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鴇朱興国忌憚な矜恃  作者: 頴娃伺結有
プロローグ:生徒会長と先輩
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【02】未来が見える≠つまらない



9月24日、正式な年号は判らない。六百年前に被害が出て歴史がストップしたと云うことである。なので、判らないといった方が今の時代では合っているのだ。

それから、今日は被害の現況の門を開く日となる。向こう側の戦力がどれほどになっているかは解り兼ねるが、こちらにはスメラギ・アリカが居る。もしも、また攻めて来るようならアリカの力を借りて門を閉めるつもりでいた。

それが、何故証拠も無しに安全と思えるのか、沢山観客が居た。

僕は、数少ない生徒組参加者の一人として参加をしていた。

あれから、仕事が弾むように終わっていった。特に興奮したといえば聞こえは良いが、全てが楽に感じたのだ。

そして、一番変わったといえば自分の性格では無かろうか。人から頼まれたことを断るようになっていたからだ。

心境の変化か、それか、成長か。自分の感覚では意識を乗っ取られたような気がして、前まで本心ではない言葉が飛び出していた。

いつしかそれも、普通じゃないか?と思えるようになったのはつい一昨日の事だ。

 生徒組の参加者は学生として優等な者から選ばれる。

外に東京以上の権力を持った国家も人間も居ないので、よって北王子学園五連結高等学校の中の人間から選ばれているようだ。最初は僕は入ってなかった。一週間前からの仕事ぶりから僕も選別された。

嬉しい事なのだろうが、何だか本心からではないような気がした。そんな気分は克服したと思っていたが実際はそうではなかったと云うことなのか、それとも。


解らないが自分は人間ではない気がしていた。

見たことのない記憶や情報が脳に刻まれている。僕は気にしていないが、そのなかの自律思考集合体なのではないか?と思ったりしたこともある。六百年前に開いた扉から入って来た種族の一つで、肉体を持たないコンピュータを本体とした生物である。

脳を電子プログラムで構成され、それが意識で全宇宙をさまよっている。

量子コンピュータが本体であるのか、いや多分それより遥かに高い演算能力を持っているのだろう。

《マクスカイア同盟軍》にも存在がばれていない超高度な文明科学を持っている《ヒト》である。

 それが自分であると、思ってしまう僕が解らないが。詳しくは理解できないが、自分が二つ在るような。そんなかんじ。

 でも、僕は普通の人間で居たい、と思っていたいのだ。しかし、「彼女」はどこへ行ったのだろう。


――

 キスした時、「彼女」は瞬間的に姿が消えた。触れられていた体温はすぐそこに感じられ、それが夢でも幻覚でもないことを語っているはずなのに、そこには誰も居ないのだ。

それから、僕の意識は突然ぷつんと切れた。それは、気絶というよりかは、誰かが強制的にシャットダウンしたようだと感じた。

 そして、気がつけば朝だった。

 その出来事が無駄だったか、と聞かれれば、「それは無い」と即答しそうな程に見える世界が見違えるようにクリアだった。

それは、視力の問題ではなく感覚的なものだった。生徒会の資料は読めば一語一句覚えるし、何より全てが初めてな感覚に見舞われた。昨日まで着ていた制服も、靴下もなんだか肌に当たる布が少しチクチクするので変だった。

聴覚は、遠くの小鳥の囀りすら聞こえるくらいに透き通っているようだ。コレなら人の心も読めるのでは?なんて思うが、普通の人間には出来無い事はしたくなかったので、その時は実験もしなかった。

 資料と徹夜でやるはずだった仕事が一時間そこらで終わり、自分の力に驚いていた。

 しかし、その日学校が始まっても彼女は見られなかった。


「大丈夫だろうか」

いつしか、心配は口に出ていて

「しんくんダイジョブ?」 

 隣に座っている三年生の馬場志麻子先輩がいうので、「アハハ……」と返す。

 その時以外に会ったことのない彼女なのだが、異様に心配になる。それは、親友の妹が失踪した時の感覚と一緒位だった。

――探しまわらないのか?いやいや、感覚的には心配だけど探しまわるレベルでは無いよって言いたかったんだが。

「ほら、しんくん。あれがスメラギ様だよ」

 指をさす彼は、赤いマントを羽織っており、その周りには20人位の幹部がいる。声援に答えるように手を振っていた。

 僕ら生徒組は、一般人と一段ほど高い段の上に青いテーブルクロスを掛けている机に座っている状態だ。その机には紙に『生徒組』と書かれているので、傍目から見れば有名人なので恥ずかしかった。

 生徒組は、一般生徒の中でも選りすぐりの優等生で、テレビでもそこそこ有名な組である。

どのくらいかと言えば、大きい音楽番組に初出場した無名なグループ位だ。名前くらいは覚えるだろう。でも、名前すら覚えない人もいるが、曲を聞いたら案外好みで。っていう感じである。理解してくれただろうか。

