パトリオープンベスト8 第3試合 2
ステージ変更
場所 ゴーストタウン(シャッター街) 変更箇所 Cコート全体
「どう考えてもコートの大きさと町の規模が比例してないと思うのではないだろうか? 正確には町の一区画といった所だ。場外じゃつまらないし、ここから先は場外という赤ラインを視覚化しておくか」
どうも今回のシミュレーションで具現化したゴーストタウンは街頭が割れていたりカラスが鳴いていたり古い建物などが並んでいるという不気味な街なものとは違うらしい。シミュレーション内の街の状態は昨今の社会現象になっているシャッター街。店主が高齢だとかテナントが入らなかったのが原因で出来てしまった過疎地帯だ。
「さて、戦い方をどうしようかな。彼には悪いが早々にある程度の火傷を負わせて退場願うとしよう」
これから試合を動かしたい両者が最初は相手の出方をうかがうだろうと予想していた司会者が2人に質問する。
「おっとすまない。火の使い手な能力者と無能力者の場合は君達の合意の上で装備品をプラスする権利があるがどうする?」
(この提案はどう捉えようか。使われ方によっては僕の方が結構不利になりそうだぞ。仮に彼が雷でも使えるとする。でもそれを今までの対戦で隠し通せるだろうか。戦闘センスのある一般人だとしたら多分炎の技を防ぎきれない、簡単に勝てる。それだと後味が悪いし。よしっ、彼には特殊なアイテムはあっても能力はないと結論づけよう)
短時間で睦月は色々と考えぬいて彼なりの結論を出す。睦月は相手より優れている部分があるならハンデを受け入れると、不公平を訴えなかった。ユウトが本当に無能力者かどうかの真偽はさておき、火に対する耐久力が異常な『カーボンプロテクター』装備が認められる様に(カーボンプロテクターもシミュレーションで作製、3回火を受けると自動消去)
「これは有利になりすぎかな?」
ユウトも実力でどうにかこうにか勝利への道を探すつもり。だったが、提案された装備は結局受け取って装着している。意地やプライド等とせめぎあったが最終的には使えるものは何でも使え精神が勝ったのだ。
彼らがまた様子見に戻る。先に動いたのは睦月。円運動でユウトを撹乱しようと。睦月の動きに意味が無いとは思えないユウトは目的に気づいた。前の試合で創っていた魔法陣の様なものって事はそれで巨大な火を出そうとしていたのだろうと踏んで陣の一部を足でこすって消去。
「確かにそこへ精神集中した火を召喚するつもりでいたよ。だけどそれは観客向けの演出の様なものと考えてくれればいいさ。実際はこう!」
指先から火を灯して浮かび上がる火の玉を作る。右手指に顕現、その上で発現した火の玉5発を間髪入れずにユウトの方へ投げた。ユウトの考えが回避にシフト。その結果、火の玉で攻撃してきたつもりじゃなかったのかと気づく。当てている場所が地面とかシャッター等なので燃えるかどうか試しているのだろうと予測した。
「今度はこっちから攻に移らないと。守るだけじゃ勝てない」
この試合でユウトはオーソドックスな剣ではなく、指輪から呼び出すトンファーを選択していた。それが功を奏したのか睦月の攻撃の手が止まって次なる行動をどうすべきか迷っている感じになる。ユウトが腰を落として肩を開いた状態で構えているだけで睦月は少し困っていた。それは何をすれば正解なのかわからないのが理由だろう。でもこれだけはされる訳にはいかないというものを睦月は知っていた。戦いに慣れていないので近接戦闘で一撃でも手痛い一撃を受ければ終わる。させる訳にはいかないと地面に魔力を集中して炎の壁を創り出した。
「どうすれば良い? よしっ、実際にカーボンプロテクターを信用してみよう。肉体に少しもダメージはなくとも精神に相当な辛さが来る。それを理解した上で覚悟を決めた」
睦月に先読みされた事で、ユウトは最善の行動がどれかと模索し直していた。ユウトの目前で炎が燃えさかっている。この中に入り込めれば相手はすぐそこ、だけど人間の本能的性が火を恐れていた。それはユウトも頭では理解していた。決断したユウトの思いきりの良い全速力に観客達の大半が声を失ったり顔を背けたりする。
炎の壁から抜け出たユウトは炎の熱で揺らめいた視界にそこまで時間をかけずに慣れて来る。ユウトが受けた火傷の精神的ダメージ変化効果は脳にじわじわと侵食されていく様な感覚。でも、どうやら精神的にどんどん後ろ向き《ネガティブ》になっていくのが一番の効果の様なので大した事はないと思う。
自分で主役になれる様な器じゃないと知っている。それなのに強敵とばかり戦って来た。自分の限界を知っている、己を強者だなんて考えていないユウトにはネガティブ思考をどう消化するのかわかっているのだろう。トンファーでの頭上打撃だけでも魔法系の使い手には相当な負担になり得る。ユウトが当てる前に睦月は近くに落ちていた大きめの樹の枝で何とか受け止めた(しかし太い枝は折れたが)
それは睦月の悪あがきでしかない。今度こそ全力で叩いて気絶を狙う。後は実行するだけだとユウトの攻撃。彼の攻撃が当たりそうな時、睦月の火魔法が使用者を守るかのごとく発現した。
「元の世界に戻った時、弥生にどこへ行っていたのか聞かれる可能性がある。その話で異界の同年代少年に情けない負け方をしたなんて言うのは嫌だ。話は脚色したくない、弥生に嘘を
つきたくないしね」
その思いが睦月の力の変化に現れたのではないだろうか。火が弓矢の形になったものを放つ。意表をつかれたユウトはカーボンプロテクターの貴重な耐炎効果を削られた。
(相手のいろんなパターンが変わった! 一度距離を取り直して対策を練る事にしよう)
ユウトは建物の一角に隠れてみる。その結果、睦月の特大火球を目の当たりにする羽目になった。すぐその建物から離れてさっきいた場所を見てみると建物の大半が焼失していて。
もしその場に残っていたらと思うとゾッとする。
コラボ スペシャルサンクス!!
星原ルナさん
http://ncode.syosetu.com/n1583w/ 弥生と夢石
http://ncode.syosetu.com/n6409w/ 弥生ともう一つの世界<こちらの方がコラボでお借りしているキャラクター登場回数多い>
夕凪(来進)さん
http://ncode.syosetu.com/n3410bl/ If start story (イフ・スタート・ストーリー) ~ボッチな問題児は異世界で大暴れするようですよ?~




