パトリオープンベスト8 一試合目終了後 敗戦を認めたくない 3~~ベスト8 第2試合 1
「フリッツにもしもの事があったら私は……私は……」
名前を出されたフリッツは続きの言葉が何かと気になる。だが酔っているせいか(?)話が飛んだ。
「前例なんて作ればいいだけなのに形式ばった謝罪とアイテムで話が打ち切られるのは……」
自覚がなさそうにルーウィンが不満を吐き続ける。ラクトスとティアラがまったりと飲食しながら相槌を打っていた。
「食べるもの食べたし、デザートの甘味が欲しいんだけど良いかな?」
試合で集中力精神力をすり減らしていたフリッツは体が糖分を求めているのだろう。ラクトスもそれ位出してやると快諾する。
「頼んでいいぞ。俺ら全員分にするか!?」
フリッツとティアラが「それで良いと思います」と言う。ルーウィンは何だかお酒もどきで楽しそうだし返事は来ないと決めつけて。ちょうど近くの席の客へお冷やをついでいたスタッフに注文した。
「ヨーグルトがメニューの中でおすすめの一品ってピックアップされていたしハズレはないはず」
作り方を簡単に。ボウルにザルを置いて<キッチンペーパーを敷く。重しをしてラップをかけて冷蔵庫でひと晩放置。それにはちみつをかければ完成。>時短ならキッチンペーパー
二重にして包み、重しを多めにのせて冷蔵庫で約1時間で作る事も可能。全員でデザートを食べたらラクトスやフリッツ達はしばらくのんびり。ルーウィンが雰囲気と思い込みで酔いつぶれるのを目視した所で店に呼んでもらったタクシーに乗って主催者側に無償で提供してもらっている宿泊施設に帰っていくのだった。
「大会が終わるまで帰れねえだろ。主催者側が選手一行には|観客席最前席≪関係者席≫を用意してくれているみてえだしそこで見るか」
「うん、そうするよ。何か参考に出来るものとかあるかもしれないしね」
ラクトスとフリッツの話し合いでこれから数日間の予定が決まった。ティアラは構わないと思っているみたいだし、ルーウィンも苦情を言うのは馬鹿馬鹿しいと考えそうだ。
◇ ◇ ◇
まもなくベスト8第2試合目である。謎の男とファーディの対戦だ。謎の男はフリッツ達の第1試合の中盤に来たので遅刻はない。2人がそれぞれの控え室からCコートへ向かって
いった。済ませる事は済ませようと試合前に行った場所で2人は会った。
「試合中に場外へ行くのは許されていないからね。今の内ってやつ。君もそうだろ?」
布で顔の大半を隠している人物にファーディは話しかける。声を出すと声色を変えていても気づかれる可能性があると考え、首肯で返した。
「ところで君の戦いぶりは知っている人を彷彿させるんだよ。リオと深いつながりがある様なない様な。最低でも格闘スクールの生徒だろうね。粗削りな部分があるし」
知らないフリをして先にCコート会場へ。謎の男、正体の彼はドキドキ。
(完全にバレるにしても試合の大勢が決まってからにしたいな。リオにこの人≪ファーディ≫の戦い方を多く見せられれば)
「ベスト8第2試合が始まりますが、観客の皆さんも観戦準備OKですか? 開始しますよ」
この大会を楽しみにしている国民性だけあって、いつ試合開始しても良いように観客達の視線がCコートに集中。
「信頼を損ねかねないトラブルがあったのにも関わらず、この試合にも注目してもらい、ありがたいとしか言葉が出て来ない。ではこれからも良い試合を期待してくれ」
シミュレーションが見える特殊ゴーグルの装着拒否をする観客が増えても不思議はない。なのにそういった者がほぼ見当たらない。スリルやリスクを受け止めているのかもしれないが、どうあっても装置を信用しているという事。そこまでの気持ちを見せられたら相応な進行をしなくてはと運営側も思った。
試合開始を告げる放送後にフラナがシミュレーション装置を起動する。
ステージ変更
場所 車道 変更箇所 Cコート全体
「このステージになったようだね。一般的な車道とは車の通行量が違うと伝えておこう」
審判役のセグの説明によると車が多く通る車優先の道というのとは違う点があるとか。シミュレーションの『車道』には交差点なんて存在しない、車は人が運転していない(ロボが
乗車している普通車、スポーツカー、バス、トラックなど)だからスピードが落ちないのだ。車自体も自動運転だからロボは飾り。
ファーディと謎の男には衝撃吸収の防具などが勝手に付加される仕様のステージ。鎧や兜には近未来の素材が使われているし、コンクリートの床もトランポリンみたいになっているので衝撃が減らせる仕組み。
「今回は防具にこちらで用意した付加をつけたが安全のためだ。理解してくれ」
謎の男もファーディもまずは様子見だ。車道をはさんで意識を向け合っているだけでなく、車の動きを見極めようとしているのだろう。観客は戦う姿を見に来ているだろうしとファーディが先に動いた。だが、謎の男に辿り着く前に死角から無人トラックがつっこんで来そうなのに気づいて元いた場所まで回避する。
(おっと危ない、こういう事もあるのか! 結構やばいステージかもな)
ファーディの攻撃を身構えていた謎の男だったが、来なかったので仕切り直した。
「ファーディさん、今度はこちらから狙わせて頂きます。車道から向かうのが難しそうなら他の方法で」
トランポリン化しているステージの地面を利用して跳躍を試みる謎の男。しかし、本物のトランポリン程の弾力はなく何台かの車の上を踏む感じになった。そのままファーディの方へ行ければ良かったのだが、スピードを出した車が何台も。なので、断念する。
(この方法はどうだろうか。流石にこんな行動をするなんて予想出来ない事)
謎の男は考えた行動を即実行に向かう。路上駐車している車のロボを出して自分が乗る、免許はない。だけど自動車の運転は『自動』だと思ったから。そうした結果は心臓がドキドキ
するような警告音の類。
「!?」
そこで司会のセグから説明が入った。
「こちらの想定には入ってなかったから説明しそびれたが、車の使用は認められん。すまなかったな」
一瞬ひるんだ謎の男だが、落ち着きを取り戻した。ファーディもファーディでこれからどう動くかといくつかの考えから最良のものを選ぼうとしている。このシミュレーションステージには信号なし。車の種類は軽自動車からトラックまで色々な車種が通っている点。ステージの床はある程度跳ねる事実はある。
コラボ協力に感謝^^
不揃いな勇者たち としよしさん
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