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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
60/88

決勝T1回戦 第8試合 1

「だが俺は服装、それに言動も奇妙なあの子が油断ならぬ存在に感じる。さて、どうなるんだろうな」

 2人は最終的にこれから開始される試合で明らかになる、読めない試合を楽しもうという考えを一致させた。

「さて、本日の格闘大会を楽しんでくれていた皆の者、声援応援などに感謝する。本日最終戦、第8試合がどういう試合になるにせよ見守ってくれ」

 第1試合と第8試合に選ばれた者達のみ一回戦でAコートを使用する名誉を味わえる。このメンバーの組み合わせはたまたまなのだが、Aコートの伝統を知る者程、このコートで戦うのに気後れしてしまう。メリアのメンタルが複合要因で不安定だ。もう一人のルーコの方は光栄と言った感じなので、メリアの気持ちが早く切り替わらないと危険かもしれなかった。

「心構えはしっかり出来たかな? こちらはすぐにでもステージを変化させられるから良い試合を見せてくれ!」


 選手用出場口から姿を現すメリア。彼女は伝統のコートで魔物にやられたのか、迷いを見せてしまっている。一般人にはわからない、しかし強さを求めて修行を積んで来た格闘家には迷いは命取りになり得る。そんな彼女が気に入らないのか、ルーコが挑発を始めた。

「桃色の格闘戦士、神聖なるリングに足を踏み出す勇気を持て! 今のあんた、戦いに不向きだよ」

 変わった髪色をイジられたとわかったメリア。相手の眼力にたじろかされかけたが、それよりも萎縮なんかせずに力を発揮して欲しいという気持ちを感じ取った。声に怒りの感情が乗っている点が気になりはするが。

「さてと、色々と思う事もあるかもしれないが、最後まで順調にやらせてもらうぞ。フラナ、シミュレーション装置を起動してくれ」


 ちょっとした時間の前後(順調に1日の時間配分を消費している)は目をつぶって、セグがステージ変更を目視した。


         ステージ変更


   場所 特殊ステージ 条件 Aコート全体


「おお。これは確かフラナに聞いたな。このコートがステージに変貌するのは変わらないが変更点が特殊だとか」

 今まで観客達などが見学して来たものと何が違うのか。メリア、ルーコ双方ともに不安めいた気分を味わう。セグがフラナの方に目をやると、開発部長フラナが了解サインを送った。

 そしてステージが変わっていく。どうやら木の多い所から林とか森のステージ? かと思ったらその中心部がピックアップされているファンタジー世界にでもありそうな『泉ステージ』だったようだ。

「お2人さん、そのステージの説明の説明はすぐ行われるとフラナからの伝達だ。しっかり聞いて欲しい」


 言われた通り待機していると、泉から何かが現れるかのように水面が大きく揺れ始める。盛大な水飛沫をあげて童話にでも出て来そうな泉の精霊(?)が登場した。メリアはその状況についていくのに少しばかり苦労している様だが、眼帯少女ルーコは目を輝かせて泉の女神に興味津々な様子である。

 その女神だか精霊に何か話しかけられるんだろうと思っていた彼女達だが、短い時間なのに静まり返っていく謎の感覚を感じ取る。

「うふふっ、あはははは。引っ掛けに注目させちゃってごめんなさい。ステージの説明は私の仕事なの」

 明るく笑い声をあげたのは泉の傍らにいた女性(大人びた雰囲気があるので童顔の大学生くらい?)である。その彼女が2人に手元を見るよう声をかけた。


「あれ? 細剣を持って来たはずなのに。ついさっきまで手に持っていた感覚も残っているんだよ」

「我が武器、消失。何でこんな事になっているのか!? 謎が大きい」

 彼女達の驚きの表情を隠せない表情で満足したかのように女性(実はフラナの変装)は楽しげにしている。

「良いリアクションだね。あんた達には武器の代わりを適当に決められるという試合をしてもらうの。楽しみにしてるから」

 そしてメリアとルーコの手に自動で武器が現れ、掴む事になる。それを見た彼女達の目が点に。メリアの手には太い輪ゴム、眼帯少女ルーコの手にはタオルというシュール過ぎる戦いを予見可能な状態になった。


「どうしたら決着がつくの? って顔ね。それを使って一定以上のダメージを与えた方を勝ちにするよ。ここでヒント! ゴムを使ったものと手持ちは自由に使用可能よ。タオルは布全般を使って良いと解釈していいから」

 



特殊条件下での試合を開始してと女性から軽く催促された気がした両者。まさかの展開だが、メリアは比較的落ち着いていられた。それは格闘スクールで代用武器を使う体験をしてみるよう授業(?)経験があるからだろう。

(私は良いけど、相手の娘は戸惑っているんじゃないかな。悪いけどアドバンテージの強みは発揮させてもらうけどさ)

 メリアの思っている事と裏腹に、ルーコはルーコでやりづらさを感じている様子はない。むしろ私の方が状況変化に慣れているといった感じに不敵な笑みを浮かべていた。


「私の実力をなめすぎ、愚か。この試合、私に勝利が転がって来る」

 改めてこの試合についての追加説明。こんなシュールな光景を見せられても観客達は閉口するしかないと思われるだろうが、実は観客達の特殊ゴーグル越しに映るのは派手なエフェクトになっていた。効果音やHITといった文字が出るなど演出が凝っているのだ。

 彼女達は与えられた武器で勝利を目指す。ゴムと手持ちの布を使って即席パチンコを作った。即席パチンコでシミュレーションAコート内の木の枝などを飛ばした。地味な痛みを受けたルーコがお返しを考える。


「もう! ジクジクと痛む様なマネをしてくるなぁ。今度はこっちから。さてと、タオルは濡らすに限るよね。その方が絡みついたりもしてうざったいだろうし」

 泉の水をタオルに吸わせて固く絞ってから振り回す。防具がある分、ダメージは薄いが結構迷惑な代物に変貌した。

「チャンスと見た今こそ! メリア覚悟」

 眼帯少女ルーコが一瞬でも油断してしまった一気の加速で接近し、メリアをヘッドロックした。その状態で濡れタオルを口に押し当てた。窒息狙いだろうか? 息が出来ない感覚を味わっているのでかなり苦しそうである。


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