予選トーナメントと決勝T出場者の意気込み
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予選トーナメントは4つのグループに散らばった。ちょうど100人エントリーがあったそうなので1つのグループは25人。その25人中の4人だけが本選へという狭き門、トーナメント中に最新技術のシミュレーションで強いダメージを受けて脱落するものも結構いそうだと予想される。
グループはA/B/C/Dグループと名付けられていた。1つのグループには何名かその主役グループが出てきつつある。大会審判がしっかりと目を光らせているので反則防止になっているみたいだ。
Aグループはファーディと実力は高そうながら命をかけるような修羅場では気後れしそうな未知数の少年が中心。主役達の戦いに巻き込まれて敗退する参加者とか勝負所を誤って倒される参加者、中には様子見している参加者もいたりして。様子をうかがっている参加者は鉄仮面という異形ないでたちながら、かなり戦局を知っていそうだ。
Bグループにはユニークな武器・暗器・特殊な職業の選手が数多く割り振られていた。予選からそういう風に特殊武器の使い手達はばらけさせよと大会審判達に指示を伝えられていたはず。だが、どこかで伝言が途切れてしまったのだろう。派手さではいろんな武器を服や靴に至るまで隠し持っていた暗器使いが注目されているものの、向かってくる者を最低限の音で倒しているのは隠密に長けた服装の忍ぶ者。このグループを抜ける1人は相手を多く気絶などで倒している職業の方ではないだろうか。
Cグループはメリアと、見た目が普通で特筆する力が今の段階ではわからない少年がいる。バトルロイヤルが開始されてすぐ観客達の考えが変わった。弱い者がこの大会に参加する訳がない。だけどライバルを一人でも減らすのに手頃な的だと思われたのであろう、25人中半数以上の16人が少年を潰しにかかる。その多勢に無勢状態の中で少年は落ち着いているままだった。手にはめた指輪から武器を具現化、一番最初に片手剣で斬りつけてきた相手の斬撃はトンファーをつなぐ強化金属の鎖で受け止めて、反撃でトンファーをボディに叩きこむ。
そのトンファーに勢いをつけた事を利用して振り回し、近くにいた奴らを4~5人のした。
標的を別の奴にする参加者達の中で、まだ何名かこの少年の強さはマグレだろうと決めつけている数名が隙をうかがっていて――――――――――
まだ向かってくる者がいると気付いた少年が指輪を光らせて武器をトンファーから棍に変える。そのまま棍のリーチを活用すべく跳躍して自分を狙う相手を倒そうとした。だが、その棍は巨人族の巨大な体躯にめりこんだ。棍がめりこんだと思ったのだが、巨人族の筋肉に跳ね返されてしまう。結果的に反動でくるくる回って予選参加者の群れに激突した。
このグループは実力未知数の少年に、人間を道にある障害物としか考えていない巨人族、それから向かって来る者の武器筋を良く見て避けたり勢いを殺したりシて何人かを確実に倒していたメリアが目立っていた。ちなみに予選通過予想のもう一人は混戦のためしばらく決まりそうにない。
最後のDグループ。ここはリオの独壇場なのかと思いきや、もう1人目立つ存在がいた。近代武器レーザー銃を自分の手足の如く自由に操る女性が自分に向かってこようとしている相手を気配から察して次々と撃ち倒していく。本戦で当たった時は別だが、リオは今、彼女と戦うべきではないと判断して距離を取った。
それ幸いとばかりに格闘戦にそこそこ自信のある者達がリオを取り囲んだ。この包囲網の中で我こそがという数名が入れ替わりたちかわり彼に襲いかかる。それをリオは自らの獲物である長槍で受け、いなし、弾き返す。攻撃と攻撃の間に何人かが入れかわぅている以上何秒か余裕がある。どちらかといえばある程度の実力者が結託して同じようなタイミングで攻撃して来る方が厄介なのだ。タイムラグがあるおかげでいつも以上に格闘王者候補のリオは落ち着けた。長槍を振り回す、叩く、突くをベストのタイミングで行って相手を次々と予選落ちにしていった。
