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幕間 ~雷撃~

※注意!Caution!

 この話には以下の要素が含まれます!

 ・重度のヤンデレ

 ・重度の胸糞

 ・中農ソースを1ボトルがぶ飲みした時と同じ位に後味が悪い

 ・予告していた内容と違う

 以上の要素が平気な方は、このままスクロールしてください。


追記:誤植に関する件

 話の中でガバメントのナンバリングが間違っていたため訂正。

 M1891→M1911

追記:誤植に関する件

 ・以前表現の足らない場所の肉付けを行った際に古いデータのまま更新してしまったためガバメントのナンバリングが訂正前に戻っていたのを訂正。

 ・後書きの後書きを追記

 木陰から男はとある家屋をのぞき見ていた。

 そこは子供たちとほんの二~三名程度の大人が居るだけの、こじんまりとした孤児院だ。つい最近政府から認可を受けて補助金をもらっている、一度裏に関わった子供を集めたある種の秘匿戦力と言えなくもない場所だ。


 というのも、ここに連れ込まれる子供たちの大体は旧ネオナチ系列の人体実験施設『歓びの家フロイダス・ハウゼン』で生体兵器実験を受けていた子供たちだからだ。

 人為的にニュータイプ能力と呼ばれる眉唾ものの能力を付与させるために存在する施設だが、それがどんどん破壊され被検体が盗まれている。ついにはネオナチを動かしていたアメリカ政府も乗り出しこの孤児院『安らぎのその』を襲撃するように男は命令された。

 多額の報酬に釣られたというのもあるのだろうが、何より相手は所詮子供だ。経営責任者である海崎隼人も海上自衛軍関係者というだけで、特に恐るるに足るような相手でもない。数分で始末できるだろうというのが、男がこの孤児院を観察して思っていたことだった。


 誰もが寝静まる時間になるまで、男は麓の町で食事や観光をするなどして、時間が近づくとともに用意を始めていた。

 すでに作製されてから数百年以上は経つ、アメリカにおける最も一般的ポピュラーで、且つ本社の潰れてしまった自動拳銃、コルトガバメントM1911に無理やりサイレンサー取り付け用のアウターバレルを付けたような外観のそれにサイレンサーを取りつけた。

 兼ねてより計画していた時間になるとホテルのフロントに顔を出し『しばらく夜風に当たってくる。一時間くらいしたら帰ってくる』と言い残すと、一路孤児院の建っているあたり、高くもなく低くない山の中腹あたりを目指して、小さなリュックザックを肩にかけながらえっちらおっちら登り始めていた。


 フロントに言い残した言葉が最後の言葉になるとも知らず、男はとんでもなく重いリュックザックを背負いながら、ここに来るまでをまるで走馬灯のように思い出していた。

 昔から馬鹿で『黒人の典型』と呼ばれてきたが、それでもまさかこんな殺し屋を兼用した傭兵になっているだなどとは露とも思わなかったし、それでこの歳になるまで食い繋いでいけるとも思っていなかった。

 だからこの仕事が無事に終わったら、彼は故郷の生家に戻って母親に孝行するつもりでいた。幸い、仕事柄世界中を飛び回っていたからそれなりに言葉も使えるし、日本に行けるとなれば母親は泣いて喜ぶかもしれないと考えれば、知らずに口元は綻んで三日月を描き、クツクツと声を洩らしてしまいそうになる。これまで好きなように生きてきたのだから、勿論今度は母親を、死んでしまった父親の分まで楽しませてやりたいと、そう馬鹿正直に想っている分には好青年で居られた。


 仕事がこんなの(人殺し)でなければ、胸を張って会いに行けるのにな……


 一抹の不安がよぎり、それを払拭するように、暗示をかけるように彼は一つのことを繰り返す。

 この仕事が無事に終われば、母親に孝行できる、と。ただそれだけを繰り返せば、これから行う虐殺の罪悪感が軽くなってくるような気がして――けれど子供たちを殺して得た金に価値があるのかと別の自分が囁いてきて、何度も足を止めながら、彼は当初の予定より十分遅く、三十分かけて目的地にたどり着いた。


