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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
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パトリオープンベスト8終了後救護室~メリアの家で往診

「リーダーの思いはわからないですけど私達はメリアに謝罪したくて」

「ふーん。それで気が済むなら勝手にすりゃいい。私もメリアの近くにいるから聞いている事になるけどね」

 それを承知した2人の少女両方がメリアが休んでいるベッドのそばに立つ。

「言いたい事があるの、聞いてもらえる?」

 メリアはこの2人ってコルトの取り巻きだったグレプとパラーグじゃと気付いて何を言って来る気かと反射的に警戒心が出て来た。

「あっ……。あの時のイジメっぽい事のせいだよね。私、家の問題であなたの境遇と似た経験をする羽目になってわかったの」

 端的に教えればグレプの家が没落してしまったという話。それでもパラーグは金の切れ目が縁の切れ目なんて考えずに支えてくれるというありがたさを得た。だから感謝の気持ちを再確認したという事実を口にする。


「支えすら与えなかった私達はどれだけひどい事をして来たか。私にはグレプがいるけどあなたは一人苦しんできたんだものね。こんな事しても私の自己満足かもしれない、だけど本当にごめんなさい」

メリアが何かを答える前にパラーグがグレプを支える発言をした。

「私の家も親が企画失敗で大損害だってここ数日ドタバタしていたから。明日は我が身と思ったし。私もお詫びする」

 変装して格闘大会に出場していた眼帯少女ルーコ=コルトは取り巻きの2人がそんな状況だったんなんて予想だにしていなかった。それに関しては両親に根回ししてもらうよう頼もう

と思う。

(やられた事に対してはムカついた、だけどそれは過去の話。許したっていいかな)

 メリアはグレプ達の謝罪を受け入れ、今までの行いは水に流すと宣言。彼女らが現在進行形で学園の金持ち連中からいびりを受けている以上、貧民の思いを理解しただろうからだ。

メリアは気付いてないグレプ達の隠された思い、格闘大会上位者になった方にそんな行いをするなんてとんでもないと心理ストップがかかるというのもあった。


「うん、わかった。学園で普通に話す程度の間柄にならなってもらえるかな」

 いじめっ子いじめられっ子の関係だったので心の距離の修繕は困難だ。それでも表面上ならば話し相手になる事は可能なのだろう。

「落とし所としてはそこら辺だわな。まっ、あんたの実力は周知の事実になっただろうし関わりたいと思うクラス女子も多いと思うわ。あたしらは必要に応じてあんたと話す程度でちょ

うどいいだろうね」

 そんな話をしつつも、今は休戦中で怪我しているやつを無視する方が目覚め悪いしとルーコ姿になった彼女コルトがメリアを家まで連れて行ってやると肩を貸した。


「話は済んだかな? では、メリアさんをここへ」

 帰る前に教護室の医師が脱臼状態を確認。触診して腫れや熱はなし、圧迫や固定をしておく(肩だったので痛がらない状態で三角巾で首から吊し、片方の手でサポートするように手をそえる)これ以上やれる事はないと整形外科の受診をすすめられた。

「はい、明日の午前中にでも行ってみます。ありがとうございました」


「中立通りまでは一緒しよう。そなたと結びつきの強い共に暮らす者に会う気はないがな。そこからは迎えでも呼ぶと良い」

 まずグレプとパラーグはパラーグ家に恩義ある従者が運転する馬車で去っていった。ルーコは観光客にサービスしてもいいから集合馬車にでも乗ろうかと考える。そこに一台の馬車が止まった。馬車の主によるとちょうど客を降ろしたばかり、君らを貸し切りで乗せれば良い宣伝効果が見込めるという事。

「どこか行く所があるんじゃないの?」

「中立通りの宿屋前で次の客を呼びこむつもりだったんだ。そっち側だろ??」

  運転手の問いかけ通り、この国の7割人口は中立通り近辺の家に住んでいる。ルーコもメリアも暮らしている家はそこにはないが、帰宅手段が増える。なので申し出をありがたく受けた。


「こちらには休みを要する者がいる、人助けに感謝」

「そんな大層なものじゃないって。理由はさっきも言ったろ?」

 闘技場前から中立通りへ。そんな急ぐでもなく安全運転で。特に何かが起きたりセずに中立通りに到着する。

「着いたぜ、俺も手を貸そうか?」

「我の力を見くびるな。すまない、その気持ちだけはちょうだいする」

 宿屋前で馬車から降車する2人。この宿屋そばには休憩スペースが有り、軽食販売をしている者もいた。


「食べ物飲み物どっちもあるよ。良かったら買っていって」

 売り子からジュース等を買っている人達を含め、そこにいる結構な人数が、メリア達が馬車を利用して帰宅中の姿を目撃。この場にいる数名は観光客なので馬車に注目した。それが馬車主の狙いなので成功したといえる。

「送り届け、本日も不満なし。では、また会う日があるかもしれないな」

 馬車主に手間賃を含めてお金を渡し、なにげなく営業の手助けもする。メリアの方に向き直って別れのあいさつをすませた。

「そこの道を入れば我が住み家へ続く、ここから一人で帰れるな。では」

 メリアは貴族街に去っていくルーコを見送った。肩の痛みを我慢して公衆電話で母親を呼ぶ。


「急にごめんね、少し怪我しちゃってさ。宿屋前まで来てもらう事は出来る?」

「そいつは大変だ。そこで待ってな、今から行くからさ」

 呼び出し後に結構早く母親到着。貧民街の方から中立通りの宿屋までは数分の距離だったりするのだ。「待たせたね」そう言って迎えに来たメリア母は娘の予想以上の負傷にビックリ

する。

「その怪我、見た事あるね。脱臼か。父さんにお医者さんを紹介してもらいな」

 肉体労働作業員の父親は危険回避をもちろん心がけてはいる。それでも時には労働災害が起こってしまうものだ。肉体を酷使しているので疲労などから肉離れ他をする事もある。そういった関係で整形外科医とかに詳しかったりした。


「おうっ、お帰り! メリア!! お前怪我してるじゃねえか」

「そうなんだよ。あんた、名医を紹介してやんな」

 玄関で出迎えの父親に見たままを言われるメリア。察してくれたので説明しなくてすんだなと思う。

「食事はどうするかね、痛めてない方の肩ならパンとかバナナ辺りを食べられそうだけど」

「痛みはあると思う。だけど好意に甘えてパン食にしてもらおうかな」

 本日はバターロールと野菜ジュース、それとチーズを食べる。腹八分目位だが肩の痛みもあるのでこれで充分かなと思った。


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