表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鴇朱興国忌憚な矜恃  作者: 頴娃伺結有
獣耳族にご注意を!!
7/12

【06】移動開始


 成り行きバーベキューを終えると、五人でこの都市の散策を始めた。目的は情報と生物の発見で、原生生物は生物だが意思疎通はできないと判断しての行動だ。

 それに、どうせ移動するのでその手段も欲しかった。特に、そこらにある車のような機械が動けばいいが、エンジンまで腐るというか、壊れていた。

「ねぇー。なんで歩くのさ。タイヤがあるから、なんか作ってよ」

 アリカがヤマキに頼むが、実際そんなことをできるのならそうしているだろう。しかし

「その手が有りましたな」なんて、言ってる始末。もともとから、アリカが教祖をしていて大丈夫だったのだろうか。そんな疑問はアイが答えた。

「基本、スメラギ様のお世話をしていたのは昨日、こうくんがっちゃったから」

 その説明で合致が言った。宰相とは言いすぎだが、その人が教祖の脳であったのだろう。この教祖であるアリカを見ていれば、さすがに人の上に立てる人物でないかなんて思っていたのだ。特に、生活の仕方である。現状把握が二の次のような気がする。

 まぁ、こっちに来るのが目的だって言っていたので焦ることは無いと思うが、人間が五人になっていることは気にすることではないのか。

 そして、図書館を見つけた。

 

「帳、何か居るか?」

 アリカが尋ねる。帳は首を横に振って「いえ」と答える。

 コンクリートというか、地球であるようなそんなのではなく、柵が廻りに張り巡らされておりその中心に図書館があった。灰色の柵は約20メートル以上あるか、無意味に高いような気がした。

 中に見える図書館は限界まで強化したような金属で壁ができていた。何故そんな強固に作るのか知らないが、今は警備も居ないので楽に入れることは確かだった。

 『あれはね、陸から入ってくる原生生物への対策。上空はスメラギ程無いけど結界があると考えられるよ。電源は地下20mのところにあるから切った方がいいから以上』

 ――?なんだろうか。頭のなかでそんな言葉が聞こえて気がした。

 もし、それがホントでも、600年前の技術が動いているはずないだろ、と考えつつアリカにそのまま伝えた。

「だってさ帳、見てみて」

 全てが人任せだな。

 帳はこめかみに両手を添えて一休さんのように集中し始める。生物を捉えるより機械を見つけるほうが疲れるのだろうか。そんなことを考えつつ。

 都市のビル群から少し離れているが地下には、結構な量のパイプなど、電線などあってもいいはずだ。その中から、形も知らされていな物体を見つけることは不可能に近いと思う。その能力が、関連している機械も捉えるものであれば違うだろうが。

 僕は、そこらを見回してみた。何か手がかりは無いかと思ったからなのだが

「動くな、康」

「はっ!?」

 そう言われて僕は一歩踏み出したところで止まった。

「……終わったら謝るといい。地下に集中している時に動くと頭が痛くなるそうなのだ」

 アリカが、しれっとそういう。

 彼女――帳はしゃがみこんで下から見上げるように上目遣いで僕を睨んでいた。ほんとに痛いのか?そんな目で見られる僕もなんか精神的に痛いのですが……。

「どうだ?何か見つかったか?」

 尋ねれば頷いてヤマキに耳打ちする。この二人はそんなに仲が良かったんだなと思っていると、ヤマキが動き出す。

 両手を胸の前でクロスさせ、思い切り力を貯めるような形になる。髪の毛がなくツルツルの彼は、なんとなく笑いたくなるが会って二日目であるのでそれは失礼かと思って我慢する。プルプルと震えるが仕方がない。

