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時雨  作者: とにあ
19/31

蒸し暑い晴れの日 時雨森へ行く

7/4ごろでしょう。

のすのすと森を歩く。

以前と違い、チリチリと鈴の音がついてくる。

「おじちゃんまってー」

とてぽてとたぬきがついてくる。

その後ろをぶらりとみはるがついて来る。

何度か、まこうとしてみたが引き離すことができなかった。まいても迎えに行かなければならない理由がある以上まけないが。



夏場は森の中の方が涼しくて良い。


今日は蒸し暑い。

熱気は森の中では少しマシだ。


「にぎゃー」

たぬきの悲鳴に振り返ると、蔦に絡まれているたぬき。

おもわず半眼になる。

「ん」

ぽいっとみはるがタヌキを蔦から救い出す。


「小屋?」


 ♪


「なーー」

ゆきちゃーん


「なぁーー」

差し入れだぉーー


「誰か住んでる?」


「あれー。手袋ちゃん〜?」



「んなぁあん」



ぱし


しっぽの付け根辺りをみはるが叩いた。


「なにするんですか!」


「んにゃ」

怒る前にゆきちゃんが先に怒った。



みはるが荷物の中からひとつ包みを取り出す。


「んなーー」

それはーー


「たぶん、君にこれをあげたかったみたいだ」



「はぁ?」


「うな」

うん。そう。


それゆきちゃんに差し入れ。

ゆきちゃんが俺を見てきたので返事をする。

ゆきちゃんに食べさせたくて一生懸命指示した。

「なーー」

食べてーー。


「鮭にぎりと海老天にぎり」

しっぶい顔でみはるがいう。

ゆきちゃんが怖がるだろーー

「十種類の具材からなーなー指示されて出来上がった」

んー

何回か引っかいたっけ?


「ありがとう。手袋」

ゆきちゃんが優しく撫でてくれる。

「あら?」

撫でる手が首輪で止まる。

「今は時雨って呼ばれてるのねー」

抱き上げられて視線が近い。

「なー」

まぁねー


「自由な猫だし、好きなように呼べばいいと思う」

みはるはゆきちゃんに包みを押し付けるように渡すと、ふらふらしてるたぬきを捕獲する。

空を見上げてみはるはゆきちゃんがいないかのように振舞う。


「帰るぞたぬき」


俺の方には声をかけない。



しばらくじゃれてたら男が来てゆきちゃんに帰ろうと言った。


俺も帰ろ。


ユキちゃん借りてます



三春大人気なさ全開というかダメな人っぷり過ぎる。


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