな女性らの証言もあって、男達に対しては、傷が治り次第、何らかの処罰が科されることになるようだ。
男達は、戦闘能力についてはCランク相当だと自称していたが、実際のところDランク上位程度だったそうだ。Cランクにその程度の戦闘力の者がいないこともないので、全くの嘘というわけではないが、そういった冒険者は信頼度や実績、他の技能でカバーしているのである。
ユキトはファウナとともに衛兵への対応を済ませてから、そのまま宿に帰って、部屋に入った。ただし、今回はファウナも一緒だ。宿屋の一室で男女が一組。ここでやることは明確だ。そう、詳細な説明である。
本気の目をしたファウナから、しっかりと説明するように言われている。ユキトとしても宿屋の窓から射出されたくはないので、ここはしっかりと説明せざるを得ない。
「まず、俺は俺の世界の神話や伝説から作った加護を付与できるんだ」
ファウナに分かっている範囲で自分の能力を伝える。神話や伝説だけじゃなく、特撮やアニメからも可能らしいと伝えたが、ファウナにはいまいち理解できなかったようだ。おとぎ話のようなものかと問われたので、似たようなものとしておいた。
「とにかくこの世界のものではない加護が付与できるってことは分かったわ」
「隠していて悪かった」
「おかげで助かったしね。Dランク程度とは言え相手が4人だったから。それにそれだけの力なわけだし。隠しておくべきとの判断は間違ってないわ」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「それにしても、恐ろしい強さね。武術家っていうのは格闘家のようなものよね? 異世界の伝承に出てくる格闘家って強いのね」
「まぁ、凄いヤツになると世界を破壊するくらいはやるな」
「はぁ!? 世界ば破壊!?」
「事実だ。あと控えめなところだと、生命オーラを手に集めて、それを光の砲弾にして撃ちだして、山を消し飛ばしたりもする」
「控えめ……」
ユキトがリアル路線の格闘漫画をイメージしておけば加護ももう少し控えめだっただろうが、残念ながらインフレ路線の格闘漫画の数々をイメージしてしまった。某有名作品を筆頭に、ユキトの挙げた程度は一般的な記述である。ただ、世界観が違うだけだ。
「その力が……私に宿っているのね……うん、ステータス上でも出てくるね」
「ん? ステータス?」
ファウナが聞き逃せない単語を発したので、ユキトが確認する。このディオネイアにはステータスの概念があるのだろうか。
「ええ、ステータスよ。ユキトの世界にはなかったの?」
「ああ、少なくとも日常ではなかった。 まぁ、創作物の中に考え方だけはあったが……」
「心の中でステータスと念じてみて」
「え? こ、こんな感じか」
ユキトが意識を集中して、ステータスと念じると目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がった。
「おおっ!? こ、これが?」
「出たかしら。まぁ、それは他人には見えないの。私からも見えないわ。それはギルドの登録時の魔法で使用可能になるものね」
「そうなのか……えっといろいろ書いてあるな」
シジョウ ユキト
『まろうど』 付与師
冒険者ランク E
+変身の加護:超金属の甲冑を身にまとう「変身」が使用可能となる
(エンチャンターってのは職業みたいなものか? 加護については記載がされるんだな。こいつは便利だ)
「なぁ、ファウナ。ここに『まろうど』って出てるんだけど、この内容ってギルドに伝わってたりしないのか?」
「このステータスは自分の状態を確認するための魔法よ。ギルドで管理されてはいないわ」
「そうか。なら安心だな……ってこれ魔法なのか。俺の初魔法だわ」
あっさりとした初体験に驚くユキト。
「初魔法? ユキトの世界には魔法はなかったの?」
「ああ、俺の世界には魔法は実在しなかった。おとぎ話の中には出てきたけどな」
「魔法のない世界かぁ。魔物との戦いには不便ね」
「いや、俺の世界には魔物もいないからな」
「えー! あんな強力な加護を生じさせる武術家がいるのに、魔物がいない世界なの?」
「いや、あの加護は……まぁいいか」
「ちなみに私のステータスには、その武術の加護が付与されているわ」
ファウナから教えてもらったステータスはこのようなものだそうだ。
ファウナ
格闘家
冒険者ランク E
+武術の加護:異世界の武術家の力を得ることができる
力 +2300%
敏捷 +1700%
「力が23倍か……ファウナとは絶対に腕相撲とかしないことにしよう」
「この手の加護は加護に慣れていくことでさらに力が引き出されると聞くわよ」
「じゃあ、まだまだ伸びしろがありそうだな。ファウナ、山ぐらい消し飛ばせるようになるんじゃないか?」
ファウナが言うには、加護に慣れていくことによって、自身の技能や基礎能力がそれに引っ張られて上昇し、その結果として加護から得られる力がさらに増すという成長のスパイラルが望めるらしい。
確かに、筋力や敏捷度が上がれば、それに対応するだけの身のこなしが要求され、加護とは別に素の基礎能力も鍛えられそうではある。
「明日のクエストだけど薬草の採集は危険はほぼないから、私は別行動でもいいかな?」
「構わないけど、ファウナは何するんだ?」
ユキトとしては少し不安ではあったが、男子たるものここで一緒に来てとは言えない。
「この加護の力にちょっと慣れておきたいと思って」
「どこかで訓練でもするのか?」
「討伐系のクエストを受けるつもり。お金ももらえて都合がいいでしょ」
「なるほど」
確かに討伐系のクエストならば、戦闘は発生するから加護の力を使うことになるだろうし、討伐報酬も得られる。初のクエストにファウナが同行してくれないのは心細いが、ユキトのクエストは、貸与された資料に記載された図と同じ草を探して持ってくるだけだ。昼は魔物も出現しない地域らしく、ユキト一人でも問題ないだろう。
「で、あと今晩からは私もこっちの宿に泊まるわ」
「お、おおお同じ宿に?」
美女から急に同じ宿に泊まると言われて、ユキトは動揺を隠せない。
「ええ。部屋は空いているみたい。しばらく行動を共にするんだから、宿は同じ方が良いでしょ」
「部屋は空いている……別の部屋、そうだな、うん。そう思う」
ユキトはがっかりと安堵が入り混じったような表情で返答する。
「でも、向こうの宿の部屋に荷物置いてるんだろ?」
「この後取ってくるわ。まぁ、今夜の料金まではまとめて払ってしまっていたけど、仕方ないわね」
そんなこんなで一通り話が終わるとファウナは自身の宿に荷物を取りに戻っていった。こちらの宿については、ユキトの隣の部屋が空いていたので、その部屋を押さえたようだ。
荷物を取りに行ったファウナが戻るまでの間と思い、ユキトはベッドに寝転びつつ一日の事を思い返す。
「ふぅ、今日は疲れたな……」
そして、そのままファウナが戻る前に深い眠りへと落ちていった。
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