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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
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パトリオープンベスト8 一試合目終了後 敗戦を認めたくない 2

「わかりました。さっそく私達もお店に入りましょう」

まだ昼すぎなのに酔っぱらいの意味不明な騒ぎ声が聞こえたり、スタッフがジョッキを運んでいる最中に鳴るジョッキ音。アルコールの匂い、おつまみのいろんな美味しそうな煙などが充満している店内。店の厨房近くの右側席でフリッツが2人に声をかける。

「ラクトス! ティアラ。こっちだよ。ルーウィンがもう料理を頼んじゃったけど」

 彼がフリッツに小声で飲み物の事を聞いた。

「飲み物はまだか?」

「うん、これからだよ」

 ラクトスは間に合ったと心中で安堵した。これからの注文は任せておけと名乗り出る。

「じゃあ任せたわよ。肉料理に合うやつをちょうだい」

 ルーウィンは、すでにスブラキ《鶏肉の串焼き》とケフテーデス《肉団子の串焼き》。それに極東料理のカラアゲなるものを注文いていたらしく届いた。野菜はキャベツの千切りとレタスのちぎりをフリッツが注文したらしい。


「いらっしゃいませ。ご注文が決まりましたらお申し付け下さい」

 フリッツが後で2人来店と言っておいたのだろう。ラクトスまたはティアラが注文の声をかける前にスタッフが接客に来た。

「食い物はこのムール貝のピラフ2つと季節のパスタ(今はトマトパスタの様だ)で。それで飲み物なんだが」

 ピラフはバタートマトライスでムール貝を蒸し煮したもの、だし水を入れて白ワインも使い、パセリを散らすご飯を蒸したものの様だ。メニューに説明がある。パスタはパスティッチャーダ」太くて中心に穴のあいた長いパスタで、牛肉のトマトソース煮込みと合わせる定番である。ルーウィンが肉に夢中になっているのを見て立てて隠す。そしてお酒の名称と1つは指で注文した。


「飲み物は氷多めで頼む。えっと、烏龍茶のやつとカルーアミルク。それから青りんごサワーにこのビールのやつを」

 ルーウィンがちゃんとお酒も頼んだみたいねと勘違いしただろうと判断。ラクトスは小声でこのビールみたいなやつの後でノンアルコールな<リトルビール>を持ってきてくれと注文。注文確認はメニュー表のチェックだけで済ませてもらう。

「そういえば、お金の方は余裕あるの?」

 フリッツがふと気になった事を質問した。

「この店はコスパも良いみてえだし、問題ねえよ。いや、もしかしたらお金いらねえかもな」

「えっ!? それってどういう……」

 フリッツとラクトスでそんな話をしていると、彼らの卓に口に泡をつけたフランクなおっさんが寄ってくる。


「おう、あんたら。その子は良い食いっぷりだな、おいっ」

 ルーウィンが「まあね」とだけ答え、食べる動作に戻る。フランクなおっさんがサラダとかおごってやろうかとフリッツに顔を近づけ、やっと気付いた。

「んん? 良く見りゃリオさんと戦っていた少年じゃねえか。大きな経験したな、やっぱ記念に飲み物料金を払ってやるよ」

 店内にいる他の客達が酔っぱらいの戯れ言だけど、金を出させちゃえよという空気になった。フリッツ達は注目されて客全員にバレた(特に隠れるとか考えていなかったものの)

「マジか! よしっ、俺もそのスブラキ代払ってやるよ」

「私はケフテーデス代を払うわ。こんなもてなしをしてくれる国民が多い異世界だって、良い思い出を記憶を持って行って」

「それだけこの国の格闘大会決勝トーナメント出場は快挙って事。戦いの腕前を認められた人の一行限定だけどね。僕もドリアとかパスタ代をプレゼントしたい」

 気前の良さ気なおっさんやその場の雰囲気を察した青年、笑顔が可憐なお姉さんに喜びを分かち合いたい大学生くらいの少年がスタッフにお金を渡していた。これでは遠慮する事が出来ない。


「満足いくまで飲食していってくんな。こいつはオレ《店長》からの振るまいよ」

 朗らかに青年店長に言われてしまっては甘えるしかないだろう。飲み物をテーブルに用意してもらうまでに周囲の客を見回すと酒豪発見。ラクトスはこっちにまで届いて来ている事にしめしめと思った。

(そんな飲ませなくても思い込ませられそうだな。アルコールを飲んでるってな)

「先に店長からのエッグレモンスープのサービスね。野菜の旨みとレモンの酸味がマッチしているスープ。お口に合うと良いけど。飲み物は別スタッフがすぐ持ってくるわ」

 このスープもこの国で有名な料理の1つの様だ(タヒノスパという名称のギリシャ風ごまスープ)使っているのはルオーテというパスタ。味付けにタヒニ<アラブ系のごま調味料>、レモン汁、塩こしょう、ハープ(主にパセリやディルなど)を使っているスープ。レモンの酸味と胡麻の風味を楽しめる。


 肉を多く食べていたルーウィンがスープをがぶ飲みして一息ついた。そこで店スタッフが飲み物を運んで来る。


「飲み物、もう少し遅かったらイライラしちゃいそうだったわ。えっとこれでいい?」

 ルーウィンがカルーア『ミルク』をフリッツの前に。青りんごサワーをティアラの所。ウーロン茶のやつはラクトスへ。自分の近くにビールだと思うものを置いた。

「こいつは間違えるわ。ミルクそっくり! カルーアミルクのコーヒーはジャポンのキタウミという場所からホワイトコーヒーを輸入して使用しているってメニューの説明があるとはいえな。カルーア『ミルク』だからって牛乳じゃなくお酒を入れてるから覚えとけよ。お前はそのままで良いけど」

 フリッツがウーロン茶。カルーアミルクをティアラに渡し、ラクトスが青りんごサワーに手を伸ばす。

「このビール、苦味はあるけど泡が足りないわね。こんなもの!?」

 ルーウィンが飲んでいるビールは麦茶とサイダーで割った『リトルビール』アルコール度数はない。ビールらしい味に感じるのは<麦>のお茶と<炭酸>だからだろうか。


「そういうビールの種類もあるって事だ。※イギリス発祥の『エール』など。

あそこのおっさんの飲みっぷりでもたまに見て飲めば更に飲んだ気が高まるかもよ」

 ラクトスのごまかしに気づかないルーウィン。お酒を浴びる様に飲んでいる奴を見ている内に雰囲気で酒が回って来た気がする。


ギリシャ風ごまスープレシピは興味があるという意見を頂いた場合のみ掲載したいと思っています。


コラボ協力に感謝^^


不揃いな勇者たち としよしさん

http://ncode.syosetu.com/n5011bl/


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