包囲網の参加者達がざわめく。それでも十名くらいいればリオを蹴落とせるだろうとDグループ参加者達の1グループが潰そうと狙ってきた。
「払力槍」
リオもこういう潰しがあるかもしれないと想定していた。向かって来る参加者が図らずもほぼ同列に位置した瞬間、長槍のリーチを最大限に活かして読んで字のごとく全員を薙ぎ払う。
その圧倒的な力を見せられてはもうリオに向かっていくものはいない。勝てるかもしれない相手の方へ向かっていった。
最終的に残ったのはリオとレーザー銃の女性、この予選会場のシミュレーション(ちなみに岩石落下などがある岩石ステージ)を読んだ頭脳派の中性的な外見の人物。そんな外見なので性別は不明である。残りの一人は海の男といったいでたちだった。この4人が本戦出場を決める。
本戦出場決定(資料を確認して)
エントリー用紙にはどれくらいの情報を書くか名前など最低限の情報以外、任意なので決まっていない。だから不明の部分もあり得る。
名前 所属または肩書(出場歴) 武器
ファーディ 格闘王者 片手剣
フリッツ 今大会初出場 片手剣
謎の人物 出場経験あり 斧
ゼロライフ 不明 鎌
暗器使いハイド 前大会から連続参加 暗器
忍者 剣菱 3大会連続 忍具、忍者刀
眼帯少女ルーコ 格闘スクール在学 刀
空拳 不明 肉体
メリア 初出場(格闘スクール) レイピア
ユウト 今大会初出場 指輪から召喚
デカック(?) もしまだ出場しているなら。でも年齢が若い??
ブーメイ 前大会に続いて ブーメラン
リオ 格闘王者候補(格闘スクール教官) 槍
あすか 今大会初出場 レーザー銃
ブレイン 今大会初出場 何でも装備可能(重装備は不可)
海の男(エントリー名によると) 5大会前くらいから実力者が参加しに来る。出場者は毎回違うようだ
予選トーナメント終了により、100人いた参加者が1グループ4名=4グループなので16名まで大幅減少。たった16名、精鋭揃いである。順当に勝ち進んでいるものも多いが、他国(他世界?)から初登場の出場者が結構いるのが特徴的だ。見どころは格闘スクール関係、教官と生徒だけじゃなくなったということ。伝統の格闘大会ルール変更時に面白そうな試合が組めそうという事実からバトメットが破顔する。
「こいつは多種多様な者達が残ったもんだ! どの試合も手に汗握る戦いになるかもしれん。一部は別かもしれんがそれはそれで仕方がない。さて、本戦の試合準備まで待機していて欲しい。全員の健闘を祈る」
そんなに待機時間は長くなさそうではある。なので大体の予選通過者達は精神集中したりして来たる戦いに備えている。もちろん顔見知りとかの間柄なら挨拶する参加者同士もいたりする、でも今は積もる話をするくらい取って貰えなさそうだしといった感じに去っていった。
ちょうど空き時間になった今のような時にこそ『バトル・スタッツ』などのマスコミにはチャンスとなる。お目当ては格闘王者候補と異国からの初出場者達だ。質問内容は「格闘チャンピオンになる以外の目的はあるか?」「この国について」関連という予定である。初参加の出場者達の口から何が聞けるか興味が尽きない。
記者としても優秀なトレバトはどうにかいろんな方法で全参加選手と接触する。
まず選手控え室から姿を現したのが任務の際などに着用する黒装束といったいでたちの忍び、剣菱。彼は頭巾などをかぶって素顔を晒さないようにしていた。
「すぐ質問させていただきます。格闘チャンピオンになる以外の目的はありますか?」
「極秘任務ゆえ内容は話せぬ。あるなしでいえば『ある』だな」
忍の者があると公言して良いのかという疑問はあるが、問題ないと判断しての事なのだろうとトレバトはスルーする。
「この国または大会について何か」
「我らのような者が暗躍しなくて良い国になると良いですね」
「ありがとうございました」
