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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
75/88

パトリオープンベスト8 第4試合 2

 あすかは相手メリアがどんな最後の抵抗をしようと対処を頭に叩き込んでいるその道のエキスパートなのだ。不測の事態にも冷静に対応する。

(面倒な事になった。今のこの娘の状態なら無意識に勝利を追い求めるだろう。それだけが原動力だろうから)


 あすかはレーザー銃に集中しきれない。メリアが乱れ射ちをしてきているせいで上手く照準を合わせられないようだった。その程度はレーザーで焼き切ればと思うかもしれない。だが、その乱れ射ちの矢が結構近くに来るので最悪レーザー銃の射出口へ入り込んで故障の恐れもある。それよりも何よりもメリアが闘争本能の塊『闘気』で仕掛けて来そうなのが油断ならないと感じていた。

 メリアがあすかの警戒した通り、闘気をまとった矢を発射。二重螺旋の軌道を描きながら飛ぶ一対のエネルギーの矢が複数もという大技。だがそれは微妙にそれた。実はメリアの弓矢を持つ手にレーザーを当てて動きをずらした結果である。


「当たれば相当の熟練者でも危機に持ち込めそうな潜在力を持っている。この娘、まだ戦おうとしているけど終わりにする」

 メリアの闘争本能だけのまま放った必殺技をそらした隙に至近距離に来たあすかが彼女の両手関節を外した。

「これで何も出来ない、それじゃあねかわいい戦士ファイターさん」

 胸に狙いをつけるあすか。レーザーを当てて眠らせてあげようという所で彼女の携帯している小型緊急無線が入った。

<あーあー、聞こえるか? イタリアマフィア本拠地が別働隊によって壊滅。マフィアも捕獲。任務終了だ>

 渋い声で本部の隊長から連絡、無線に応じるあすか。

<ただいま任務中だが、この闘技場に潜伏している奴らはいないの? どうぞ>

<あすかか。どうやらいないらしい、トルコ部隊に合流して制圧助力を>

<新任務了解。そちらへ移動する>

 メリアへのトドメをやめ、いつの間にやら会場の外に出たあすかに観客だけでなく審判のセグも呆気に取られた。でも切り替え早くセグがメリアを起こして勝利宣言する。


「私が活を入れても気付けになると思うが、確実な安全性を重視して気付け薬で起こすか」

 セグが応急措置として指交差法(親指を上歯に、人差し指を下歯にあてて指をひねるようにして口を開かせる方法)で気付け薬を飲ませる。その後で場外へ姿を消したあすかを目で追い、メリアに話しかけた。

「意識がはっきりしていそうだね? 対戦相手が場外、どこかへ行ってしまったため勝者はメリア(きみ)だよ」

 セグが外された手首関節をはめる。まったくもって勝利を実感出来ないメリアだが、立ち上がって観客の声援に応えないと審判に心配されそうだと観客達に手を振る。


「ベスト8の第4試合が終わった、本日も観客の皆さんに満足頂いたかなという印象だ。特殊ゴーグルの使用不使用の皆様方による判断の正しさも実証出来た、ありがとう」

 血が出ているさまや、骨が折れる音といったリアリティあふれる映像が視認出来てしまう特殊ゴーグルは本日そういうのに耐えられる人達のみが使用したという事らしい。

特殊ゴーグルの『セーフティー機能』もしっかり働いたのだろうと想像可能。準決勝や決勝は一見さんも来るだろうし、今一度特殊ゴーグルの危険性を再度確認しようとフラナに合図を送った。


