ラウンド1 格闘大会に推薦!?
リオが立派な門やユニコーンの像に荘厳さを感じつつ、期待と不安を入り交ぜさせながら門をくぐる。リオは控え室の大きさに言葉を失った。格闘界に入れる可能性のある大会は控え室も立派である。家の部屋より立派そうでここに住みたいとまで思う。
「くそっ、パーラ」
そこで同じ武術スクールの級友に挨拶するかどうか迷った。着替えてからと考えて、大きなクローゼットのハンガーに一流スポーツ会社のトレーニングウェアをかける(両親からなけなしの二万円で買ってもらった)
そのトレーニングウェアを脱いで防具を着用する。両親の苦労はわかるが、クローゼットの広さに反してそれだけがかかっているというのにむなしさを感じ、お金持ちの級友に挨拶する気を失った。
そこにノックの音が聞こえてきた。係員だったが着替え中なので外から用件を伝えてもらう。注意事項を伝えてもらったのでお礼を言うと、気取った口調で返された。
※注意事項
1.プロ選手用の控え室の方は立ち入り禁止
2.自分の持ち物は自己責任で
3.相手の命を奪ってしまったら失格
係員の当然の職務に選手はお礼なんてしないもののようだ。失敗は気にせず、試合支度をすませようとした。私物の大きなバックから腕につける防具を出した時、ファーディからのお守りがついてくる(必勝祈願を続けている) 持っただけで気持ちが楽になった。防具をしっかり固めていく。武器はいつもギリギリまでもたないというこだわりがあるのでしばらくは持たない。ヘルムも頭がむれるので後回しにした。またこの大会の大きさに怖気かけている自分に気付いて、お守りを握って気持ちを落ち着ける。
お守りを握り締め、これから人生の転機を迎えるのだと自分に言い聞かす。まともな方法での大会参加ではないと思われようと、恥をさらすどころかこのチャンスを無駄にする気はなかった……再び部屋のドアがノックされた。
「何か伝え忘れたことでもありますか?」
しかし相手は遠慮なしにドアを開く。
「リオ、そんな余裕ぶって。もう諦めの境地にでも入ってんのか?」
入室者は良く過激発言をするが、勝ち組の大親友である。この彼は親のお陰で勝ち組名だけで、 主人公のような貧民街っ子と仲良くして何が悪いと考えている希少なタイプだ。
「信じられないぜ。お前の才能は感じていたさ。でもこの場にいるとはなぁ」
「いうなよ、自分でも場違いだとは……」
「だから来てやったのさ」
偉業を称えにきた(親友)マギーの何処にも身分証明カードが見当たらなかった。彼は上手くもぐりこんだんだと舌を出す。
「お前はBMSの他のやつらを驚かせる気だな。BMSにお前がいたから楽しく学べたよ」
彼のいう通り、BMSに入学してなかったらマギーのようなお金持ちとの出会いすらなかった。BMSは格闘世界チャンピオン、バトスターが創設したスクール。最初は外国の学校だったが、トッキーを気に入ったバトスターが二十年前からここを聖地とした。大会もその時から続いていて、BMSは格闘家候補の登竜門である。十才の時、リオはBMSから契約書類を渡された。
ダイアーには負けたものの、他の新人大会のセミプロ級で優勝~三位と好成績を上げた実績を評価されたのだ。BMSは九割の奨学金制度(無期限)を用意してまでリオの入学に好条件を提示した。リオは武術スクール生徒中から期待を背負わされているようなのでまずは重しにならないよう、重圧を感じないように考えることにする。
そんな時、マギーが控え室の感想をふってくれた。
「さすがは一流大会。周りの飾り付けからして成金の部屋みたいだ……何かおかしいか?」
「いや、考えることが似ているなと思って」