パトリオープンベスト8 第3試合 3
彼は改めて対戦相手《睦月》を観察する。どうやらさっきの火球といい、現段階では意図して攻撃を繰り出している感じはしない。広範囲威力大を人がいそうな影や物音がした場所
からといった感じだ。これなら魔力ゼロになって無力化するのを待つのも一案だろう。だが、大気中のマナをもらってとかの類だとするとこのままジリ貧となり、どうやっても敗北が目に見える。
ユウトは移動しつつも考えていた。勝ちまで後一歩の時で今の状況になった、でもそれは裏を返せば接近戦に持ち込めれば勝ったも同然ではないかと。そして思いつき開始。トンファーを遠投して建物にぶつける。それに反応した睦月が『火の弓矢』をそこへ射って来た。
トンファーを一度指輪に戻し、爆風に気をつけつつ召喚し直す。魔法の無駄うちを誘うため、いろんな所へ建物の破片や木の枝などを投げた。あちこちに火の弓矢または火球が放たれ、ステージの大部分が火の海に包まれている。
「さてと、僕が考えなしに……というか無意識に強大な火の魔法を使っていると思わせないとね」
自分の魔法の威力に2回または3回大火炎魔法を使用後に自らの力を制御出来るようになっていたのだ。駆け引きはどちらが勝つだろうか。
「動ける範囲が限られて来たな。一番良いと浮かんだ発想は耐火、耐炎にかける事。でも、どうやら相手はここぞを狙っていそうだな」
ユウトは良く睦月の行動や表情を見ていたので少し――本当にほんの少し目に光が戻っているのを見逃さず冷静になっていると気づいた。誘いに乗ってあるかないかわからないチャン
スにかけようと決断。
弱気に見せかけるため、ビクビクした姿を必要以上にさらしながらまだ焼け残っている建物に向かう。
ー睦月の視点ー
ステージ上の建物や燃える植物などはあらかた燃やした感じになる。言い方が良いといえないだろうが、ユウトを燻し出した形だろう。何を考えて焼け残りの家に入ったか不明だが建物ごと燃やしてしまえばこの戦いを終わらせられるはず。
◇
炎のエネルギーを集約しやすい弓矢を射つ事で力を無駄にしない。木造の家だったので『木』は結構火に強い事実があったとしても大黒柱が炭化し、燃え尽きていく。家が燃えている
のだから中に入っていった人物が外に避難して来ないのは変だ。睦月は彼が逃げ遅れた訳ではないだろうという予感があった。
予想通り、建物の近くに防火扉が付いている物置(?)を発見する。シミュレーションの幻の火による精神摩耗を防止するならここに潜んでいそうだが?
(さすがセラミック製。そう簡単に火の熱量に負けたりしない)
ユウトはこれからが最大の山場だと腹をくくっていた。対する睦月も相手の顔を見た瞬間が勝ちを類い寄せる一番のチャンスだと。
一応睦月は防火扉がついた建物を一箇所に集中し、高火力で燃やそうとしてみた。しかし、建物には焦げしか見られない。
「建物の材質まではわからないけど難燃板の様なものが使われている気がする。相手の出方を待った方が得策かな」
見応えのある攻防。睦月も防火扉の向こう側にいるユウトも観客の応援熱量を感じ取っていた。
ユウトが防火扉の内側から鍵を開けて少ない勝機にかけるかそれとも睦月がどうにか建物へ潜入するかわからない。彼らは注目の的だ。
ユウトの特攻、あるいは睦月の返り討ち。すぐ動くのが正解かはたまた幾ら観客に試合がつまらないと思われようと油断するまで持久戦に持ち込む。2人はどうするか?
「決めたぞ! ここは迷う事なくつっこんでやる。迷った時点で負けな今こそ打って出る時だ」
防火扉の先にいるユウトの覚悟。わざと防火扉の鍵を乱暴に開けて音を立てる。反射的に睦月が火球を放つが防火扉の影に隠れて魔法を四散させた。それで生じた隙を見逃したくない。
その気持ちが空回りしたのか走って倒そうとしていたのに転んでしまった動揺が強そうである。起き上がって先手を取る確率は約半分に減少と即座に判断。それでも直進をやめないと覚悟のまま向かう。
睦月をトンファーで叩こうとしたら、かなり熱くて火傷しそうと瞬時に手を引っ込めた。良く見てみると睦月の周りに薄い炎の膜みたいなものが体を包んでいて。
「しまった! これは間に合わなかったんだな。次に賭けるために避難」
睦月の体内から放出しているかのごとく、炎エネルギーが蓄積されていく。まだ逃げるにはどうにかなりそう。全速力で防火扉を盾代わりにした所で大轟音が聞こえた。
「ふ~~っ、ギリギリ。あれを受けていたら気絶を免れなそうになかった」
休んで落ち着いてきたユウトが避難扉の上部を触ると結構な火傷をしたかの様な感覚に襲われる。扉を見るとその部分が溶け出していた。
睦月の火魔法は2千度超だったという事か!? ユウトの精神力はもうレッドゾーンかもしれない。その絶体絶命状態が火事場の馬鹿力を目覚めさせたのか避難扉を無理矢理壊して睦月に投げつけるという行動に出る。
「!!!!!!??????」
ユウトのやった事に意表をつかれた睦月。火の力全てをセラミック製の扉に当てて吹き飛ばす。注意がそれたのを見過ごさなかったユウトが無意識の内に近接し、トンファーを振りおろした。
「んっ、ここは? 良くわからないけど今の行動を止める必要はないか。勝てそうだし」
トンファーを振りおろしている内に我に返ったユウトだが、勝ちが取れるのだからそのまま睦月の頭部を殴打。睦月を倒す際、まだ主を守っている姿はカーボンプロテクターの残り1回に防御されて役目を果たせず。
彼はその衝撃を目を回していた。どこを攻撃しようと精神的ダメージに変換されて倒せていただろう。しかし、ユウトは意識の奥底で確実を求めていたと思われる。審判のセグが睦月の状態を目視してユウトの勝利宣言をした。
「対戦相手戦闘不能により、勝者は黒石ユウト殿である」
両者だいぶ消耗しての勝敗決着。観客達は満足だろう。ユウトも相応のダメージを受けているはずと救護室で体力などを確認するようすすめられたので一応言われた通りにする。
コラボ スペシャルサンクス!!
星原ルナさん
http://ncode.syosetu.com/n1583w/ 弥生と夢石
http://ncode.syosetu.com/n6409w/ 弥生ともう一つの世界<こちらの方がコラボでお借りしているキャラクター登場回数多い>
夕凪(来進)さん
http://ncode.syosetu.com/n3410bl/ If start story (イフ・スタート・ストーリー) ~ボッチな問題児は異世界で大暴れするようですよ?~
http://ncode.syosetu.com/n9647dm/ イフストを修正(改稿)掲載している作品




