決勝Tがもうすぐ開始される
今一度くじを手でシャッフルしてから呼ばれたのは剣菱。忍者らしい速さでくじを選ぶまでを素早く終わらせた。
「9番……」
スリントックは逆側にいる大会スタッフに命じて書き込んでもらった。ちなみに眼帯少女ルーコが「ジャパニーズジョブ ニンジャ」と目を輝かせていたり。
そのルーコが次にくじを引く番だと言われたので少し反応が遅れた。別に急かしたりしないスリントックが待っている。キャラクターを演じているのかどうか不明だが、ルーコを見ているといちいち動作が大げさだ。くじを引いた後は渡すだけって所で「くっ、腕が疼く」とか言って引き直したりして何ともいえない。引いたくじはルーコ自ら番号発表。
「九尾の狐とケルベロス2頭を足した数字」
わかる人はわかる表現、スリントックは理解出来たので大会スタッフに15番を指さして伝える。
「私の番じゃないですか?」
呼ばれる前に来た空拳にスリントックがくじの入った箱を渡した。
「14番です。では」
くじ箱を返し、一礼して去る空拳。
続けてと声をかけられたメリアが気持ちの高揚からか小走りでそこまで行く。
(最初から勝てそうにない相手と当たりませんように)
誰が相手でも苦戦必死だろうと予想したメリアは勝てる可能性の高い人との対戦が良いとの希望を頭に思い浮かべながらくじを引いた。
「あっ、16番だ」
あの中二病な彼女が相手か~、くじ運に恵まれたかもと思った。だけど油断は禁物! 様子を見ようとしたら目が合う。その眼帯少女に嫌悪のこもった視線を向けられた気がしたので一度深呼吸後、改めて様子をうかがうとさっきの嫌な感情はぶつけられなかった。先程のは気のせいだったのだろうか?
「試合決定者……2組目か。次の者はユウトという人物だな、引くと良い」
何やら決意を固めた様子の少年がすぐクジを引き、決勝Tを待つ者達の集まる位置に戻る。
「11番、ゼロライフとの対戦だな……」
一癖も二癖もありそうな敵と戦ってばかりだなとユウトは一瞬疲れた表情を見せる。でも戦う理由があるんだと気を引き締めなおしていた。
「次の者は巨人族だな。彼専用の巨大BOXをここへ持ってきておけ……」
今まで選ばれたくじ番号が書かれた紙を廃棄後に巨大なくじBOXを床に置いた。
大きな図体で力強くやって来た巨人族が特製の厚紙で作られたくじを箱から出し、くじの番号を読み上げる。
「6番。正体を隠しているやつか、ならば衆人環視のコートで正体をさらしてやるぜ」
巨大ならではの重厚な声量。だが誰も気にしていなさそうだ。驚いた素振りを見せないようにしているだけかもしれないが。正体を暴く宣言をされた謎の人物はというと、どこ吹く風といった様子である。世迷い言だと思うくらい謎の人物は実力に自信を持っているのかもしれない。
「……続けよう。ブーメイ、ここまで来ること」
飛び道具を使うのに長けた20代前後の青年がくじを引いた。
「は……8番。くじ運の悪さを呪いたい。全力を尽くすが非常に厳しいぞ」
くじを引く者が少なくなれば自然と対戦カードが決まりやすくなる。ファーディの方を向いたブーメイは相手が悪すぎだろとがっかりする。
「期待されている本命の番になった。リオ、出番だ」
王者の地位に最も近い男として注目を浴びているリオ。どんな場面だろうと勝ち進むだけだと思っていた。
「初戦ですよ。だけど相手はまだ不在か、意外だな。1番にマークを」
リオの言葉通り、まだ対戦相手が決まっていない。つまりは残り3名のうちの誰かということになる。
「残りの出場者も少なくなってきた……次はあすかという女性出場者が引いてくれ」
そういう性格なのか何なのか、あすかは事務的にくじを引いて手渡し、待機位置に戻っていった。
「……13番。空拳と勝負」
あすかは対戦相手に決まった者を数秒見て、興味をなくしたかのようにレーザー銃の整備に移った。今の所、マフィアがいるという情報はない。勝負より意識は別のところにあるようだ。
