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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
62/88

ベスト8進出者に 試合後パーティ

 いつも激しいケンカにならないからそこまで心配しなくていいかと両親を信じて祝賀会場へ足を進める。

「すごい! まるでどこかのお屋敷みたい」

 その場にやって来たメリアの目にはホテルが豪邸の様に映ったのだろう。それもそのはず、この建物はギリシャの富豪邸宅を参考にしたという歴史があるのだ。

「この程度のゴージャスさで目が丸くなるの? あんたがそんなに金銭に飢えていると判明。へ~っ」

 ほんの少し遅れてここへ来た眼帯少女ルーコがメリアを小馬鹿にした表情を浮かべている。メリアが感情を表情に出して反論しかけた時――

「何か言いたい事ある!? 我の正体に気付けないおマヌケさんに対する扱いはこれで十分」

 ぐっ……と言葉を返せないメリア。こんな濃いキャラクターになりそうな人に心当たりが浮かばないので誰かというか、1人も候補を減らせない。


「マグレだか運命の導きだか知らないけどあんたは私に勝ったの。気付かなすぎだから大ヒントを与える、私は心を共有する友2人と一緒にいるいる事が多い」

 ヒントのお陰で同学年くらいという予想は良いとして、3人組で行動している女の子グループの中心だというのはわかった。あれ、もしかして!? と何やら引っかかりを感じていた時にホテルロビーで声をかけられた。

「メリアじゃないか。素敵になっているね。君は俺の正体を知っているから普通に接させてもらうよ」

 さりげなくメリアの見た目を褒める謎の人物マギー。嬉しくないはずがない、彼女は微笑みながら会釈した。

 それはそうと、こういう場でも彼は謎の人物として全身を覆うマント着用をやめる気はないようである。本来の格式あるホテルなら正体を隠すという理由があろうと門前払いだろうがここは『パトリオープン16強祝賀会』そういう点は寛大だ。

「こういう場では知っている人がいると何か安心出来ますよね。バレないようにして下さい」

「ははっ、大丈夫。リオはファーディと話してるしな。もちろんそう見せかけてこっちをうかがっていたりするかもだから角度には気をつけているつもりだ」

 メリアが謎の人物マギーと話をしていると、眼帯少女ルーコにドレスのすそを引っ張られて会場の隅に連れて行かれる。そこで内緒話を持ちかけられる。

「私、一目見た時からあのマント男さんがカッコイイと思ってた。あんたの知り合いなら私へ紹介を希望する」

 別に彼が良いというのならという訳で確認して承諾してもらう。そして眼帯少女ルーコの前に彼を招いた。

「はじめまして。正体を隠しているので名前は言えませんが。そうですね、ミステリアスのミステアとでも呼称をつけますか」

「お先にご紹介感謝。私はルーコと言う。私も実は訳有りで正体を明かせぬ事情がある」

「これは奇妙な縁だ。訳有り者同士、仲良くしてもらえるかい?」

「喜んで」


 2人の雰囲気が友好的なものだと感じ取れたメリアはそれに越した事はないと思っていた。そんな中、マント男とルーコがお互い聞き覚えがあるぞと気付き、正体の心当たりを小声で言い合う。

