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時雨  作者: とにあ
14/31

6/10  変化の使者

雨が止んだ。

空気を感じるに今日はもう降らないだろう。

「時雨さん、おはようございます」

お嬢がにこりと笑いかけてくる。

先日病院に健診とやらに行ってから少し回復気味のようだ。

今日は出かけるつもりはないのか桜色の着物を着ている。

「お庭のお散歩に行きましょうか?」

日が昇って間もない朝の空気はまだそれほど暑くはない。


「おはよう柊子ちゃん」

「おはようございます。北さん。もう出かけられるんですか?」

「ああ。天音ちゃんもいずるんも通学慣れてきたみたいだし、大丈夫だろ。今日はあの山を目指すぜ!」

そう言ってうろな山を指差す。

「前も登ってらっしゃいませんでした?」

「うん。雨の山もなかなかハードでよかった」

さわやかな笑顔で頷くホク。

「危ないですよ?」

心配そうなお嬢。

「危険。それを乗り越えるために俺はあそこを目指すのだ」

「……怪我は、なさらないでくださいね」

「ああ。今日も夕食には帰ってくるさ。んじゃ、いってくる」

そう言ってなぜか俺の頭をぐりぐりしてから飛ぶように出かけていった。




「時雨ー。今日も鈴音、熱でてるんだってー。もう一週間になるのに」

俺をぎゅうぎゅう抱きしめてくるいずるは泣きそうだ。

でもな、苦しいんだよ。





「なーーー」

はなせーー






どんなに未練たらたら心配でもボスによって、いずるを始め、ソウ、あまねの三人は追い出されるのである。

伸びをしつつ、たぬきと縁側で昼寝する。

久々の乾いた空気は心地よくまどろめる。

昼過ぎぐらいに家の中がざわめきだした。


「三春さん、天音さんは大丈夫ですか?」

「意識はないけれど、頭を打つ前に小さな先生が抱きとめてくれたらしくて外傷はないよ。環境変化ストレスってとこだと思う」

「そうですか。お布団敷いてきますね」

あまねが倒れて帰ってきた。



お茶の時間ごろに大きなトラックが庭に入ってきた。

何人かの大きな男たち、前にも来たことのあるボスの下僕たちだ。

それと、


「公志郎さん」

「ひっさー。柊子。少しは熱でにくくなったかー」


あまねに似た男の子だった。



大人組は本当に何やってるのかが見えてこない。

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