 急がなければ、時間に厳しい日本人のことだから、もしかしたら警察を呼ばれてしまうかもしれない。


 内心焦りながらそれをおくびにも出さずにリュックザックを開くと内部から一見してウェストポーチにしか見えないホルスターやマガジンポーチの付いたタクティカルベルト(※日本製)を装着し、M1911ガバメントや予備マガジンを次々とポーチに通して、最後にナイフを胸の横、脇の下あたりに取り付けると、もう一度孤児院を見た。


 子供程度の背丈ならば十分に行く手を阻めるだろう背丈の柵と、野獣避けの電撃管スタンチューブが外周に張り巡らされ、触ればひとたまりもないことは昼間に下見に来て分かっていた。

 こんなことを言ってしまえば不謹慎だが、これだけだ。一昔前のアメリカのように庭先に地雷が埋め込まれていることもなく、本当に、本当に暢気なものだ。

 街にしてみても、基本殺伐とした空気は無く男のような外国人にも寛容だった。自分がその調和を乱すとなると引け目が感じられて、けれどこれで足を洗うともう一度決意すると、男は目の前の柵を越えた。


 足を下ろそうとした次の瞬間――その足が地面に着くことは無かった。


 ぐらりと揺れる視界、つんのめるように前に向かって前進しながら転がるかのように倒れて、男はそれを視界に収めた。

 膝のあたりから下のない己の足は、暗い夜空に一人浮かぶ満月とそれに寄り添う少年の手にあった。その足だったナニカ・・・がなければ神秘的なのにと思いながら、この少年は気配を感じさせずに近づき、義足に取り付けられた刃で己の足を切り取ったのだと即座に理解した。

 よくよく見れば、柵も大人の膝くらいの高さだ。そこを目掛けて振るえば当たらないことは無いだろう。技術と民族性において右に出る国なしと謳われる日本なのだから、たかが子供とはいえそれを扱うこともまた児戯に等しいのだろうか。


 出血多量で朦朧とする頭はそんな戯けたことしか考えられず、けれど男は決定的なそれに気がついてしまい、それの意味するところを理解すると同時にこの少年に、この孤児院の子供に戦慄してしまった。

 そう、義足に刃が付いているのだ。それをふるって、男の足を切り取った。勿論、この孤児院の院長が知らないはずはなかろうと思ったが、直後に違うということにも気がついた。


 この少年は昼間、足を引き摺っていた・・・・・・・・・のだ。だが男の足を狙って切り取ったということは、すでにもはや己の足として・・・・・・定着している・・・・・・ということを意味する。であるなら、この少年は院長である海崎隼人に気がつかれないようにこの技術を習得したということになる。もしかしたら、他の子供も――――。

 そんな――まるで一昔も二昔も前のアメリカが作ったパニックホラー映画じゃあるまいしと思いながら、けれど先のそれを覆せる根拠はなく、すでに死に体の身体に鞭を打って、問いただすような言葉で少年本人から聞き出そうとした。


「お前――昼間に見た時は、足引き摺っていたじゃないか――――なんで………………」


 早く治療しなければ死んでしまいそうだと別の自分が半ば諦め気味に言うのを知覚しながら、男は焦点の定まらない瞳のまま、少年の暗く淀みながらも誰かを崇拝しきったような瞳を直視してしまった。

 まるでたちの悪い新興宗教に伝染してしまった人のような、けれど事前に聞き知っている内容からすればもはや当然なのかと思いながら、故郷に残した家族の笑顔が頭をよぎり始める。


 少年が満面の笑みを浮かべながら口をゆっくり開いた。そこから発される言葉はまるで祖母から聞かされた悪魔の言葉がごとく、ひずんだ響きはそれを知らないものであろうと何者にも等しく恐怖という感情を想起させるだろうことを理解してしまった。

