パトリオープンベスト8 第4試合 1
とうとう準々決勝《ベスト8》の第4試合である。この試合が終わったら明日の準決勝まで選手達はおやすみだ。
まずはメリアとルーコの会話から見ていこう。
「そびえ立つ不可侵の壁の様な相手、メリアは心躍っているか?」
ルーコの個性的なしゃべり方の意味がなんとなくわかるメリアは強さに違いがあると感じる対戦相手。どれだけ試合を成立させられるかと緊張で会話を震わせてた。
「私だってスクールで修行を積んできたんだからそれなりの自負はある。でもあすかさんの強さに次元の違いを感じるのはどうしようもない」
そんなメリアの考えをポジティブな方へ持っていこうとルーコが声をかける。
「相手にとっての迷惑、ルーコにとっての幸運が訪れるかもしれない会場に」
彼女の応援にメリアは考えを改める。相手が強いなら戦い方などを学べば良い。とにかく出来る事をやりたい、勝敗に納得出来る戦いを自力でこの手にと思った。
◇
あすかは試合より優先したいものがある。だけど試合などを手抜きする訳がない。コートに続く選手専用入場口よりAコート内に登場する。少し遅れてメリアも反対側の選手入場口より姿を見せた。
「私も目的と無関係の少女、早く終わらせてもらう。マフィアが何かしようとする前に止めるため」
メリアとの勝負を準備しつつも妖しい存在がいないかざっと見渡す。どうやらいる様子はない。
フラナが時間いっぱいだと気づく。ちょうどいい、あすかとメリアの2人とも開始合図を待っているだろうから。なのでフラナがシミュレーション装置を起動する。
ステージ変更
場所 岩場(特殊なもの有り) 変更箇所 Aコート全体
試合が始まった。特に条件がなさそうなので武器を弓矢に変更する。彼女の一番使い込んでいる装備は細身剣なのだがレーザー銃との相性を考えての事だ。スピードには自信がある方、だけど相手の実力を総合判断すると走りなどで勝ちきる自信はないので。
彼女はまず岩場に隠れて弓矢を射るチャンスをうかがおうとした。そこに光が見えたと思ったらレーザー砲がメリアの近くにある岩を何個か削る。
(危なかったよ~。でもこれってもしかしたら)
メリアの感じたレーザー射程。それが正しいかどうか確かめるため距離を取ってみる事にした。すると、あすかも近づこうとして来たので予想通りだと思う。
弓矢の方がレーザー銃より遠距離攻撃が可能
しかし、射った矢の数本すべてをアクロバティックな動きで回避され
気づけば範囲に入られそうになっていた
それだけの危機的状況である。メリアはいつの間にやら結構遠くまで移動していた。これは彼女の防衛本能が起こした事なのか。改めて岩場の中でも密集地に身を潜め、攻撃方法を構築。
「驚き……。相当な走りの速度だった。そんな子だからこそ戦いを長引かせるのは不憫、終わらせる」
さっきより速くメリアを見つけてダッシュ、みるみる距離が縮まっていく。その間にメリアが何をしているかというと弓矢を頭上に放ち続けているみたいだ。一体どんな意味があるのか? あすかの姿が視認出来るくらいまで近づいて来ているのに空へ向かって矢を射ち続けていた。間もなく射程範囲に到達してしまう。その時、矢がかなりの数あすかへと降り注ぐ。
「私は簡単には必殺技の技名を思い浮かばない。だから今はストレートな仮のネーミングをつけよう。降雨の矢」
メリアのストレートな技の特徴通り、矢が大量に雨のごとく降ってきた。これでは回避不能、あすかがした行動は? レーザー銃のビームで溶かし、弾きなどで安全地帯を作り出す事。それだけの弓矢を射ち続けたメリアはどうやら腕や指を痛めているのではないだろうか。この大会では何度も説明する通り、身体ダメージが精神ダメージに変換される。その痛みは精神的なものから来る頭痛として表れている様だ。
「手指から血が滲んでいる様なのはわからないけど、無理するとこれ以上心身を酷使した結果として気を失ってしまいそう」
幻の痛み(ファントムペイン)を我慢、気にしてなんかいられない。それはあすかがレーザー銃で一撃必中を狙っているから。彼女は出来る事全部やりたい、だけど行動に移せるかは不明だ。迷いが生じてしまったメリアは隙を見せてしまった事になる。岩密集地のの岩場を半分以上レーザーで破壊された。彼女はレーザーが当たらないであろう方へ動いていた
ので無事。破壊された岩の破片を良く見る事で活路が開ける可能性も考えていた。
「しばらく頑張っていたみたいだけどもうお休みするといい。この一弾で眠れる」
あすかは相手(メリア)はあきらめたのだろうと思う。その理由はもう障害物にも適さない岩影に隠れているのがわかったので。そのため、射出口にエネルギーを収束凝縮して当ててあげようとしていた。
「楽に気絶させてあげる、発射」
必要最低限の言葉でトドメを宣言なはずだったのに審判から戦闘終了合図がない。そこへレーザー砲が反射してきたのでかわしきれずにちょっとしたダメージを負う。
「!? 何故」
視線を岩場に移したあすかは理解する。岩の一つが鏡の様な反射を行った所を。
「原理不明だが、そこの岩だけが鏡みたいになっているようだ」
一時的な事だろうが、あるかは次なる手を考え直そうとしている様だった。
(これは少しでも時間を作れたって事でいいんだよね? 今は他の事に気を取られちゃいけない、集中)
メリアがどんな事よりも優先して、反撃その一点のみに意識を向ける。とにかく思い浮かぶ限りの事をすれば後悔は残らないはずだと思う。
レーザー銃を撃たれては対応が難しい。ここは無駄に出来ないという訳で数本の矢を発射した。あすかにとってそれは予測可能な事ではある。回避も容易な様だった。
「こっちが方法を模索している間に矢をつがえて来たか。急所を全て狙って来ていたので危ない所だった」
メリアのはなった矢は脳天や瞳、首に胸または腰、それと足の付根といった当たればどこだろうと危機的状況になっただろう場所ばかり。だがそれを無傷でかわし切った今、メリアの効果的な手はなくなったと考えられる。
あすかは相手の意地を警戒しつつ試合を終わらせるために近づき出した。メリアはあすかの一歩一歩が敗北を運んで来ているかの恐怖心から徐々に何も考えられなくなっていく。それに耐え切れなくなったのか一時的に気を失ったみたいだ。
あすかは良く頑張ったとばかりに試合を終わらせてあげようと最小エネルギーのレーザー弾をロックオン。だが、その直前に彼女は動いた。
(この娘、まだ何かを?)
コラボ協力どうもありがとうございます。
あすかさん
http://ncode.syosetu.com/n0872bi/ レーザー銃を持つ少女
1ヶ月2回更新出来そう。来月15日予定にしておきましょう。