 そこで初めて見えたが、彼の周りに小石などが集まっていくのがわかった。それが凄く小さい石なので分からなかったが、絶対にそうであると思った。

 アリカと帳の髪が少しだけヤマキに引き寄せられているからだ。それも微量に。抜けることは無いだろう。

「開眼の三―集皆のりき

 その小石が彼がクロスさせている手の間に集まっていく。圧縮されているのか凄くそれでも小さかった。直径5cmくらいだろう。

 クロスさせたまま頭上に持って行くと「ハァ!!」と叫べば活きよいよくその手を振り下ろす。小石が圧縮されたそれは柵に向かって飛び、その隙間を縫い奥にあるタッチパネルに衝突した。

 恐らく、衝突された本体は、役員が入るためのパスをタッチするところではなかろうか。あいにく、高校ではそれは導入されていないので名前は判らないが。

「介入パス15669――――帳」

「潜入――成功。解錠と結界の無効化に成功」

 二人のコンビネーションに感心するしか無かった。長年練習してきたような鮮やかな手口だ。

「この二人はな、教会の目の届かないところで盗みをしていたのだ。この能力は攻撃にも応用できるので連れてきた。しかし、康の攻撃で生き残るとは思わなかったのも事実。アイは……当然だな。俺の後ろにいたから」

「そこはどうでもいいんだって。てか、この二人罪人じゃないかって!!」

「この世界に警察はいない」

「そうだけどもっ!!!」

 アリカはしれっとしているので、なんかむかつく。でも、図書館の厳重な鍵を突破――案外地球も異世界に通用するのな――するので、正直驚いた。

「アリカ様、俺は台車を作って来ます。タイヤはゴムが使えないのでガタガタになるのは予想できますが、しょうがないのでいいですよね」

「いってら~」

 軽くヤマキに手を振れば、そのままヤマキはそこを後にする。帳は、安全を確認するためか既に敷地に入り込み扉の前で僕等を待っている。

 ――行動が早いな。

 と、考える前に泥棒の本能が働いたのかと、小さく吹き出してしまった。

 

◆◆◇◇◆ 


 四人は森のなかを平行して歩いていた。その中にアイはおらず、僕は大きなカートを引いていた。

 600年途切れることはなく適度な空調整備ができていた。太陽光発電と地熱発電を同時にやっており、温度と湿度は本に適度なように調節されていた。

 図書館の中には、どこから入っていたか虫が死んでいたり埃が凄かったが、本は全て生き残っていた。虫がいても虫食いは無かったので、本が読める状態であったので凄く得した気分だった。

 まぁ、この星に地球のように書物があることが驚きであったのだが、それ以上に書体は日本語に似すぎていた。所々の図と見比べれば、並び方は日本と一緒であった。

 大まかな情報はあったのだが、詳しいところは知りたいと思っていた。凄く丁度いいとイオレールに関する書物を二百冊程度持ち出してきた。

 カートは、出てきた時に既にヤマキが造っていたのでそれに乗せて来た。


 日本には、オタク文化があった。その中で目を瞠るのが『擬人化』である。人間でない動物が元より果ては機械、戦艦まで擬人化されている。

 アリカが言うには、最初に《テラ移民》という民族に用があると言っていた。そして、その《テラ移民》が猫耳や犬耳など、通称『獣耳族』であるらしいのだ。

 生活していくうちに、イオレールの高度文明とは別に進化した戦闘民で、特に視力と聴力、戦闘能力に秀でているそうだ。

 生活方法はとても原始的に、このイオレールやその他の高度文明に侵されずに独自に進化したものであるそうなのだ。それは、各時代の王によって細かには変わるそうであるが、大幅なものではないそうだ。御老年が多いそうで、学習能力がとても高いそうだ。

 それと、もう一つ。各時代の代々の王は、戦闘能力で決まるそうだ。基本、約束は絶対に守る義理堅い民族だあるとも言われている。

 アリカの計画では、まず、《テラ移民》を支配しようというのだ。

 しかし、移民というので今、どこに居るかは解らない現状だ。なので、北の《カムオル》という都市に向けて進んでいた。

 何より、一つも移動手段が無かったのがキツイのだが、しょうがないな。

 しかし、アイは僕が引くカートに乗って本を読んでいる。何故、教祖が歩いていて、彼女がカートに乗っているのか。まぁ、もしアリカが乗ってくるようなら飛び蹴りしてでも蹴落とすだろうが。


