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鴇朱興国忌憚な矜恃  作者: 頴娃伺結有
プロローグ:生徒会長と先輩
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【03】異世界と地球外


それは、まるで長年愛用してきたみたいに手に馴染んでいた。僕はそれを門に向かって構えた。

 何が発射されるのかといえば、空気砲と言ったほうが安全でいいだろう。空気を圧縮して銃弾として飛ばす。僕の頭では理解不能だったが、感覚的には解っているようで。なので深く気にする必要はなかった。

 それに向かって引き金を五回引いた。

 太陽光に反射して門の周りに壁があるように見えた。それも透明な。だから、僕はそれがアリカのしわざだとすぐに分かった。どうでもいいが、門の向こうに行きたいので邪魔はしてほしくなかった。

 銃弾の速度は秒速七億キロである。コレに対しての早さは全く理解できない。光速の約2300倍と言ってもわからないだろう。それが、一瞬のうちに5つ発射されたということだ。

 どんな硬さでも、そんな早さのモノには敵わないだろう。引いた瞬間肩が外れそうな衝撃が走るが、この世の物とは思えないほどの衝突音がした次の瞬間にその痛みも引いていた。

べきぃぃぃぃんっ

 そんな音が鼓膜を震わせた。痛いというか、もう手で塞いでも音がそれを超えて響いてくるような。

 正確に説明すると、銃弾は空気を圧縮した後BB弾のようなカプセル状なものに詰める。成分で言えばカプセル状のそれは、身体の一部を変化させたもので強度は多分、地球上では一番だと思う。

その音で、気を取られた生物が次々と狩られていく。多分、音は誰かの援護とでも思ったのか、アリカですら気にした様子は見られなかった。

 目を凝らせば、一キロ先の出来事なんて見えるのだ。基本それを知らずにメガネを掛けている人は凄く可哀相とでも言おうか。勿体無い。人間の全部の性能を使える自分はある一種の《超能力》とでも言おう。でも、アリカ達信者の【超能力者】と一緒にしてほしくはないが。

壁は、綺麗に取り払われていた。反射こそしないものの、原生生物が外に出ないための対処だとすれば少々の罪悪感が生まれるが、それしか無い。

「………どうしてだろう」

僕は、どうしてこんなにも『力』を知っているのだろう。先輩にはどう思われただろうか。

 ふと、後ろにいる彼女に対してそう思った。

ウェイグル星と云う吸血鬼の住んでいる星について説明とかしたかったのだが、そんな未来は僕にはこないと思った。多分、僕は門を超えるのだろう。それはもう、確定事項だ。


 サイレンが聞こえてくる。警察でも無い。消防車でもない。自衛隊でもない。自衛隊といえば、九州の反乱によって全体の殆どを失ったんだっけ。

 《マクスカイア同盟軍》だった。この星の乗り物とは定を逸した存在で、白バイなるそれに似ている部分が多少見られた。目撃は初めてだが、空をとぶ、飛行機やヘリコプター等よりももっと機動力のある、言えば機械化された鳥のような自由度のある飛び方の機械は地球産では無い。

しかし、来るとは思っていた。いや、解っていた。門を開くこと、それは過去の話でも禁忌に部類されていると話されていた。それを見過ごすわけには無いと、この頭が解っていた。

 でも、予想外なことに来たのは門の中からではない。外から来た――大気圏より飛来してきたと云うべきか、それが四台。

「邪魔なんて、とんでも無い」

 僕は、呟くとPN227型銃を構え直す。

――生物であればどうせ、頭が弱点だ。

 常識な事である。中にはそうでない生き物もいるが、ほぼ例外は無いと思っている。白バイに乗っている八人もそうだろうと、考えた。

 二人乗りの白バイの運転している方にターゲットを置く。

 視力を調整する。頑張れば、ゲームのように心拍数を視線の右上とかに置いたり、自分や相手の名前や体力――HPを表示することも可能で、四つのターゲットを同時進行で表示することのほうが前者よりも数倍以上は楽な事である。

まぁ、視力ぐらいは、10.0の人間が居るくらいであるのでその点で驚くことは無い。

 僕は、スコープのように倍率を大きくしていた。画質はいくら大きくしてもフルHDでなんだか、自分がおかしくなったのではないだろうかって思うが、それと同時に普通だろという思考も持ち合わせている。自分の中に二つの意識を持っているような、そんな風に感じる。

 狙いを定めて。引き金を次は四回引いた。さっきはアリカの防御性能が分からなかったので五回引いたが、今回は、一発で人が絶命すると解っていたので数の分しか発射しない。そもそも、この銃弾を沢山使えばちょっと疲れるのだ。

