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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
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パトリオープン決勝戦 2

そう告げて今度こそ武器を取りに行ったと思われるリオを様子見して大丈夫だろうと判断。武器置きからまずは飛び道具をいくつかチョイス。それと懐に短剣を忍ばせた。

一分経過するかどうか位。流石、在学中の格闘スクール教官だけあって気配もなかなかつかめない。どこにいるかわからないという事は上段ステージにいそうだ。だからといってうかつに上へ行くのは危険だと思った。

「行くぞ、メリア」

 鞭を利用して階段の手すりに引っ掛け、その原理を使ったターザンキック。それを避ける瞬間に両手を鞭で絡め取られる。

「くっ……。でも身動きが取れないとでも思いましたか?」


メリアは絡め取られる直前に実は鞭を切れ目を入れていた。そのため、引っかかった演技をしているのである。

「現実的に動きが制限されているじゃないか。それは致命的だぞ?」

「ご高説痛み入ります。でもそれはどうでしょうか」

 動けそうにないメリアの負け惜しみだろうと思ってリオは武器置きから斧を持ってきて彼女の元へ戻って来る。あんなのを頭上に振り下ろされたらと思うと怖ろしい。実際に想像して恐怖に体を震わせたメリア。あっけないかもしれないがとリオが斧を振りかぶる瞬間に行動。彼が振りかぶる瞬間の手首に短剣で刺そうと。それはわかったリオだが回避しきれない。


「なるほど。短剣を隠し持っていてすでに鞭に切れ目を、か。ならば次の行動だ」

 短剣で切られたじくじくした手首の痛みは精神の痛みへと変換し、ズキズキ頭痛の様になっている。そんなのは気にせず次の攻撃策のため距離を取った。今度は飛び道具を選択する

リオ。彼が近づいて来る気配を感じないとメリアも飛び道具(弓矢)を取りに行って持ち歩く事にした。

 リオが何をして来るか警戒してしばらく、柱と柱の隙間からブーメランが飛んできた。この武器はぎりぎりまで引きつけて回避すれば良い。冷や汗を流しながらも回避するタイミングを見極めた。彼の手元に戻るまでの秒単位の時間があれば十分、対あすか戦で見せた弓矢の必殺技を放つ。

「今こそ! 降雨の矢」

 数多く降り注ぐ矢を避けながらステージ端へ。愛用の槍をつかんで頭上で回転させる。遠心力によって矢は弾かれ、地面に落ちた。


「なかなかやるな。それなら俺もこっちを使うか」

長槍を置いて、片手剣を手に取った。相手(教官)にとってはもう一つのメイン武器といっても良い腕前の代物しろもの。剣を折る気で行くなら軽量の斧、絡め取るのを狙うなら鞭、真っ向勝負なら剣同士など方法は幅広い。迷いは禁物、早く選ばないと相手の勝利を上げるだけだ。意表をつくならこれとメリアが手に取った獲物は?

「行くぞメリア。おっと、武器交換が間に合ったようだね。さて、手には持っていないようだが?」

 注意深くリオは距離をつめていく。突然の攻撃による衝撃はバカに出来ないのでメリアの行動意図を読もうとしながらも片手剣でいろんな角度から斬ろうとしていた。

一方のメリアは慎重に機をうかがっていた。先手を打つのは困難、そうした迷いで何かを仕掛けられず。結局はリオの方から斬撃、メリアは銃弾も弾くといわれるライオットシールドでしばらく耐える。


 剣の斬撃余波で少しずつシールドをずらしていくリオ。それが狙いなのだ。大ダメージを与えるつもりの斬りつけをしたが何か硬いものに邪魔された。

「!?」

 メリアの持っていた武器は扇。鉄で作製された鉄扇と呼ばれているものを広げて片手剣を受け止めたようだ。両手に鉄扇を持ったメリアは考えるより先に体が次の行動に移っていた。

踊り子特有のステップの様なものの模倣、リオの攻撃音は自分の舞い延長線上の音楽でしかないという動き。スムーズに攻撃回避、受け流しを続けている。しばらく受け流す事を意識させておいてしかるべきタイミングで鉄扇で受け止め、逆の手で隠し持ったもう一本で腹部を攻撃した。

 防具のおかげでダメージは軽微、だが少しのふらつきでもまずい。


 鉄扇の舞いで何度も叩く攻撃を食らって色々と削られる。

「今回の大会は精神的負荷がかかりまくりだから精神集中が大変だ」

リオは回避しづらい蹴りで追撃をさせない。一度上段ステージにジャンプし、下段ステージ端に戻ってメイン武器『槍』にチェンジ。一方のメリアもリオが武器変更しそうと考えて主要武器を手に取った。


 2人とも決着をつけるつもりで相手の出方を探っていそう。深呼吸して先に動いたのはリオ。メリアがほんの少し気を抜いた瞬間を狙われた。確か前の戦いで見た覚えのある槍技、竜巻を起こす『速点嵐槍』

「ここで引いたら諦めているのと同義、覚悟は決まったわ!」

 死中に活あり。普通なら誰もしない行動、竜巻の中に身を投じた。竜巻と同じ回転の動きをすれば吹き飛ばされないという判断の様だが竜巻の風速を人間が出せるはずないのだが!?

信じ難い速度を出したのは束の間、竜巻に吹き飛ばされるのを利用してリオに速度の乗った突きを見舞う。


「神風二段突き!」

 突きに当たる前、本気の長槍横薙ぎ。それで突きの軌道をそらす事に成功した。その結果、メリアの手からレイピアが離れる。

「武器を失った君には悪いが、この機を無駄にはしないよ」

 長槍の技さえ当てれば勝負がつく。そうはさせたくないメリアが迷いなく格闘のコンビネーションを見せた。


 回し蹴りを三発放ち反撃の芽をつむ、上段ガードを意識させておいての足払い。コンビネーションを読んだリオがジャンプで回避する。それを待ってたとばかりにメリアが自由に動け

ない時を見計らって空中投げという流れを決めた。そんな反撃が来るとは思っていなかったリオは驚く。お返しとばかりに空中から急降下攻撃、垂直落下という技を選択する。それを背後に素早く回り込んで体当たりで邪魔した。


「格闘スクールで教えてきた戦法を何度もシミュレート。反復練習して来た様だね。なかなか勉強熱心だ」

 リオはしばらく攻撃を受けていたはずなのにまだまだ余裕ありな感じ。受け身を取るなどダメージ軽減策を意識するまでもなくやってのけてみたいだった。

「レイピアを拾い直せたは良いけど、ここまでであまりダメージなしは辛いな」

「今度はこっちの番だな!」

 そういったリオが突きな薙ぎ払いなどの基本技を上段下段も組み合わせて十通り以上見せる。どれだけ基本技を鍛錬してきたかわからないが、速度が異常だ。意識を防御のみに集中していないと駄目、反撃をしようとした瞬間に攻撃されてある程度のダメージが襲ってくるだろう。

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