こうしてベスト8は終了。準決勝は明日の午後より開催すると放送でお知らせ、観客達に帰ってもらう。

「本日の戦闘人の宴は終わったようだ。我が友の元へいざゆかん」

 メリアがまだコート内から戻って来ないので中二病なルーコ《コルト》が肩を貸しに行った。

「損傷した人体チェックのため、救護室に手当に行く事を推奨する。助力するぞ」

 戦う力の8割から9割使ったメリアはどうにか自力で歩くのがやっとの様である。準決勝の事を考えると、体などの検査をした方が安心かなと思う。

「救護室到着、ん? ここに一般人など入れないはずなんだけど」


 関係者しか入れない場所に2人の女性、眼帯少女ルーコには見覚えがあった。

(あの灰色三つ編みと黒髪パーマってこいつら何でいんのよ)

 ちょうど入口付近にいるので通行妨害状態になっていると話しかける。

「道に迷いし麗人達、この地はいてはいけない扉の前。帰宅提案」

「ごめんなさい、この子が足を捻挫したっぽくて。応急テントが数名待ちだったので紹介されました。許可証も貸して頂いてます」

(ひゃあああ。選手に会えちゃったぁ~、しかも2人)

 関係者用の許可証を持っているのならこれ以上言う必要はない。何にしてもドアの前にいないで中に入ろうと誘った。

「いつもと大会形式を変えたせいか、観客用の応急テントも手一杯なのだな。救護室にも選手が結構来る。運営側がしっかり医療スタッフを増員してくれている点は助かるが」

「はい、それでは負傷チェックを希望」


 教護室の医師免許を所持しているお医者さんに手短かに返事をしてメリアを任せる。

「どれ、こんな感じか。時間がかかりそうだから先にそっちの患者さんを見ようか」

 そう告げ、メリアに医療用ベッドで休む事を推奨。捻挫したという少女を先行して診断した。

「足首を内側や外側にちょっとひねってみるよ、該当箇所がそこだったら痛いと思う。我慢しない様に声を出して」

「痛っ、痛っ、痛いです」

 少女の痛そうにしている様子から診断結果を伝える。

「声が出ない程の激痛って訳でもなさそうだね。そんなだったら即病院行きだけどさ。これなら冷湿布してテーピング固定後安静にしていれば1週間もあれば完治するだろう」

 捻挫をした事がある人ならばわかるだろうが痛みが残っているのは我慢するしかない。日常生活で不便な思いをすると覚悟した灰色三つ編みと黒髪パーマ少女が救護ドクターに一礼

した。

「うん、お大事にね」

 救護室から出る前に灰色三つ編みと黒髪パーマ少女が安静中のメリアに声をかける。

「あの……」


 まだメリアの看病中なコルトが彼女らの言動を聞いていた。にらみを聞かせて一旦彼女達を自分の元へ呼ぶ。

「ちょっといいかしら」

 口調が標準的なものに戻ったコルトに彼女らは困惑。更に距離をつめた眼帯少女が眼帯を外すと正体に驚く。

「コルトさ……!」

 敗者になった今、誰に正体がバレた所で問題はないはず。だけどコルトなりにキャラ変えをあまり知られたくない気持ちが強いのだろう。

「黙れ、あんたら」

 この格闘大会で改めてリーダー格だったコルトとメリアの強さに2人の少女はひれ伏すしかない位、そんな関係なのでメリアに何を話すつもりだったのか伝えた。



 注意事項(後書きにでも)

関節の外す・はめるといった描写を書きましたが、調べたところ脱臼癖のある人がいる事。無理やり関節を外した場合は亜脱臼という状態なのであまり良くはない事。

無理矢理脱臼しようとすると激痛が走るのでやらない方が良いという話。



この小説のキャラ達は特殊な訓練で痛みに耐える精神力などがある、またはそういう知識に精通していると考えて下さい(近未来の世界観なので、現代知識では解明していない知識があるかもと思ってもらえたら)



特殊ゴーグルの説明は『決勝T1回戦~続けて決勝T1回戦 第2試合目開始』を参考にして下さい。



コラボ協力どうもありがとうございます。


あすかさん


http://ncode.syosetu.com/n0872bi/ レーザー銃を持つ少女




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