 ………ところで、一週間前から――彼女がキスしてきたその日から、誰か脳に直接質問してくるような感覚がある。別にどうって事ではないが、ふつう……ではないよな。

「雑誌とかで見ましたよ。僕はスキになる人の感覚がしれませんけど」

「だろうな。彼は女性にしか効果のないフェロモンを出しているからね」

「見えるんですか?先輩【能力者】?」

へっ!?と先輩の方を向いた。いつもはキャラじゃないが、先輩は笑っていた。

「しんくんなんかこの頃人間らしくなったよね。前は少し冷たかったのに。わたしの冗談なんて無視してたもん」

「は?そうですか?……此処はありがとうと言ってたほうがよろしいので?」

「はははっ。――でも、何か変わったというか。気を悪くしたら謝るけど、人がまるまる入れ替わったようだよ。性格が真逆になったみたいに」

 そう言われた。そこは真剣に悩む。変わる前はどう印象を与えたのか分からなかったからだ。全く自分には解らない変化。そんなものがあるのか。しかも、真逆とまで言われて。

ニコッと笑う先輩はなんだか優しい光の様で

「でも、その方がわたし的にも好きだな。人当たりがいい。言っておくが前はしんくん、君は機械だとまで言われてたんだよ。あまりに冷血過ぎて。吸血鬼もびっくりだよ」

「?先輩も《ウェイグル星》知ってるんですか」

驚いた。先輩も宇宙の知識があったとは。僕の記憶どうりではそういう類のモノは弱かったのではなかろうか。

「うぇいぐ…せい?何?そこ。天文学は凄く苦手って言ったじゃん」

 どうやら、その通りだったようで。でも、僕はなんでそんな事を言ったのだろう。不思議だ。


『――そして、扉を開き、新世界の地を最初に踏むのはこの人、教祖様「スメラギ・アリカ様」だぁぁぁぁぁ!!』

アナウンスが凄くうるさくなって一気に温度が上がるように騒ぎ出した。

「しんくん、今度二人で教えてよ。宇宙のこととか。しんくんが好きなモノは共有したいし」

歯を見せて片目をつぶる先輩は凄く魅力的に見えた。

――君に最初に唾つけたのはわたしだ。

 少しムカッとしている感情が伝わってきた。なんのことだろうか。

「今度の休みでどうです?生徒会も休みですし」

そうやって僕は返すと、きぃぃんと頭が何かに締め付けられるように痛くなってきた。

 

 それは、未来の映像のようで僕の目の前で先輩が殺されている憧景である。門は開いていて、先輩を殺したのはそこから出てきただろう謎の生物である。二次元の龍のようにも見えた。2本の羽を羽ばたかせて人間を襲っているように見える。

 

 現実に戻った意識で、さっきのはなんだろうと考える。少なくともあの門の中は、異世界と言われている。映像のような未来は無いと云う根拠もないし、保証もない。でも、本能的にこの場は危ないと呼びかけられている気がして。

僕は席を立った。

「先輩、折り入って相談があります」

 なんて云って動いてくれるか判らないが、スメラギ・アリカは研究者共に門の鍵のようなものを受け取っている。時間はあまりなかった。

「今、人目に付かないところで先輩に話したいことがあります!!」

「へっ!?しん…くん??」

 もういいやとばかりに、先輩の手を強引に掴んでから立ち上がってもらう。

「しんくん、どうしたの?さすがにしんくん、頭でも打ったの?状況を考えてよ」

何や何やと、一般客の少しがこちらに向いたような気がした。だけど、此処にいれば死んでしまう。

 無理矢理に先輩をお姫様抱っこのように抱えてその場から駆け出した。間に合えよ。

 なんとなくだけど、そう願って一般客と招かれた客人、――つまり僕達を隔てる柵に向かって思い切りジャンプする。人が沢山いるが流れで避けてくれたので良かった。


ぱきん


 門の鍵が開いたような大きなそんな音がした。早くしないと何かが出てきてからじゃ遅いんだ。

「どこへ行く優等生」

警備員に言われるが僕は焦ったように「トイレですよ」と叫んで一刻も早くと走りだす。

『向こう側の光が見えてきました。最初に見えたのは草です。でも青緑に近いな。しかし、コレで人類は大きな一歩w――――――ごぎゃ』

 血が噴き出るような液体の音がマイクで拡大された。何も考えないが、多分司会者は死んだのだろう。

まだ、人混みからは300mも離れてはいない。一秒一秒悲鳴や絶叫が大きくなっていく。あの未来視が本当の事だったのだろう。そう考えれば身震いした。

 あのイオレールは《マクスカイア同盟軍》に全て捕まったのではないか?いや、あれは姿からして原生生物なのだろう。群れをなして狩りをする生物で、知能はカラス並み。でも、学習能力が高く、子孫にまで一度受けた新兵器の対処法が遺伝子レベルで伝わる。

クラウドの情報ではそうなっていた。

――追いつかれるぞ

「《五体激化―70%》」

口が勝手に動いてそう言っていた。なんだか、全体的に身体が分厚くなるような気がした。

 人間は100%の力を出していないという。それを機械的に有効にリミッターを外そうと云うプログラムだ。

 道路を走る僕は、沿いのマンションに向かってジャンプする。

「ねぇ、しんくん。どうしたの?あの音は何?みんなどうしたの?」

「わかりません。でも、襲われています」

「何?何が起こっているの?しんくん!!!」

「わからないんですよ!!黙ってください。――――あ、すみません」

一回のジャンプで五階まで辿り着く。八階建てで、五階のベランダの柵から、正面のマンションの屋上まで飛んだ。

「ごめん、しんくん。君も焦ってるんだよね」

 先輩は僕の腕に抱かれたまま少し小さくなっていた。その屋上で先輩を下ろすと

「わかりませんけど、こうなるって判ってました。先輩に死なれたく無かったですから。先輩は僕の唯一の理解者なんですから」

 頭のなかに流れてきた。あの生物を倒すこと、それとあの門の中に入り別の星に行くこと。そこには、宇宙船を作るのに特化した民族が居るそうだ。そこに頼む。

先輩に背を向けて、先輩は生きてくださいとばかりに僕は隣のマンションに飛んだ。


「《PN227型》」

もう、感覚的に掴んでいた。武器の名前や、自分を強化する魔法のような呪文。代償も一緒に分かったが意識するほどのものではなかった。

 彼の手の中にどこからともなく、少し銃身が長くしかし、ライフルとまではいかない大きさの銃が握られていた。

 


描写の練習中です。

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