決勝T1回戦~続けて決勝T1回戦 第2試合目開始
言われた事で自分のやる戦術を明確にする事を決められたブレイン。槍使いの熟練者が取りそうな行動を考えるだけ考えて勝負に打って出る準備が完了したようである。
「わかりました。今の万全じゃない精神状態を加味しながらも、出せる力を出し切ります」
あえて何も持っていないかのようにブレインが突撃してくる。無謀にしか思えないどんな策があるか読めないものの、最良のタイミングで一撃をお見舞いすれば終わり。そのつもりの攻撃が防具による完全防御を受けた。
槍が跳ね返った反動でリオはバランスを崩す。それを絶好機と判断して特注の脇差から湾曲刀を出して振った。
「君に時間を与えるのは得策じゃないね。どうにか躱せたけどさ」
ひやひやものながらも、リオだって相手のしそうな行動で自分が不利になる確率のある反撃予想はついていた。だから回避出来たのであろう。それでも最後まで戦い抜くと決めたブレインの攻撃、リオは狭い牢獄内に合わせた短めの槍を回して弾き出した。
「槍で攻防両方やられるときついな。でも、まだ勝負がついていませんね、この一撃にすべてを賭けます」
2人は徐々に間合いを詰めていく。緊張感で張りつめられていく空気。お互い相手の出方をうかがってどんな一撃に勝負を賭けるのかわからない様にしていた。結局先に動いたのはリオ、相手のブレインはタイミング抜群な瞬間に袈裟斬りをお見舞いする。でも彼の考えは頭が回る分逆にバレやすいのだろう。リオの上手いフェイントに騙された形になる。本気で攻撃に向かう足さばきを見せつつも、ブレインが斬る動作を見せた所で足踏み・後退して楽々と回避した。
「特殊な状況下の中で良い試合になったよ、ありがとう。息苦しいし勝負をつけさせてもらうよ」
さすがに勢いをつけてその斬り方をした後、即座に防御を行うのは無理があったようである。しかもリオの槍による突きはスピードに乗っている。脇腹を刺された感覚を味わいながらブレインは倒れた。
「決着がついた。勝者はリオ!」
シミュレーション終了によってパトリオープンAコート中央で勝者宣言を受けるリオ、少し疲れたという事で控室に去っていった。敗者のブレインは救護グループによって救護室に連れて行かれる。ここでプログラムに書かれている救護情報を。万が一の何かに備えて救急病院の完備がある、用意周到のようだ。
◇ ◇
「なかなか話題性のある大会になりそうかな。観客達の反応も悪くなさそうだ」
セグが思った事を口にする。試合後約十分の準備時間を挟んで、次の試合を開始予定だとの説明をした所でフラナに話す順番をゆずった。
「少し安全のために調整していたから初戦には間に合わせられなかったわ。今、大会運営係員達から皆様に特殊ゴーグルが配られます」
大会のために雇った千人単位の係員達によって『特殊ゴーグル』が観客全員に渡された。それについても改めてフラナから説明が入る。
「そのゴーグルをかけた方々だけが仮想グロ映像が見れるわ。攻撃されたら体から血液が出て当然、むせ返るほどの血の匂いすらわかってしまう。そういう映像《生々しい姿》を見たい人達のみどうぞ。理由はどうあれ、一定以上興奮するとセーフティー機能が働くのは理解してちょうだい。最後に興味半分の使用は控えるようにと釘を刺しておくわね」
フラナによる特殊ゴーグルについての説明の時間も関係あると思われるが、あっという間に準備時間が終了した。2試合目の選手達がBコートに呼ばれる。
「僕の出番が来たみたい。それじゃあルーウィン、みんな行ってくるよ」
選手はVIP席と控室にモニターがあるものの、使う使わないは自由だ。だから連れとか仲間などが観客席などにいる選手は話すのも好きにして良いと決まっている。
「相手の暗器使いって曲者よ。あんたの鈍くささじゃ心配だわ」
フリッツと暗器使いハイドの2試合目、いま話をしているのはフリッツ一行である。武器を隠し持っている事自体が面倒だと伝えているようだった。