「あんた、リオ先生の親友の……」

「そういうお前は格闘スクールでメリアにちょっかい出してた……」

「(姿を隠していたとはいえ、こいつの事をかっこいいとか思っちゃった)変な格好!」

「人の事を言えた変装か! だが、変装理由は俺と似た様な動機だろうな」

 2人で言い争うみたいな様子をしばらく見ていたメリアは、最終的に2人が握手をしていたので友情度が上がったんだなと思った。


「お互い足を引っ張り合うのはやめようか。仲良しな演技をしろよ」

「ええ、メリアを悲しませたくないしその提案に乗ってあげる。協力関係も築けそうだしね」

 メリアと通称ミステア、ルーコで先に談笑していたリオとファーディに話しかけた。すると、彼らにせっかくだから祝賀パーティの料理を食べてきなよと言われる。

「えっと、何があるんだろ? スブラキ―、ケフテデス、ゲムスタ・メキマ、ムーサカ、カラマルキア、魚グリルにヨーグルトか~」

 どれもこれも貧民なメリアではなかなか食べられない料理ばかり。スブラキーは肉の串焼き、味付けはシンプルな塩コショウだけ。ハーブ《香草》で肉の臭みを消しているのが特徴的だ。次に手に取ったのはケフテデス。肉団子を焼き団子みたいな感じで串に刺して食べるもの。続いてお米を食べたくなったのでゲムスタ・メキマを食べようと思う。これは肉詰めを米詰めに変化させた様なものとでも思うのが良い。それをトマトソースで煮込んだメインおかずになり得るものである。


「大食漢な娘、そのがっつき具合は獰猛な獣のよう。どれだけ溜め込めるか興味津々」

 つい色々と食事《料理》を美味しそうに食べてしまっていた。それに気付いたメリアにルーコから一つの料理が手渡されたり近くの席に料理を集められたりしていた。

「くれる物を断るなんて選択肢はないな~。ありがとう、もらうね」

「これはムーサカってやつ。うわー、ギトギトって思うかもね。嫌なら残すのを推奨する」

 ムーサカというのはナスとひき肉メインのグラタンの様なもの。ボリュームある料理の様で。お皿によそって食べるのが良い料理だったりする。オイリーな点は好き嫌いわかれそうなおかずだった。飲み物で口直ししてカラマルキアを口に入れる。これはイカの天ぷら的なおかず、塩とレモンを味付けに使っている様だった。十分食べたなー、でも最後に魚を食べたいと思ったメリアは魚のグリルに手を伸ばす。魚はカサゴ系のスコルピオスを使っているみたいだ。オリーブオイル味が一般的だったりする。


「私、食べてばかりだったけどこんな祝賀会の楽しみ方で良かったのかな……。恥ずかしくなって来た」

「そんな事はないさ、料理をいっぱい食べてもらえるなんて料理人冥利につきるだろうしね。結構リオの奴も食ってたし」

恥じらいを覚えたメリアにファーディがパーティの楽しみ方は様々だと教える。

「パーティ料理はバイキングの様に好きなだけだからな。でも俺もお前も十分食ったろ。皆でヨーグルトでも食って食休みしよう」

「良いですね。でもその前に少しこの場を離れます」


 メリアは手洗いなどのために化粧室へ。そこに備え付けてある複数の洗面台鏡の1つの前にルーコがいた。

「我に勝利した奴、いい加減気付いたか? 今はウィッグも外しているのだが」

 ここまで変装をやめている状態なら流石に気付けた、いじめっ子のリーダーだったコルトだと。だから現代の実用品を使ってのシミュレーション試合に慣れていたのかと思った。結果的にコルトを2度勝負で破っているのだと思い出す。

「あんたに負け続きなのは事実だから受け入れるわ。でも哀れみだけはやめてちょうだい」

 更に言いたい事を口にする彼女。

「格闘スクールでの付き合い方は今の所、まだ微妙な関係になるでしょうね。でもこの大会中はルーコとして相手をして欲しいの」


 イジメを仕掛けた相手が何を言っているんだと拒絶されるのも覚悟の上で発言。しかし、メリアは彼女がまさかの中二病的作品とかを参考にまったく別人格を作り出して出場していたのが面白くて仕方ない。過去にされた数々はひどいものでもう関わるのを最低限にしたいという考えがあるのも否定は出来ない。だが、それよりも別人として程良い距離感で接しようという気持ちがまさった。

「こんな罪深み我に罪と向きあう期間を与えてくれた事に感謝する。これからの対戦相手のスパイは任せて欲しい」

 ルーコにスパイをして欲しい訳ではないが、情報が更に増えれば仮にいくら不利でも打開策を導き出せるだろうと思う。彼女コルトなりのメリアに対する助力方法だというのもわかるので自由行動を認めた。


「あなたの事をコルトだって思うなっていう話よね。許す許さないは別として大会中は割り切るわ」


 パーティ料理の参考はギリシャ料理です。この作品の世界観に一番近い国。

結局パーティ参加者は一部を除いて勝利した選手のみに(笑)

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