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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
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パトリオープンベスト8 一試合目終了後 敗戦を認めたくない 1

 ティアラに言われた通り、確かに火傷を負ったのにシミュレーションがなかったかの様だ。ただ恐怖心はある程度残らせているらしい。主催者側の人が来ると聞いたフリッツはイスに座り直した。救護室にナースコール的な物があったのでティアラが押した。しばらくするとドクターがやって来る。


「どれ、失礼するよ。体に不調はなさそうだね。心身状態チェックマシンも健康面クリアと出ている。君達の準備が良いならフラナさん達を呼んで来よう」

 何度も怪我人の治療を生業なりわいとしてきたであろう人の口調はやわらかい。それが初老に近づいているお医者さんの貫禄だろうか。何だか場の雰囲気もやわらいだ感じもした。

「当事者の僕はもう大丈夫だけど、ラクトス達は?」

 フリッツがルーウィンの名前を呼ばなかったのは何となく地雷だと思ったから。ラクトスとティアラがルーウィンをとりなしながらもうなずきで肯定の意思を示す。


「みんな話を聞く準備は出来ているみたいです。それじゃあよろしくお願いします」

 救護室ドクターから許可が出たのでフラナと審判のセグがフリッツ達の元へ来る。シミュレーション装置の開発長のフラナの姿を認めたルーウィンが怒りをぶつけかけた。

「あんた達、どのつらさげて来たの!? 納得いく説明は聞けるんでし……」

 対するフラナとセグも特に意に介している様子はない。何を言われても当然と考えているのか、それとも!? 無言でセグが巨大なちからコブを見せつけてきたので彼女も下手な言い分を口に出来ないなと思う。

「セグ。その女の方が言いたい事は理にかなっているし、よっぽどの事がない限り手出しは無用よ! もちろん口出しも」

 フラナに制止されて、セグがイスにどっかりと腰掛ける。相手がこちらの話をすべて受け入れる感じになったのでルーウィンは勢いづいた。


「謝罪を何度聞かされても結果はくつがえらないでしょ!? 望みは一つ、再戦の要求」

 フリッツとしては勝敗に納得しているし、相手《大会側》に迷惑をかけたくなかった。だからルーウィンに「もういい」と言いかけたがラクトス達に止められる。

「お前は気持ち的に整理ついたかもしんねえが、あいつは別だ。やつの溜飲を下げるため変な言い方だが見守ってるしかねえ」

 ルーウィンの要求を受けたフラナだが、それは無理だと一蹴する。その理由をルーウィンが聞く前に語った。

「あなた方、異世界の異邦人のためにもパトリオープン《この大会》のルールブックを渡したはず、それには目を通した?」

 今回の大会から大刷新してあるので色々と書いてあるルールブックのほんの一部に書いてある情報。例えば大会の運営方法は、運営者の理念は、格闘大会の歴史、シミュレーション装置で可能なこと、シミュレーション装置を使うに当たって観客達への注意点、何かハプニングが起きたら? 、怪我人の応急処置、インフォメーションセンターなど場所の説明、闘技場内で売買契約を結んでいる業者さまへ(業者さまのみお読み下さい)などと細かく多岐に渡る内容。これを読むのは面倒だと思う者も多いだろう。

「失礼したわ。この30ページ位ある小さな文字のルールブックより、12ページの無料パンフレットの10ページにある『イレギュラーな状況があったら?』を参照してちょうだい」

彼女は言われた通り、そこを見る。そのページにはシミュレーション装置についての条項があった。万が一何らかの機械トラブルがあろうと再戦には応じられない、最善の交渉で相手に納得してもらう事と太字で書いてある。

「確かに書いてある……。でも物事には例外ってものがあるでしょ? そっちのミスなんだから改めて再戦を求めるわ」

 もう少しフラナ達に考えを改めてもらおうと粘ったルーウィンだが話は平行線のまま進展しない。結局、大会側からの謝罪の形は付加がある装飾品と珍しい回復薬にしてもらえないかと譲歩を求められる事に。


「こんだけの誠意を見せてもらったんでこれで十分。アイテムとかはしっかりもらっていくんで」

 ルーウィンがかみつく前に応じたラクトス。当然文句をつけられ続けたが聞き流して最後には飲みに付き合うと約束してこの場では黙らせた。

「大変申し訳ない結果を引き起こしてしまった事実は変わらない。それではこちらを。万能薬5個と風を切る速度を誇ると伝承のある『かぜきりの弓矢』を渡すわね」

 お詫びの品をラクトスが受け取った。お互い去る事に決め、行きたい場所に戻ろうと。去り際に大会終了まで試合を楽しんでもらいたいとすすめられた。


「こんなので水に流せなんて虫が良すぎ! 不服申立て可能な裁判所的建物はないのかしら」

 不満の残るルーウィンは愚痴らずにはいられなかった。それをラクトスに止められる。

「あのな、もうやめとけ。俺らの心証を悪くして自分の世界に帰れなくされたらどうすんだ」

「しないでしょ、そこまでは」

「わかんねえだろ? 気が済むまで飲食させてやっから」

 ラクトスが他の3人を連れて一度大会の会場外に出る。フリッツがどこへ行くか聞いた。

「どこで食事するか決めてあるの?」

「適当な店があったらそこで良いかって考えてる。会場の近くに何軒かあるけどあそこにしようぜ」

 ラクトスが視線を向けた先には屋台に食堂、カフェ。それから麺料理専門店とfood&barなどが並んでいた。その中からfood&barへ向かう。


「フリッツお前、ルーウィン連れて先に店へ行っとけ。俺は用を済ませてくるから」

「さっさと来なさいよね。席ぐらいは取っといてあげるから」

 ルーウィンがフリッツを引きずりかねない勢いで店に入っていく。ティアラも2人に続こうと向かおうとした所を呼び止める。

「ティアラ、ちょっと待ってくれ。話があるんだよ」

「どうしたんですか? ラクトスさん」

 用があるのではと確認するティアラにあいつらを先に行かせるためと答えるラクトス。ルーウィンの奴が暴飲暴食する可能性がある事、特に酒を飲もうとするだろうからそれを防ぐとティアラにフォローを求めた。

コラボ協力に感謝^^


不揃いな勇者たち としよしさん

http://ncode.syosetu.com/n5011bl/

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