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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
57/88

決勝T1回戦 第5試合3~決勝T1回戦 第6試合 1

「予想以上の強者、では一気呵成に攻める……」

 独特のステップで走る剣菱。印を結ぶ動作をしているとはいえ、フェイクかもしれない。残像を見せるステップによる目の錯覚を利用した術めいたもの? と睦月は警戒を続けていたのだが……。

 睦月の考えが甘いと思わされる連撃。数人の幻どれもが本物かのように切り傷生傷を増やされていく。切り傷独特のジワジワズキズキした痛覚をいつまでもされていたら危険だ。防御している箇所を斬られる感覚が遅くなってきた、つまりは精神的に参らせようとしているのだろうか。彼はそんな中、驚きの行動に出た。

(上手くいくかどうかなんてわからない。このまま負けるのを待つ位ならやれるだけやってみよう)

 

 いいかげん相手《睦月》を痛ぶっているのはかわいそうだと剣菱がトドメの一撃をしようとした。しかし、手応えがない。どうやら周囲の熱温度を変化させて蜃気楼を作り出した可能性もある。蜃気楼を攻撃させて自分は回避したものだと思われる。四方から攻撃に出た剣菱は意表をつかれた形だ。その時、剣菱の4人影が重なってしまった瞬間を狙った睦月、ひと2人分程、円で囲むかのように火の魔法めいたものを発生させて攻撃。まともに食らった剣菱は膝を折る。


「拙者、未熟だった……。お主に敗北を認めよう。この位置からでは話し声は聞こえぬかもしれん。審判には反則負けと認識させよう……」

 剣菱が忍びの秘伝薬を使用し、煙玉を使って大勢の目をごまかしどこかに姿をくらませた。技の効果によってならともかく、アイテムを使って傷を回復させるのは反則負けの対象だ。この場から離脱していない忍者にセグの心証は良くない。


 対戦相手だった忍者さんの誤解を解くため、睦月がセグに伝える。

「いえ、反則負けなんかじゃないんです。彼はその前にギブアップ宣言をしたんですから」

「しかし、この目で黙って回復薬を口にしているのを見た訳だが?」

 睦月はその時起きていた事を順序立てて話す。

「攻撃を受けた、ギブアップ宣言をした、武術の達人を策略にハメる行動、煙玉で姿を消すという流れでした」

「なるほど。俺を騙す事で忍びの意地を見せたという訳か、すっかり騙されたな」

 セグがそう言って豪快に笑う。睦月は忍者さんの悪い評価がなくなったようだとホッとした。しかし、いくら忍びの薬とはいえ、全身やけどのような感覚を浴びた剣菱が治療に専念しなくて大丈夫だっただろうかと憂うのであった。


 ――その頃の剣菱


「実際身体には傷ひとつないのに火傷の痛みが残っているように感じる……。密書を届けたら幻の痛みが消えるまで養生するか」


                      ◇        ◇


 強い相手と戦って負けるかと思ったと考えながらも汗をぬぐっている睦月にセグが勝利宣言を出す。

「う~む。まっ、相手がギブアップ宣言してここから去っていった事実は変わらん。君は誇るべきだよ」

 セグの一言で睦月は前向きな気持ちになる。自分のいるべき場所に帰るまでは頑張ろうと思った。


                                           ◇          ◇         ◇


 試合を観客席で観ていた男女(実力はあるが、これといった特徴のない少年と態度と言葉遣いが乱暴な様子の少女)が次の行動に移る。

「次はユウちゃんの出番でしょ。負けるのは許さないわ」

「マリ姉、勘弁してよ。こんなに強い人ばかりいるんだよ!?」

 ここで自信をつけさせる言葉をかけるのが一般的ではないだろうか。しかし、マリナという女性は常識とは違うようだった。

「まっ、そうよね。ユウちゃん弱いから」

 少年の事を良く知っているから言えるともとれるが――

「それでもどうにかしろっていうんでしょ? マリ姉は絶対だから」


 少年ユウトの意識が変わった。実のところ、この少年は何度も危険な目に遭い、それらをかいくぐってきているのだ。

「当然よ! 元の世界に確実に戻れるってわかるまで退屈なんだからね」

 理由はさておき、後押しされたユウトが指定のコートへ向かう。見送りの彼女は応援席に戻っていった。

「第6試合目になったな。通常なら疲れている人も多いはずだが、どの戦闘も見応えがあって皆も興奮しているのがわかるぞ! 今日はこの試合含め、残り3試合。スリルある試合を期待しよう」


 格闘好きで全試合観戦したい一部の行動の時だけ席を離れるコア観客達はともかく、それ以外の多くの観客に向けて審判のセグが改めて報告する。

「試合が始まる10分前にコート内の観客席へいたら試合後まで離席をひかえて頂く。どうしようもない時は係員に言って先導してもらうように」

  格闘好きの集まる土地柄なのであまりそういう観客はいない。どちらかといえば、別の国から来た旅人のためのルールなのだろう。

「再確認させて頂いた。まもなく試合なのでBコートで楽しんでくれるように望むよ」


 選手用入場口からユウトが登場。外見の平凡さが逆に観客達の関心を引いたのか、彼を応援する多様ね年齢層の人達が増えていた。

 Bコートで試合開始を待つユウトは背後から不気味な眼光を感じて身震いした。彼がかつて戦った不命という戦闘を避けたいタイプの存在とどことなく似ている。相手をしたくないがくじ引きの結果だからどうしようもない。


 Bコートの中央でただずむゼロライフを見ていた観客達はどうしようもない恐怖を全身に浴びつつも目が離せずにいた。よそ見をしたら何かが終わる絶望感の様なものを生存本能が勝手に感じ取っているからである。ユウトもこんな化け物じみた相手にどうしろっていうんだと思いつつも何とか耐えていた。

「試合のシミュレーション装置はいつでも起動出来るわよ! インカムで起動依頼をちょうだい」

 ゼロライフの人をショック死させかねない凶悪な気配をねじふせるため、セグが動こうとした。理由は観客達に万が一の事が起きてからでは遅いから。だが、その前にゼロライフがその異様な雰囲気を作り出すのをやめる。まるでさっきまでのが悪夢だったかのように今の彼からは恐怖を司る気配を感じない。

「先程シミュレーション装置に不具合があったように、特殊ゴーグルのセーフティー機能も盤石じゃないかもしれんからな。ゼロライフ殿の機転に感謝させてもらおう。では両者、気持ちの準備は整ったか!? ではスタート」

コラボ協力感謝いたします。


星原ルナさん


http://ncode.syosetu.com/n1583w/ 弥生と夢石


http://ncode.syosetu.com/n6409w/ 弥生ともう一つの世界<こちらの方がコラボでお借りしているキャラクター登場回数多い>



夕凪(来進)さん


http://ncode.syosetu.com/n3410bl/ If start story (イフ・スタート・ストーリー) ~ボッチな問題児は異世界で大暴れするようですよ?~

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