「本気で気をつけとけ。どこにどういう武器を隠し持っているかわかったもんじゃない」
ルーウィンとラクトスに簡単な相手じゃないと強調されているかのようでフリッツは不安な気持ちになる。
「あんたね、顔に出すぎ。あたしはテクノロジーとか良くわからないし、あまり信用してないけど……精神面で余裕を持たないと危険なんじゃない!?」
弱い部分を叩いて来ておいてルーウィンは何を言っているんだと思うフリッツだが口には出さない。口ゲンカになった場合、勝てる見込みがないからだ。
「まもなく2試合目が開始されます。観客の皆様も観客席でごゆっくり見学して下さい」
早めにBコートで待機しないと出場辞退だとか勘ぐられちゃうなと、フリッツは自分の性格を自覚しているので苦笑いしつつも戦いの地へ向かう。そこでティアラ達に声援を送られた。
「フリッツさん、ご無理だけはなさらないでくださいね。効果があるかはわかりませんが、やれるだけの事はやってみます」
「お前の気持ちはわからんでもないが、気持ちだけじゃどうにもならねえ事もあるぞ」
仲間達のアドバイスや声援を受けてフリッツがBコートの場外に立った。そこで暗器使いにぶつかられる。
「おっと、すまないな。ヘタレな外見の割にここまで来たのは褒めてやるよ」
抑揚のない声で性格に対する口撃をされたフリッツだが慣れっこである。むしろぶつかられた際に暗器使いの袖から鎖鎌や牛刀のような物などが見えたとすでに戦いにそなえているようであった。
「2試合目を始めるぞ。すぐステージ変更が始まるからそこで待っていてくれ」
ステージ変更
場所 Bコート 条件 濃霧
Bコートに濃い霧が充満していく。ステージ変更でこういう事もあり得ると観客用に観客席上段の正面と左右から大型スクリーンで応援出来るという代物が用意されていた。選手達は戦いづらいだろうなと予測出来る。
「ちょっとフリッツ、この不意打ちに適した環境でうかつに近づくんじゃないわよ」
その仲間の声が聞こえているかどうかわからないくらい、フリッツが神経を集中させている。もう相手に先制されるだろうと確定した今、どう対処して反撃に結びつけようとしているのか考えているようだった。戦いの際は気配のみを頼りにするしかない試合中の2人、どうやらさすがに呼吸音だけで狙いを定められなさそうだと判断したフリッツは深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「最高の条件がそろっているねえ。僕ちゃん、これから攻めるから楽しませてくれよ」
声を出すなんて居場所を知らせるものではないか? とフリッツは暗器使いハイドの考えが読めない。これは罠の可能性が高い気がするとカウンターの心構えを忘れなかった。先制攻撃を誘ったらしい暗器使いの舌打ちっぽい音が聞こえたかと思ったら鎖の金属音が耳に届く。フリッツは暗器使いがしそうな行動が脳裏に浮かんだので武器を逆の手に持ち替えた。
「おや、鎖に重みがない。気づいてしまったのか、しかし片手を鎖で縛る状態になった訳だ。どうしてやろうか?」
もっと複雑に鎖が絡みついていたら危なかったが、鎖に早めに気づいていたのでゆるゆるだ。鎖に早めに気づいたので一時的に剣で巻きつけて解き、斬り落とした。
「縛りが甘かったようだねえ。次はこいつでどうだい?」
しかし良くしゃべる相手だなと思った。その暗器使いはステージの特性を活かして針を投げつけてきた。フリッツは守りの体勢を思いついて体を丸める。この体勢ならば確実に防具で防げると踏んだからだ。結果的にフリッツの上半身があった場所を針が通過する。
「気配はわかって来たんだけど何て攻めづらい相手なんだろう。どこから攻撃しようとしてもカウンターを食らいそうだし」
コラボ協力に感謝♪
不揃いな勇者たち としよしさん
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