次に選手控え室にやって来たのは全身から 知性が滲み出て来ている学者のような人物。職業柄腕っ節の弱そうなイメージがあるのだが、彼は結構良い体格をしている。戦いの作戦組み立てによる効率的な動きを出来るまで鍛えている様子だしダークホース的な人物になるかもしれない。
トレバトが彼に問いかけるよう質問する。
「あなたは格闘チャンピオンになったら何をしますか?」
「予算の使い方に無駄があるのでそれを見直します」
どうやらもう少しばかり詳しく聞いたところ、この国で最高のエンタメイベントにはメスを入れてもっと魅力的な大会に出来るという自信があるらしい。
「国についての質問とかありますか?」
少し考える素振りをしてからブレインが問いかけた。
「質問じゃないけど、貧富の差が無くなってきている実感があるかどうか解答を求めます」
一般的な国民の意見は様々あるので、トレバトは個人的見解を話す事にした。
「私個人の意見で良いのなら。十年前は貧民の扱いが人権無しも同然だった覚えがあります。その時代に頭角を現したのがリオさんですが。それはそうとそういう点で言えばマシになって
います。しかし、まだ差別は残ってしまっていますよね。貧民街がなくならない限り」
貴重な情報を聞いたとばかりにブレインがうなずく。
「僕が国に必要な人材だと認められれば。国に関わる仕事に協力できる機会があれば最善を尽くします」
この学者風の青年、ブレインがそんな遠くない未来に国のためになる権利条約を制定可能な地位にいる事になるが、それはまた別のお話。
三番目に選手控え室から出てきたのは異国か異世界かまだ不明の出場者、フリッツという少年。腕っ節を磨いてきた者の持つ体つきをしている彼をトレバトはマークする事にした。
「格闘大会の出場目的は?」
「信じられないでしょうけど僕らのいた世界の北大陸に『幻の洞穴という場所を見つけて。そこに力試しのつもりで入ったら何故かここに」
その話を聞いて、バトメット達が異世界に転送装置を設置したという噂は本当だったんだなと思った。その技術班の長はフラナらしい。彼女の謎な部分が増えた。
「あまり驚かないんですね?」
「私達の世界の超科学専門家が起こした事ですから。にわかには信じがたいですが、あなたがこの場にいるという事実が時空を超越可能な装置を作った証拠ですよ。大会終了後までには元の世界に戻してもらえるはずですよ。確実に戻る調整中だとか」
トレバトから自分達の世界に帰してもらう準備中だと聞いてフリッツの困惑は減った。その分、実力も発揮出来るはずである。帰れるという話は朗報だが、まだルーウィン達には黙っていようと思った。確実な情報じゃないと安心出来ないのではと思ったからである。ティアラならホッとしてくれそうだが、ラクトスとルーウィンには嘘かもしれないだろなどと怒られそうだって予想してしまったからでもある。何にせよ参加する以上試合にベストを尽くすつもりではあるのだが。
選手控え室から出てきた四番目は目つきの良くない鋭い眼光が特徴的なゼロライフという者。トレバトは今まで様々な格闘家を見てきている経験から、彼に異質なものを感じて恐怖心を覚えた。それでもプロ根性で質問を始める。
「格闘チャンピオンを目指していますか?」
否定の意味で首を振るゼロライフ、必要最小限なことのみ答えた。
「俺はただ……戦いたい」
「えっと、続けてこの国について」
「この国がこういう歴史を歩んできていなければこの大会もなかった……戦える場があるのはありがたい」
お礼を述べてコートへ本大会参加者抽選に向かうゼロライフを見送った。それから数分誰も来ないので待機する。眼光の鋭さで誤解されるタイプなんだなと思った。
コラボ協力ありがとうございます!
これから先も文章確認などお願いしたりするので遅くなるかもしれません……今回はいつもより文字数多めにしました。いかがでしたでしょうか?
※協力ユーザー様
不揃いな勇者たち としよしさん
レーザー銃を持つ少女 あすかさん
if start story ~ボッチな問題児は異世界で大暴れするようですよ?~ 夕凪さん
感謝しております^^




