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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
49/88

パトリオープン決勝T 1回戦目開始

       ◇               ◇

 観客達がざわめき始めたのでリオは走り去っていった。

「まもなく第一試合目が開催されます。選手は準備を、観客の皆様は早めに席にご着席下さい」

 時間経過と共に観客達のボルテージがあがっていく。試合開始前に司会者とシミュレーション装置の開発者から挨拶があった(これを聞いていなかったとしても、途中入場者のために格闘プログラムに大体の事が掲載されてはいるが)


「俺が司会と審判をつとめるセイルグだ。セグと呼んでもらって構わん。俺から言いたい事はこれのみ! いないとは思うが、反則者がいたらこの腕でつまみだすからな!」

 セグが鍛えぬかれた二の腕を見せつけてクリーンな試合をと呼びかけた。その後で今大会の中枢になり得るシミュレーション装置開発者にバトンタッチする。

「格闘大会審査開発部局長のフラナよ。今大会の特徴についてお知らせするわね。シミュレーション装置によってステージをランダム選択になったのが一つ。後は選手の身体的ダメージはすべて精神的ダメージに変換する最新技術を採用したわ。でもダメージの感覚はあるから気をつけて!」

 もう一度確認(会場の電光掲示板に技術の説明が表示されている)



 シミュレーションによって草原の様な戦うのに最適な場所から、崖のような危険ステージがランダムで選択される。


 身体的ダメージが精神的ダメージに変換される(精神力の強さが鍵か?)


 武器使用制約がかけられる可能性あり(または武器が指定されるかも)



 選手達が特に心構えとして知らないといけない事。とはいっても、後は実戦時に即対応が求められる。


「理解出来ている選手も理解の追いつかない選手も後は実戦で学びな。選手一同、観戦はコロシアム選手用VIP席または控え室のモニターで見るというのも有りだ」


 まもなく第一試合開始時間になるとセグがリオとブレインをうながした。

「さて、使い慣れた獲物を用意したか!? 良さそうだな。フラナ、頼んだ」

 関係者用の通路の先にある一室(開発部)からフラナの返事が戻って来た。そこでステージ変換装置を起動させる。


ステージ変更


 場所 地下牢獄 条件 狭い牢屋の中 Aコート


 Aコートが殺風景で何もない牢屋に変化する。観客達からどよめきが聞こえてきた。つかみは上々のようだ。リオとブレイン、試合が始まった所でリオは今までの経験から距離を取って戦略を練ろうとしている。相手のブレインはどうすべきかを頭の回転を早めて作戦を考え始めた。

「ランダムステージの中では大当たりがあったかもしれないな。狭い地形では思うように長槍を使えないだろうし。相手の出方を待とう」

 ブレインの言う通り、リオもすぐ手を出せずにいた。今までの経験則からいくらか戦いの方法を思いつくが、リスクのあるものばかり。どうしたものかと考えている様子である。


「一番戦いやすい武器では厳しいかな? それでも様子見のためにいろいろと試してみるか」

 達人以上に値するリオの突きや、狭い場所でも動かせる角度からの攻撃にもブレインは回避で対処している。付け焼き刃の格闘能力程度では回避失敗したら大ダメージを食らいそうなものなのに。どうやらブレインは効率の良い鍛え方で並みの格闘家なんて相手にならないくらい、強者つわもの格闘家のレールに入っているようだ。

「危なかろうと当たらなければ問題なし。さて、どの武器で攻撃に転じるか」

 ブレインはリオの攻撃を彼の手や体の動きから先読みしてすべてをかわしきっている。相当な頭脳に相応な体つき、なかなかの難敵だと予想されている通りだった。


「チャンスをそちらへ渡すわけにはいかない。残念だけどそうはさせないよ」

 リオはブレインが攻撃に移らないよう動きを止める事にした。具体的にはブレインの装備服の布部分を投擲とうてき用の槍で牢獄の壁に刺すような形に。どれだけ槍に力を込めたのかわからないが、壁がひび割れるくらいだし、相当な力なのだろう。

「くそっ! このステージ自体が仮想空間だとしたら壁にはりつけ状態にされていないと認識するのも可能なはず!?」

 ブレインの考えはある意味では正しい。しかし、実際に磔にされて身動きが取れないという感覚が伝わってくるので難しいようだ。

「君に考える時間を与えるのは危険な気がする。悪いけど勝負をつけさせてもらうよ」

 リオが彼を倒すつもりで放った一撃。そのつもりだろうと誰の目にも写ったのだがリオにも考えがあるらしく、ブレインの首筋を傷つけただけだ。

「ぐっ……なるほど。精神的な負荷があるとはこういう事か」


 磔にされている事実、鋭い必殺の一撃をされかけた際の恐怖心、痛みが精神的ダメージにプラスされた。それらの複合要因からブレインは考えをまとめるのが困難になる。

「今のままじゃ勝てる要素がない。どうすれば……どうすれば良いか困った」

 ブレインが何も出来ずなすすべもなく敗れ去りそうだ。もっと武器と武器のぶつかりあいが好みの観客達からブーイングが。その観客達の文句に対応したつもりじゃないだろうが、リオはブレインの磔をなくした。

「さて、このまま勝つのは何か違う気がしたから。お互い可能性のある勝敗の付け方をしよう」


 リオはブレインが体勢を整えるまで待っている。しかも格闘経験を知識で埋めてもらおうと使う武器は一番手に馴染んだ武器だと明言して。勝利の可能性を与えられた形になるブレインだが、余裕のない状況に見える。

(……言葉通りに受け取っていいんだろうか? 戦術とかは評価されている気がするけど……。どこに変化を加えれば……勝機を上げられるのか)

 迷っているような素振り、それでは簡単に勝ってしまう――リオとしてはそんな勝負は望まないという事で。

「君が槍に対抗する武器。それから重い攻撃を出せると思う強力なやつを頼むよ。考えをシンプルに」



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