出会いと脱出
とりあえず猫の怪我ってどんなもんかわからないので適当です
その日は雨が降っていてどんどん体が冷たくなっていく。
俺はこのまま死ぬんだろう。
「ぶつけてないよね。生きてるかな?」
意識が遠のく。最後に女の声が聞こえていた。
「おー。起きたか手袋」
そこは檻の中だった。
「不満そうだなー。きれいなお姉さんがへまったお前を連れてきてくれたんだぞ」
白い男がそう言いながら突いてくる。
引っかいてやりたいが身体が痛い。
不愉快だ。
「戸津先生。手袋ちゃんの治療費どうなるんですか?」
白い女が男に尋ねる。
「なーーー」
この女は時々煮干をくれる。
ここから出してくれー。
「堂島さんが払うって言ってたなー。手袋が野良なのはわかってるんだけどな」
「昨日の人ですか」
「そそ。最近引っ越してきたらしいよ。元気になるまで手袋の面倒診たいってさー。いいなー手袋、ナイスボデーのお姉さんだったぞー」
「先生セクハラです」
「久島さんはいっぱい動くからスレンダーでいいと思……」
白い男が白い女に殴られた。
「最低です」
ぴんぽーん
「はーい」
白い女がさっきまでの低い声が嘘のような高い声を出して向こうへ消えていった。
怖かった。
「こわかったなぁ。さて、堂島さんかな?」
白い女、久島が戸津に声をかけている。
「先生。堂島さんです」
「きてもらってー」
「猫ちゃん、大丈夫ですか?」
「なーー」
出してーー
「うん。もう大丈夫かな。さっきからどんどん元気になってきてるし」
「連れて帰っていいですか?」
「本当に連れて帰るんですか?」
「はい。ちゃんと元気になるまで面倒みてあげたいんです」
こうして俺はドウジマと呼ばれる女に引き渡された。
脱出・戸津アニマルクリニック。