決勝T1回戦 第5試合 2
アメルがルーラを優しく揺さぶってみた所、意識を取り戻した。彼は休んでいてねと言い残して外の景色を見る。すると、石造りの柱で建造された神殿の様なものやシスターがいる修道院があるのがわかった。
「ここってイタリアから東にある古代の国ギリシャかもしれないな。この場所なら船の修理に必要な部品とか調達出来そう」
「アメル、付近にいくつも島があったわ。予想通りここはギリシャじゃないかしら。聖ヨハネゆかりの地とか風車のある島が何故かわかるの」
船から降りてきて、海の方を眺めていたルーラが感じ取った事を伝えた。急に彼女が持つ石『ルラの石』がイタリア方面に光の道標を照らす。
「驚いた。だけどそれのおかげで今いる地点ががはっきりしたよ」
「アメル。一応『ウィズの石』で海中を進んで島の方へ行ってみる?」
「たまたま停留した国で観光って訳じゃないからね。また機会があったらにしよう。今回は船の修理だけで」
ギリシャの港から近くの店を順々に調べていく。しかし、あっちもこっちも臨時休業日になっていた。港の方には結構お店があるから賑わっていそうなのに閑散としているのが不思議だ。やっとの事で開いているお店を見つけたのだが、そこもシャッターを降ろそうとしていた。アメルが店の人に話を聞く。
「あの、すいません。船の修理をしたいので機械技師または鍛冶屋が開いていないか教えてほしんですけど」
「知らないのかい!? この国では今の時期、7割位の国民は格闘大会観戦に行っているんだよ。開いているお店は一部レストランとレジャー施設または宿泊施設位なもんなのさ」
この国の現在状況はわかった。格闘大会が終わらない限り通常営業に戻らないとの話なのでアメルはルーラにどうするか尋ねる。
「――という訳で数日後じゃないと船を修理出来ないらしいんだ。どうしようか?」
「軽食でも食べましょう。その後は修道院とかに行ってみたいけど誰も居ないかしら?」
聞いた後に予想を混じえて答えた。
「留守役はいるかもだけど。シスターさんや神父さんも格闘大会の医療班らしいから」
それを聞いたルーラが格闘大会見学を提案した。アメルは彼女がこういう場所は好きじゃなさそうだと思っていたので意外に思う。
「それなら格闘大会を見学しましょ? 人間以外の気配も感じるし気になるもの」
「ルーラが行こうというなら是非もないよ。思わぬ足止めになっちゃったけど楽しもう」
◇ ◇
そうして格闘大会見学中の今に至る。水エネルギーが必要と放送されているのを聞いたルーラが、アメルに力を貸せそうだと言う。
「あたし、困っているのを助けたいわ」
「人魚だって希少動物だと騒ぎにならないかな?」
「人間以外の種族がこれだけいるんだもの。平気よ」
2人は結局Cコートの舞台上に向かう事にする。観客席最前列で係員に水エネルギーの助力をしたいと伝えてゲストプレートを2枚もらった。
そして係員に誘導されて研究室に通されるとフラナから歓迎を受けた。
「あなたから相当量の水エネルギーを感じるわ。来てくれた事にまず感謝しよう」
「あたしは何をすれば良いですか?」
問いかけられると思っていなかったフラナだが、すぐ本題に入り、方法について語る。
「水の技を出せるとかじゃないのね……」
「はい。確かに私達の種族は水と切っても切れぬ関係ですけど」
フラナが水エネルギーの元は何か探してみた所、人魚の鱗のようなものが輝いた。
「見せてもらえるかしら、その輝いているものを。びっくりだわ、人間が人魚の鱗を所持しているなんて……」
「正確には私、半分人魚なんです。これを使ってみますね」
人魚の鱗を天に掲げ、
「海の神ネプチューンよ。我の願いを叶えたまえ。母なる海の水エネルギーを使わせて下さい」
ルーラの求めに応じるかのように鱗が光り輝く。研究室にあるシミュレーション装置のエネルギーが注入された。
「ルーラさん。そして海神様に大いなる水の力を分け与えて頂いた事に感謝を」
研究室の様子は観客席のモニターで確認出来るようにしてあった(水エネルギーの助力を頼んだシーンから)フラナの姿勢が謙虚で多くの者達がモニター越しに共感した。
「最新技術ゆえ、こうしたトラブルが起きると想定はしていた。だが、観客の方々に事前準備が足りないだけと思われるのもわかる。謝罪させていただくよ」
司会進行、審判役のセグが大会観衆達に言い訳するなとかのヤジを飛ばされる前から非を認めていた。
観客達がセグの進行ぶりに苦情などを言ったりする必要性を感じなくなっていく。その彼がコート内の2人にも語りかける。
「戦いというものはその瞬間から引き締めたりするものなのに気を削いでしまった、謝罪しよう。試合開始は君達がベストだと思う時にしたいので心構え十分なら戦闘の構えを頼んだ。俺は見ればわかるから」
睦月が集中して技の気がわかる感じのポーズをし、剣菱は有名忍道具を手にしてチャンスをうかがう体勢に入った。
「ここまで勝ち上がってきたお2人。時間をそこまで使わずともすぐに臨戦態勢に入れたと見える。さすがだ! では開始!!」
掛け声がしてすぐ、剣菱が動く。忍びの者と対決したらそちらに先手を取られて当然だ。睦月はそう考えて防御からスタートした。一方の剣菱、まずはてこ調べだといわんばかりに、急斜面にある滝の水を利用して水遁の術の応用形を繰り出す。剣菱が印を結ぶ動きに呼応するかのように水が細く鋭くなっていく。これはウォーターカッターと呼ばれているものだと睦月にはわかった。
「そのまま食らったら鋭い切り傷に苦しむ感覚に味わう。そんな訳にはいきません」
今のところ火種は不明だが、睦月が火を発生させ、それを水塊にぶつけた。水が次第に沸騰、蒸発していき水蒸気に変化。赤い火が200度または300度位になっているかもしれない。剣菱による火遁の術か何かの火玉も飛んできたが火の使い手である睦月には炎エネルギーにしかならなかった。少し考えればわかりそうな事を何故したのか? 疑問を感じた睦月は嫌な気配に支配される。
それはすぐにわかった。手裏剣《飛び道具》が追い風に乗って速く、刺さりそうだ。彼はどうにか回避したが、回避が遅れたため、服の脇腹付近を裂いた。
「こ……これか嫌な予感を感じたのは。防具をつけていない部分で危機一髪でした。ですがやられっぱなしじゃないですよ」
回避中に睦月は火を円盤状にしたものを数個ばかり剣菱に放っていた。それを良く確認して、余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》で躱したつもりの剣菱だったが忍び装束が少しずつ燃えていた、つまりは躱しきれていなかったという事であろう。剣菱は熱い感覚、火傷の恐れな感覚を感じていないかのごとくクールに対処する。地面をごろごろ転がって滝壺に落ちて服が燃える感覚をなくした。
コラボ協力感謝いたします
星原ルナさん
http://ncode.syosetu.com/n1583w/ 弥生と夢石
http://ncode.syosetu.com/n6409w/ 弥生ともう一つの世界<こちらの方がコラボでお借りしているキャラクター登場回数多い>
朧月夜さん
http://ncode.syosetu.com/n8600bh/ サファイア・ラグーン
↑の作品のキャラクター達をお借りしました。




