ラウンド1 格闘大会に推薦!? 2
予約掲載を利用する時はしようかな~と思って。
ダイアーには負けたものの、他の新人大会のセミプロ級で優勝~三位と好成績を上げた実績を評価されたのだ。BMSは九割の奨学金制度(無期限)を用意してまでリオの入学に好条件を提示した。リオは武術スクール生徒中から期待を背負わされているようなのでまずは重しにならないよう、重圧を感じないように考えることにする。
そんな時、マギーが控え室の感想をふってくれた。
「さすがは一流大会。周りの飾り付けからして成金の部屋みたいだ……何かおかしいか?」
「いや、考えることが似ているなと思って」
マギーがリオのお守りに触れて願いをささやく。
「勝利の神様、リオに宿ってる?」
彼がリオに笑いかける。すぐ違うところに目をつけた。
「おっ、立派な風呂だな。シャワー以上だ」
少しドアを開けたのでリオは思わず止めた。
「ドア開けんなよ。なんてらしくないか」
「何でさ。理由は何だ?」
リオは聞き取りづらい声で答えた。
「壊れそうな気がして……心配なんだ」
マギーが勢いよくドアを開け放つ。
「そんなボロでもないんだから」
リオはマギーの行動に腹が立った。マギーはドアを閉め、リオの方へ向き直る。
「おい、リオ。お前の雰囲気で外の小鳥が逃げたぞ」
マギーの笑えない冗談に、辛辣な言葉でリオは返してやる。冗談の言い合える親友だからこそ本気で入っていないと分かるのだ。
「君の雰囲気の方が小鳥に悪影響だよ」
「俺にビビってたら小鳥が空を飛べねえよ」
マギーは、リオがプレッシャーで固くなっている感じなので犬のようにそばへ寄り添った。
「なかなかの緊張っぷりだな」
リオの肩に手を置いて、軽く揉む。
「余計な考えはするな。無心でいこうぜ。お前は何でもやれるさ」
リオはお返しにマギーの肩を軽く三回程揉み返す。
「君の言う程、僕は落ち込んでないよ」
「反論すんな。試合十分前、緊張が激しいぞ」
リオはビックリした。考えを読まれてる!
「誰と戦うんだ?」
僕は当然対戦表を見ているので、対戦相手を答える。
「ドラーシ・ロア」
「あぁ! あの巨人の子って奴。彼の世界ランクは?」
そんなランキングに入らない武術スクール生・アマチュア実力者はたくさんいるものの、やはり順位があるというのは気になってしまう。もう調査済みだった。
「たしか三十位」
「シード選手じゃないな。一般予選何位で通過してたかな?」
「二位だった」
「一位は誰だ?」
「パーラ」
そこでマギーが嫌そうな顔を作ったが、リオが少し笑顔を見せると、大真面目な顔をした。
「あの野郎は金がすべての男だけど腕がたつのは事実だ。だが一度も練習で負けたことはねえだろ」
ランキングなんて参考にならないって話、わかったよね? 僕に勝てない選手が予選一位で通過するんだよ、彼は強いけど僕ほどじゃない。だから僕はこの大会に自信はある。
「たしかにね」
「お前、ファーディに評価されたって?」
「その時の話? 強いって言ってくれたよ」
マギーが貧民街に住んでいるリオを羨ましがる。ファーディが貧民街出身だからだ。そんなマギーをリオは冷めた目で見た。
「貧民街は何もないよ。うらやましがるなんて現実を知らないからだよ」
最初は家族間だけで秘密を共有するつもりだった。でもマギーにも打ち明けることにする。
「同情はいいんだ。パトリ・オープンに参加出来たのもまともな方法じゃないって話しておきたくて」
「推薦だから…………か?」
「それ以外もいろいろ。傷つくことが……」
去年の冬、リオはセミプロ(20歳からプロ)転向の申請をした。パトリ・オープンの一般予選大会を目指して。BMSからの予選ツアー参加資金は自分の貯金と両親の資金調達のお陰で参加可能になった。BMS全参加者の中で甲乙つけがたい名勝負を決勝で見せたので、いつもはない特別枠に入れる予感がする。リオは最初からそれしか狙っていない。 特別枠の二番目、それを待っていた。だが、パーラのみ選ばれて追加の発表はない。