「ブレイン……待たせたな」
呼ばれるとわかっていたブレインがすでにくじ箱から番号が書かれた用紙を引こうとしている。その彼が対戦相手を予測した。
「前評判の高いリオさんと当たる予感がする。さて、どっちだか!?」
残り2名という訳で1番又は10番のどちらかに決まっている。くじを手渡したブレインはその場で第一試合なんだろうか第五試合なんだろうかとどうなるといった心境で読み上げを待った。
「……うん。1番が当たったようだな……」
ブレインは予想が当たってしまったなと、早速リオとの対戦について思考を巡らせていた。先ほどの予感が的中してしまった事になる。確率論だなんて言われたらそれまでだが。
「という訳で……海の男は10番になるな」
予選では目立っていなかった(実は一瞬で対戦相手を倒していたっぽい?)海の男。海の男なんて登録名からして屈強で豪快なおっさんがイメージされる。前までの大会出場でいた人物は印象通りな奴らが多かった。しかし、今回は違う。外見は10代半ばで、性格は今の所つかみきれない。その彼、武器については予選で触れなかったが、燃えるような剣の形が見えたので『剣』なのだろう。しかし、その武器はどこへいったのか? 魔法のように具現化とかそういうものなのか!? 何にせよ、第五試合で判明するはずだ。
「忍者が相手か。勝てるかな」
この少年、体格も同年代の標準くらいで腕っ節の強いケンカ慣れしているといったくらいだろうか。やはり特殊能力を上手く使っているのだろうと思われる。
◇ ◇ ◇
決勝Tの1回戦は8試合開催される。1回戦は1日がかりになりそうだ。10時から17時(延長可能性あり)といったところ。注目カードは初戦、王者候補のリオとダークホースのブレインだろうか。初戦というのは仮に別の者だったとしても興味を持たれていただろうが、偶然にも注目度の高い者同士の対戦となった。期待がかかる。曲者ばかりの決勝T1回戦、どの試合にも見せ場はありそうか!? 全部気にして欲しいというのが車載車の本音だろうけど、あえて他に2試合くらいだけ注目カードを挙げるとすれば、いつ途方も無い冒険をこなしてきたんだという普通の少年にしか見えない者と相手の身体や神経をがりがり削りそうな怪しい男という決戦。それに眼帯はただの作り物っぽい個性的な少女と、相手の力を上手くいなしたりかわしたりしている身軽な少女という対戦も気になるところだ。
決勝Tの時間が近づくにつれ、決勝T出場選手の一部が観客に自ら接したり、偶然何かを手助けしていたりしている。
「ね~、こたろーちゃん。こんな所に連れてきてどうするつもり?」
「気に入らなかった!? 博物館とか城跡が好きだからこういう場所もありかなと思ったんだけど」
兄妹なのか、彼氏彼女だか不明だけど文句を言って軽い怒りを発散させている和服の似合いそうな少女。相手はTシャツジーンズのラフ系ファッションのお兄さん。お兄さんが彼女(?)を妹でも見ているような眼差しをしているが――
「おや、麗しい美少女ですね。あまりここにいる事自体乗り気では無さそうですが。もし良ければ僕を応援してくれませんか?」
たまたま格闘大会に来たと思われる男女へせっかくだから観戦していっては? と誘っているというのなら聞こえは良い。しかしそうではない。ブーメイ、彼は前回大会からプレイボーイなのだ。可愛い女の子や美人に声をかける彼は厄介な事に美形なハンサムなのでファンになる女性が多いとか。男側からすれば迷惑な存在なので口を挟みたくなるのも特徴。
う~ん、キリがよくない(;´д`)トホホ…
コラボ協力に感謝^^
if start story 夕凪さん
レーザー銃 あすかさん
きっと、それは 篠宮楓さん http://ncode.syosetu.com/n1604t/
幼馴染と図書室 篠宮楓さん http://ncode.syosetu.com/n4863y/ <ただいま検索除外中らしいです>