 この少年が、この孤児院の子供たちが決定的に破綻していることまでも、不幸なことに男は理解してしまった。しまえていた。謀らずも、死ぬ瞬間は快楽とともに脳味噌がフル稼働するというのは本当なのかと実感しながら、続く言葉はまるで予知のごとく頭の中に生まれてきて――――


 だって、そうじゃないか。

 限られた情報しかない場所で、自身の価値は自身に対して行われる実験にしかないと知りながら、誰にも助けを求められず助けてさえくれない場所で、他者の情に訴えかけ己を延命させる行動を子どもたちが学習・・しないはずがないのだから。


「だって――――――――――――」


 すでに視界は暗黒に包まれ、聴覚と温かい快楽が脳味噌を緩慢にさせ、ゆったりと紡がれる小さな悪魔の声は先ほどよりもひずんで聞こえた。

 あぁ、これが死というものかと実感しながら、男は永遠の闇に意識を落とし始めて行く。冥土の土産とばかりに紡がれる、小さな悪魔の声を子守歌に。


 願わくば、子供たちに幸の多からんことを。願わくば、世界に安息と安寧の訪れんことを――――。


 この男が唯一幸せだったのは、男の死とほぼ同じ時刻にホテルのフロントに届いた母親の死亡報告を読まずに済んだことだろう。







「だって、そうしないと愛してくれないもの」


 少年は、いや母屋から見つめる幾多の瞳は壊れてしまった頭でゆがんだ回答を導きだしていた。


 これで普通に歩けることを、護身のための技術を身につけているということを知られたら院長(海崎隼人)副院長(海崎暁美)は己を憐れみ、慈しみ、そして愛してくれないということを。そう、この消えない傷があることこそ己が院長に愛される所以なのだと。


 ずるずると児童養護施設の外、林の暗くてじめじめして誰も入らないだろう場所にたどりつくと、少年は男の死体と右足をぞんざいに放り投げ、報道規制待ったなしの行動をして見せた。

 自身の義足の膝から下を取り外すと、義足は見る間にアニメでよく見かけるステップアップドリルのような形状になり、全く駆動音をさせずに深い穴を軽々と掘っていく。無論、この男を埋めるための穴だ。


 人を殺したなんてばれた日には院長たちに叱られるか、それとも捨てられるか、最悪の想像は少年に死体遺棄という更なる不法を強い、けれど愛に飢えた少年かれにはそれが正義だと思っていた。

 人の心が移ろいやすいことと己が愛され続けることはイコールの関係であり、移ろわせずに施設の皆で・・・・・院長と副院長、皆の姉(御鏡弥生)を共有することを第一の要件に、子供たちは幾度となく不審な人間を殺し、この山に、この大自然に還してきたのだ。己が、他の失敗作がそうされてきたように。

 つまるところ彼らの倫理観は院長と副院長、御鏡弥生を中心に構成され、彼らを害する如何いかなる者も排除すること、それだけを基礎として働いている。

 命がごみのように鏖殺おうさつされ消費されていく数年を過ごし、摩耗した心はよりどころを守らんとするがゆえに、己に課されてきた非道の数々を平気で他人ヒトに実践して見せた。愛を求める少年少女たちを、誰が責めることなど出来ようか。誰にも――誰にもそれを否定することはできないのだ。


 ずしりとした大人の男を、半ば抱えるようにして少年は穴に投げ入れると、せめてもの情けか、それか今際いまわきわに理解してくれた男に対する賛辞か、男の足をもとあった場所に添えてやり、丁寧に土をかけてやった。


 研究者に言われて少年は知っていた。死後の世界などないことを。故に死は救いでもなければ解放でもないことも、少年は聞かされてきた。

 それは人間が己の罪から逃れるために有史以来連綿と紡いできた、そしてこれからも紡がれ続ける死から逃れるための壮大な夢物語ファンタジーとして知っていながら、院長たちの言葉が反芻され、さまざまな思考が入り乱れる感覚に酔いながら施設への道をたどった。

