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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
79/88

パトリオープン 準決勝 3

「2人ともクリアしてくれて良かった。試合前に脱落の恐れがあるステージだったしな」

 審判のセグが正直な気持ちを伝える。ファーディとリオもなかなか苦戦させられましたと応じた。

「一応教えておく。申し訳ないがトラップ部屋で受けたダメージはそのままだと承知しておいてくれ」

 セグが開始と叫ぶと、リオ対ファーディの勝負が始まった。両者ともに攻撃するための最善手を見つけようとしているので膠着状態だ。


「リオ君、体は暖まっているみたいだね。体全体が痛そうだが」

「ええ、ファーディさんもすぐにでも全力を出せそうな仕上がりじゃないですか。先手から一気に行きます」

 自らの武器(槍)を構えて必殺技を使用。大剣持ちファーディはいつでも反撃出来るぞという体勢。槍というものは元々遠距離攻撃が主だけど今、放った技は前試合で活用した『追限無槍』

「その技はもう見ているから、これで何をするつもりだい? って感じだけど」

「技は変化をつければ別技みたいに出来ますよ。そのちょっとした油断をつきます」

 ファーディはそういったものの、この追尾してくる槍は速度が上がっていくのでやりづらいと思っていた。しばらく守り中心でいないと厳しい。防具で弾ける部分は無視していいが一流選手のリオの技だと防具破壊すら気にしないといけない。そのため、大剣の技で隙をなくした。


「激速雨」

 激しく速い斬撃、攻撃に使いたい所だが今はガード優先。1~2分耐えた段階で槍技が止まった。

(くっ……、トラップ部屋で痛めた手首が痺れて!?)

 リオが表情を微妙にゆがませて手首をおさえている。ファーディにとってこれはチャンス、大剣の斜め振りを交互に繰り出すクロス技を放つ。今試合のシミュレーションで実装されているプラチナメイルでガードするリオ。攻防逆転。槍では近距離戦闘は難しい。フットワークを駆使して距離を取る。

「そんな簡単に逃さないよ」

 当然ファーディがそうさせまいと追っていた。跳躍して急降下する大剣技などで焦りを誘う。手首のスナップを効かせて回転斬りなどで追いつめようとした。

(ん? 攻撃にどうにか抵抗している間にファーディさんも負傷している感じに気付いたぞ)


 ファーディがトラップ部屋で負傷したかもしれないと気づき、条件は五分かなと思った。それ(勝率)を更に上げようとする。自分の回避能力と負傷の影響で攻撃速度が落ちているのを信じて賭けに出た。ファーディが大振りをする様、誘い出そうとする。

 一振りさせた所で気づきあり。やはりいつものキレがない。二撃目もして来いとファーディの間合いに入った。彼は倒すつもりで斬りかかったが当たらず。

(やっぱりだ! いつもならさっきまでの大攻撃は脅威だけど結構回避出来てるし)

 負傷した感覚もほぼ完全再現されている事に改めて感心、そういう訳でやりたい事も繰り出せそうだと思う。三撃目は特攻。自然とつけいる隙を与える戦法なので相手が強者であればある程、反射的に反撃してしまうという筋書きが読めた。


「リオ君の思い通りにはさせないよ」

 そうやってファーディはこっちにも策があると匂わせたもののリオが体当たり戦法を選択して来たのでやりにくい。長槍を持って突っ込んでいくリオ、大振りで勝負をつけようとしてしまうファーディの動きを引き出した。長槍を引いてコート上に置き、回し蹴りを3発放つ。ファーディが上段防御に意識を向けざるを得ない段階で足払いに移行。それに見事やられ、転ばされた。


(本気で勝負を取りに行こう。その方が痛みの我慢は短くてすむ)

 リオが槍を持ち直してファーディに槍を向けると意図がわかったらしい。攻撃を当てたものが勝つという状況を作り出す。

「決着の付け方を決めた様だね。応じようじゃないか」

 不言実行のリオと声に出す有言実行派のファーディ。どちらかが間違いなく実行成功になるだろう。引き分けはまずないと考えて良さそうか。槍で鋭く突きを放つ。だんだん槍の突き速度を上げてファーディの大剣防御を崩そうとした。

「今! 俺の力を示す。この必殺技を回避出来るもんならという所ですよ。永塵宝」

 とんでもない速度の槍突き。プラチナアーマーに「脱」という文字を書く勢いで消した。防具を消した所で今度は体に「無」と打ち込んで突きを止める。



※注ーシミュレーションの武器防具も破壊が可能だという事です。破壊のエフェクトはないので消失ですが


「背中の傷さえなければ反撃したんだが……。体力消耗が原因かな」

 リオの必殺技を大剣の必殺技で返す。方法としてはあった。だが槍と大剣ではいかんせんスピードの差がありすぎた。ファーディはまともにリオの技を受けてしまったのである。

「ファーディが試合続行不可能の状態と判断。リオを勝者とする」

 シミュレーションとはいえ、精神に受けた負荷のダメージで気を失ったファーディを運ぶ救護隊員達。リオは勝者として観客みんなの歓声を浴びるだけ浴びてから会場を後にした。





リオも先程の戦闘ダメージの確認と回復のため救護室のドアを叩く。


「失礼します」

「リオさん、お疲れ様。来ると思ってメディカルチェックの準備は整っているよ。先程来たファーディさんも寝ていれば治る感じ。あなた方は常人とは体の作りが違うと実感させられ

ますよ」

 昔からの格闘大会専属ドクターの様でリオとも結構な面識がある様子。常人離れ~~の話は苦笑い的な表情をする他なかった。

「うん、異常らしい異常はなし。疲労はしっかり取っておこう、明日に備えて」

 専属ドクターにお礼を言って帰り支度をするリオ。その時、ベッドにいた人物が体を起こす。

「よう、リオ。今回は一本取られたな」

 目を覚ましたファーディがリオに話しかけて来た。格闘のプロでもこの疲労度では数日目を覚まさないと思っていたドクターは声も出ない。

「ファーディさん。今回は勝てましたが次の勝利が遠のいてしまう気がしますよ」

「そりゃ負けたのが悔しいから、君に勝つための訓練を嫌になる程に続けるつもりさ。お互い頂点を目指そ……う」

 彼は宣言するだけして、力尽きたかのようにまたベッドで眠り始める。リオは決勝の相手がどっちになるかと選手専用控え室には戻らず救護室のモニターで見守る事にした。

「そろそろ今日の2試合目ですね。さて、どっちが決勝の挑戦権を得るかな」

「リオ君はここで見守るのが正しいよ。しかしさっきはびっくりしたなぁ」

 技名についてはスルーの方向で(ネーミングの自信がない)

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