メリアの話 そしてベスト8 第一試合
最後はメリアがコロシアムに到着するまでのお話。ルーコがメリアの家からコロシアムに行くまでの通りで待っていた。この道はいろんな場所(中立通り、勝ち組通りの貴族街、貧民街、コロシアム通り)に行く事が可能な交差点な造りとして整備されているのでここを通過するとわかっていたのだろう。
「朝日が白くて空に浮かぶもの《雲間》から顔をのぞかせているな友よ、我といざゆかん戦の地へ」
歩を合わせてきたのでメリアとしても一緒に行動はいいかと割りきっていた。一緒に会場に行こうと決めた。
「風のうわさというか、どこか道端の雑踏から耳に入ってきた損はない情報を授けようではないか。その話の信憑性は私が知る情報通に確認したので高いと思う。ユウトという別世界から来訪した少年が連れの女性と格闘王に会ったらしい。気にならないか!?」
確かにどんな理由があって警備の厳重な建物に入ったのかわからない。メリアはそんな人物と戦う可能性もあるのよねとそのニュースが気になった。
「どうしてそんな事をしたんだろうね?」
「ここ《この世界》の情報を集めたい事情があったんだろうね。でも今はクールビューティーなレーザーレディのみに集中せよ」
メリアは言われた通り、来るべき試合の対戦相手だけに目標を定めようと思う。
「そうするね。他の事をなんて深く考える余裕ないだろうし」
港から海の景色を見つめているのは睦月。今日も戦う事になるので対戦相手についての考えをまとめていた。
(ユウトという少年はあまり実力を出していなかったのではないだろうか。力量を調べるにも情報不足で無理そうだな)
それでも自分の『炎』という能力さえあれば、予想以上の強さでも対処出来るだろうとポジティブ思考でコロシアムに向かおうとする。
(対戦相手は現段階で新米兵士な印象だ。そういう人物が兵士長くらいの実力を見せても問題ないだろう。会場に向かおうと思ったけど確かそこまで急がなくても良かったような)
コロシアム控え室で待機しようかと考えた睦月だったが、ズボンのポケットから四つ折りした格闘大会スケジュール用紙を見て、しばらくはなつかしい潮風に当たっていこうと決めた。
「本日もお越しの皆様方、お待たせ致しました。後5分程で1試合目を行います」
フリッツと一緒にいた一行《ルーウィン、ラクトス、ティアラ》はしっかり頑張れといった類の声援を送ってから観客席に移動する事にする。仲間達に声をかけられたフリッツは相手が優勝候補という事もあってプレッシャーになってしまったようであった。
「おいおい、どうやら声援が逆効果になったみてえだぞ。あいつの表情を見てみろよ」
ラクトスとルーウィンが小声でやりとりしていた。フリッツが不安そうな表情をしているのを指摘するとルーウィンが『これから先も実力以上の相手と戦う可能性が結構あるはず』
といった話をして<荒い方法だと承知しているけど>と追記する。
「今日の相手、リオって人はこの世界で桁違いな感じがするわよ? だけどあいつは壁を越えなきゃ」
そんな話をしている内に観客席の入り口に到着する2人とティアラ。
「すいません、初日はやっていませんでしたが2日目からは安全対策のために武器持ち込み禁止、お預かりという形になっております。ご協力願えますか?」
こういうのは本当に大した問題も起きず、試合進行したいだけの可能性もある。テロリストとか過激派集団はこの国の治安からし確率が低いだろう(万が一のための制圧部隊があるのは事実だが)そういう可能性の話で記すならば、まだ強者を遠距離武器で倒すのを企む輩くらいか!? 捕まろうと大会の伝説に残ろうとする存在の方がいるかもしれないという比率において高いと思われる。
「嫌な予感がするのよね。この弓矢所持、どうにかならない?」
どうやらこの係員はチーフだった様で、弓矢がすぐ使えない状態にするならと条件付きで許可を出した。
「大会運営として観客席で問題が起きたら即対応の備えがあるのですが……。わかりました、『矢』を預からせて頂けるのならば」
この間、数名の係員がこの話し合いを見せない様に集まっていたのは言うまでもない。話が終わると係員達がそれぞれの持ち場に戻っていった。
(どうしても何かがある気がするわ。最悪を想定してあの係員のいる列にでも座るとしようか)
「おいっ」
ルーウィンに声をかけたラクトスだが、気づく様子がなかった。しょうがないのでもう一度呼びかけてみる。
「おいって!! 聞こえてんのか?」
「うるっさいわね、何よ! 席ならそこで良いわ。そうしなさい」
考え事を邪魔されて不機嫌な声を出すルーウィン。逆ギレ気味に感じたラクトスが話題違いだと反論した。
「俺はお前が武器を持つ事にこだわった理由を気にしてんだよ。異質な程、知識のあるこの世界の奴らがやっている事だ。不安に思う理由がわからんね」
相当なすごさ《魔力》を持っている者は別種の凄さ《最先端技術》も感じ取るものがあるのだろう。だがルーウィンは違う。
「私はこういう理解の難しいやつを良いと思えないだけ。良いじゃない危険を感じても」
まだ2人が言い争いそうだと思い、その前にティアラが間に入った。
「お二方の言い分は分かりました。ラクトスさん、良いじゃありませんか。女の勘、それも戦闘に関する勘なのですから当たるかもですよ。ルーウィンさんも心に余裕を持って頂いて」
何かこうなった原因が俺にあったみたいだなとラクトスが顔に出すと、ティアラが彼に対して眼力で謝罪した感じを見せた。これ以上は不毛だと思ったラクトスが話を打ち切る。
「もういいか。もう試合が始まるからそこへ行こうぜ」
「私もどうでも良くなったわ。何か起ころうと起こるまいとその時になったらわかるんだから」
準々決勝《ベスト8》が開始間近になった事で観客達も試合に集中するモードに入った。フリッツなりに平常心でいようと考えていたのだが会場の雰囲気とリオに向かい合った際の圧力で体がガチガチになる。リオは彼との対戦を通常状態で行いたいので緊張を解こうと試みた。
「多くの観客を前に戦う経験は浅いのかな? 大丈夫、自分の力を信じて」
フリッツも罠にはめられて殺らなきゃ殺られるといった状況に陥った事はある。でもあれは嵌められた結果だし、最悪の状況だったので冷静ではいられなかったのだ。純粋にいろんな人との対戦を見ていて自分の武器の腕前に自信が持てなくても無理は無い。
「時間は待ってくれないからな。戦いの最中に冷静さを取り戻してくれるよう願っているよ」
コラボ協力に感謝^^
不揃いな勇者たち としよしさん
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