「ところで、アリカくんは何しに来たの?危険を犯してまで」

「康は俺のことをアリカと、呼ぶことを許可しても良い。」

「じゃぁ、アリカ。どうして?」

 僕は、そこまで興味が無かったが尋ねた。まぁ、全く興味がないと言うわけではない。僕の場合身体が勝手に、先輩を振りきってまでも。と言う理由からだが、アリカ達は意識的に此処に来ていた。

 しかし、彼――スメラギ・アリカの行動理由が分からなかった。

「……《マクスカイア同盟軍》をぶっ潰すためだ」

 力が篭ったように彼は言う。

 僕が引いているカートに被せている彼の能力の結界がガタガタと震える。

 と、背の高い森の木も同様に震えた、振動したとそんな感じの風がその時ピューと吹いた。

 飲水は近くの湖の水を都市にあったペットボトルのような容器に注いでいた。安全かは、ヤマキがゴクゴクと飲んでいたので、確認を諦めた。

 時々、少ない飲水をアイが飲んでいる。カートに乗っているのは「疲れた」かららしい。まぁ、元より200kgを超えているので、そこに40kgが加わっても、力を入れるのにさほど変わりはない。

「《マクスカイア同盟軍》は、俺にだけコンタクトを取ってくる。この星も同盟に入らないか?なんてな」

 アイは、本を読んで聞いていないようであるが、ヤマキと帳は少し悔しそうな様子を見せる。

「入れば旧人は滅ぼされ、同盟から人が来るんだと。この星の支配者は俺になるんだと」

 技術や、この星の保護は保証される。しかし、全体の四分の三の人口、云えばオリジナルの地球人がいなくなる、ということであった。ものすごく頭に来たそうだ。その提案が。なんだかんだでアリカは人間に優しかったのだ。

「俺は《マクスカイア同盟軍》に返事をしに行こうと思っている。そのために、戦力と宇宙を渡る技術が無かった。元より、それはこちらで手に入れる予定だった」

 「あ、なんかごめん」僕は、こちらにきた時のあれを思い出した。まぁ、仕方なかったことであるが。

 謝れば、帳が「いやいや」と手を振って否定した。

「少々でも、この星の情報があったほうが人数よりも確かですし――」

「そうだ。力、戦力の点では俺の部下を殺した時に既に証明されている。悪いが、あいつらはこちらで生き残る力が無かった。それだけだ」

 地球の東京以外の都市は凄く治安が悪いそうだ。それは、日本の事ではなく地球上の全てに共通してのことである。

 他国は、復興できる状態では無いと聞いたことがある。しかし、アメリカや、イギリスの復興は東京と同等か、ちょっと下くらいなのだそうだ。

 安全なのは、600年間を通して東京だけであった。変わらないところは、何年たっても変わらないのだ。

「俺は、康と一緒に行動したほうが特と考える。結構貴様おまえは部下の扱いはいいだろ。生徒会長らしいしな」

「………。」

 ほんとに、昨日の事を思い出せない。何を話したのか。更に、アイに何をしたんだろうか。

「まぁ………。ね」


「《テラ移民》の王になって戦力確保が第一目標だ」

 アリカが、右手の拳を左手の手のひらにパァンと叩いて言う。

「南、…《ヨルナバル》って、イオレールの技術の元か。じゃぁ、宇宙船も此処で――」

 アイの独り言か、アリカが無言になった。誰にも相手にされなくて寂しく感じたのか。もうすぐ30の26歳。アラサーのアリカはなんて子供っぽい。

 僕は、密かにそう思った。


合宿と、テストで更新遅れました。

読んでくれている読者様すみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