 死が救いでなければ何故己はあの肉の塊・・・にあんな無意味なことをしたのか。それは弱さではないのか?少なくとも研究者たちにはなかった類の、どこかで死後の世界を信じたいという己の弱さなのではないか?それは施設の皆を冒涜する考えであるとして、訳も分からずに涙が溢れ出て来る。

 不思議だ。不思議で不思議で、だから涙が溢れ出て来る。他の子供が無意味な肉塊になり果てるさまを見ても動かなかった心が、たった一人の男によって動かされた事実は覆しようがなく、己がただ生涯愛するは院長と副院長と皆の姉だけであるべきはずが――それが一種の宗教と知りながらも、己はこのままここにいていいのか分からなくなり――その場で内股に座った・・・・・・




「どうしたんだ!?女の子がこんな場所で体冷やしちゃダメだろ!」




 己が敬愛し尊崇し崇拝するまるで天使のごときヒト(院長)の手が、頭を一撫でするたびに心地よい快楽に包まれ、少年(少女)はやがていつもの言葉を発していた。




「怖いものが僕を追いかけてきたから、お庭にいたんです――」




 いつものあの愛情に満ちた瞳が曇る様は見ていて苦しく、けれども同時に自分だけを見て涙してくれていると考えると嬉しくて、少年(少女)は小さな体全体を院長(海崎隼人)の身体に押し付け、発情期の動物がする求愛行動のようにひたすら院長を求めた。

 もっと、もっと強く愛してほしい。そのためなら皆は何だってやれる。後ろ指を指すモノがいれば壊す。笑うモノがいれば壊す。壊そうとするモノがいれば壊し返す。私たちは働き蜂で、アナタは王様蜂だから。




「そうか――うちに帰ろう。お風呂に入って、いつものオクスリ飲んで、皆と一緒に寝よう。今君が一人でも、皆がいれば、勝てないモノは無いんだから」







 だから私たちは願う。どうか、どうかこのまま平穏な日々が続いてくれますように。どうか何者も、この平穏を壊すことがないように――世に平穏のあらんことを、Amenエィメン








 はい、なんか本編よりも重いじゃないかというくらいに糞重いモノが出来上がりました。

 本当は前回のSieben(ワードの文書分けに独を採用しています)と婚約者視点のAcht、と続く予定だったのですが話の順序を繰り下げて、その間に一つか二つほど挿し込むことにして時間稼ぎしようということに相成りました。

 そのため本来は想定していなかった雷撃が挿入されることとなりましたこと、事前に通知せず申し訳ございません。ただ、予想以上に婚約者視点に行き詰り、息抜きも兼ねて本編とは関わりないけど描写したほうがよさそうなものをあげて行ったところ、三時間で出来上がったモノがこちらになります。

 こちらの話に関しても、自分のいろいろな考え方をちりばめましたが、どのように解釈されるかは読み手である皆様の解釈にお任せします。そしてこの『雷撃』における主人公たちをどう考えるのかもまた、皆さま次第です。たくさん考え、そしてそれを現実での生活に生かしていただければ、これほどまでに幸せなこともないと考えています。

 それと、自分は別に病んでいませんので、そこだけはご理解いただきたいですww

 これからも魔弾の射手をよろしくお願いします。

追記:

 最近ブックマーク登録者数が増えて来ておりますが、何か作中で疑問に思ったところ(芯に近いところはお教えできませんが)や誤字脱字等がございましたら気軽にコメント欄にお寄せください。何気ない一言の感想でもかまいません。(主に自分の)モチベーションが上がります。

 小説情報を見てもらえれば分かりますが、ブックマーク登録のおかげで評価数よりブックマーク特典が評価の主になっているんで、見た瞬間笑ってしまいましたww『なんかすごいことになってるなww』って感じでパソコンのスクリーンに緑茶を吹きかけてしまいましたww画面上にいる節足動物門鋏角亜門(蝶個人的)クモ綱クモ目(な天敵)を退治できたのは不幸中の幸いです(結構怖かった)。

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