 乾いた銃声が聞こえて、四台の《マクスカイア同盟軍》のバイクが墜落して爆発を引き起こす。しかし、その影響を最小限に抑えたのがアリカであった。壁で炎を抑える。

と、いうかまず、スメラギ・アリカは邪魔な存在であった。爆発すれば、それで隙ができる。それで、門に入り込めたはずなのだ。

 まぁ、どうでもいいか。

僕は、そのままそのマンションの地面を蹴って門へ走りだした。屋根の上に着地してそれからまたジャンプして、それの繰り返し。

『ねぇ』

 ズキンと頭痛がして僕は、少し進んだところで止まる。ここらの住宅は元より平べったい屋根で、というか屋上であった。太陽光発電のパネルが、砂漠に設置してあるそれのように沢山あるのだ。一部、それが無い所に着地しながら行っているが、頭痛のためにパネルを二枚ほど使い物にならなくしてしまった。まぁ、いいか。

 頭を抑えながら、四つん這いになるような形を取って息を深く吸った。少し落ち着いたかと思えば再び声が聞こえた。

『今から、後悔したって無駄だよ。僕はもう力を行使したからね。僕には目的があるはずだよ』

それは、多分厨二病が思うような覚醒であった。脳に、先ほどとは比べ物にならいほどの量のプログラムのようなそれが流れ込んできた。

「《硬質ナヒトノ肉体ヨ我、あるじト認メ力ヲ解放セヨ――飛躍跳麝》」

プログラムの内一つがピックアップされて口が自然に動く感じがする。

 ふと、身体が羽になったように軽く感じられて、声の主が言っていた目的を果たそうと僕はそこを蹴り、また進みだす。

 先ほどとは比べ物にならない程に進む。二十秒もかからずに、一度は本能的に逃げた前線に赴いた。


 自然な空気や、元より感じられた変な空気すらもう論外の、生臭い獣の匂いが鼻をつく。白バイの爆発による炎が色んな所で燃えているので、もっと匂いが激しかった。

 赤くなった世界を焼き付けて、ゆっくりと門まで進んでいった。ふと、ケータイのバイブが震えた。

 メールだった。送り主は先輩で、

『しんくんは門の向こうに行くんでしょ。電波とか飛ばないと思うからこのメールが最後だよね。私と約束してよね、絶対に帰ってくること。絶対だよ。』

そう、書かれていた。添付ファイルに先輩が自撮りしたような写真が載せられていた。

 あっかんべーをした写真と、前、僕と一緒に海に行った時の集合写真。それと、先輩とのツーショットだった。

 なんだか、漫画とかの最終回だななんて思いながら、先輩のケータイに電話をかける。

 一回目のコールででた先輩は

『なんで、電話してくるの?感動する感じにしめたじゃん』

「ありがとうございますって、言いたかったですから」

『そんな、どうして行くの?解らないから……帰ってきて全部話して』

「そうですね。先輩のために……帰れるのなら帰ってきます。なんだか、僕が僕のようでは無いですしね」

『いや、あれはからかってみただけなんだよ?』

先輩は、前の会話にそんなことがあったなと思って

「別にそうではないんです。まぁ、帰ってから話しますね」

『ぅん……』

先輩は泣いているのだろうか力なく頷いて返事した。


  ゆっくりその門に足を踏み入れた。

 自分が、門の向こうに行く理由はほぼ判らないが、目的があったのだと少し嬉しく思えた。

 しかし、もう一つ。先輩のために帰ってこないといけないと言う事も追加された。

だから、少し清々しい気分だった。


 門に入って三十秒も経たないうちにその門は消失した。恐らく向こう側から《マクスカイア同盟軍》が閉めたのだろうと予想すると、一度深呼吸をした。

 緑より紫に近いその木々にもう、地球では無いんだなと思わせられる。幹には、自衛のための刺があった。凄く鋭くて触れれば血が出そうだった。

そして、見つけたのが、二十人位の人間がいた。その中心に居るのが『スメラギ・アリカ』その人であった。

「一般人が入っていた……だと?」

 目を白黒させて驚いているアリカに面白さを感じた。


「一般人だと――僕がそれだと思うかい?」

僕は、尋ねた。凄く凄く威圧的に。恨みは無いが、死んでもらおうと言わんばかりに僕は睨む。眉間にシワを寄せる以上にオーラが見えるならそれは、覆い尽くさんばかりの黒だろう。

やっと、プロローグ場面が終わりました。

分割しすぎたのは、反省面ですがこれから物語が大きく動き始める思います。

スメラギとの関係が予想外の展開で読者様が面白いと思ってくれれば。

これから、また、頑張りますのでよろしくお願いします!!

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