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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
伝統の格闘大会 教官と生徒 そして格闘を通して多くの出会い
42/88

まもなく新ルール導入の格闘大会の日だ

  歴史ある格闘大会に新ルールが導入されたとか男女混合なんて――噂レベルでいろんな情報がウソとホント両方混ざっていろんなメディアから発信されていた。当然『格闘総合審査会』の一員でもあるリオには裏情報が伝えられる機会が多いものの格闘スクールの生徒にもらしたりしない。フェアじゃなくなってしまうからだ。プロの格闘家への登竜門(活躍次第で格闘関係の仕事につける可能性あり)の大会まで残りわずか。実戦形式で積んだ武器使用の際=技使用の際に生じる弱点を気づかせないようにする戦い方などをリオとパトリオープン参加予定生徒達で最終確認した。


 もちろん実践出来なければ話にならない、それは隠しようのない事実といえる。ただ戦術を知識として頭だけでなく体に染み込ませるようにしていけばいざという場面でもっとも効率の良い勝ち方や更には実力差をくつがえしかねない意表をついた戦い方が出来るようになるはずだ。この格闘スクールの彼または彼女らがどこまで勝利を望めるのか、どんな相手が出場するのか気になるのかと思う。


――注目していきたい


      ◇         ◇        ◇                  

 メリアは誰よりも実戦を願い出て、勝つ余韻を味わったり負けた理由を分析してどうにか少し実力差が上の相手にも引き分けに持ち込むまでの駆け引きがうまくなっていた。勝てそうに

ない大きな目標の人物にヒヤリを感じさせる動きも随所に。後は格闘スタイルでどこまで上へと登れのか彼女にとって目指すのはいつでも一歩先である。例として3位から2位に上がる

過程に何かを得るまたはつかむまで満足しないタイプなのであった。そういうタイプだと考えると1位になった時にはそれまでと違う強さを身につけている可能性がある。ならば大きく化けるかもしれない。


 そのように実戦形式を積んで他の好敵手と一緒に戦術確認したメリアは(メリアだけじゃなくてこの国の祝日だが)由緒あるパトリオープン前日の完全休養日に家の部屋でゆっくり体を休めていた。

(わかっていた事だけど生傷が絶えないのよね。治ったと思えば別の場所を……)

 メリアも格闘スクールの生徒である以上、メリアも他の生徒と同じく怪我がつきもので当然とは思っている。だけどそこは女の子な側面、防具をつけていない箇所に痛々しい傷が出来てしまったので消毒薬で治そうと試みていた。

「恥ずかしいけどさっき出来た傷はバラを触ってしまったから。刺が……」

 格闘の修行を学校で教わっていた際の怪我ならまだ良い。時と場合によっては体に残っても名誉と思うかもしれないので。だがこんな不注意で傷を負うのは恥ずかしい。このメリアの家にあるバラ、高級バラだったりする。メリアの家庭で買えるはずない高級バラがある理由は――


 歩み寄りたい、だけど負い目があるしとウロウロしているコルトを中立通りから貧民街に向かう道で発見した時にぶっきらぼうな態度で渡されたから。メリアに渡した彼女はその後

の事を考えていなかったらしく走り去ったとか。


 その高級な赤いバラの花びらにメリアの血が垂れた。赤みが増した気がする、さすがに気のせいだろうけど。ホラー映画とかじゃあるまいしとくだらない考えだと自分の考えに苦笑しつつ花びんにさした。

「メリア、いらっしゃい。良いものがあるから」

 母親に呼びかけられたので、心配をかけないようにと軽量の全身レザーアーマーを身につけて肌を隠す。そして母親の部屋に入る前にひと声かけて返事をもらい、入室する。


「お待たせ~。呼んだよね?」

 仕事場用のエプロンから家庭用エプロンに着用し直したメリアの母親が返事をする。

「ええ。呼んだわよ。仕事場のクリーニング店できれいにしたよそ行きのドレスをあげるためにね」

 メリアが遠慮がちに目を伏せているのを見て

「私の大切にしていたドレスでしょって? 心配しなくても着れなく……じゃなくて私の体型に合わなくなっただけだから」

 毎日家で顔を合わせているのでメリアにはわかる。体型なんてスタイルに気を遣っている母親が良いプロポーション維持に努力している姿を見ているのに……と嘘の下手な母親に心中で感謝した。


「それと、あんた何でそんな格好してんの? 家だよここは」

 当たり前のことながら全身レザーアーマーはおかしいと思われてしまったようだ。メリアが適当な理由をでっちあげて話すと彼女の母親は納得したようである。

「イメージトレーニングするには形から入らないと。木の引き締まり具合が違うの」

「へーっ、そんなものなのね」

いろいろとメリアのやりたい事、やり残しがないようにと自分の部屋で万全の準備を整えつつある。昨日あれをやっていればなんて後悔しないように。肉体面だけでなく精神面もベストの状態に持って行こうとしていく内に夜の夕食タイムになっていた。

「残り物とか関係なくしっかり食べないとね」

 自分の部屋から台所へ行ったメリアはいつもならまだ仕事中なはずの父親がいた事とひき肉入りの豆腐ハンバーグが食卓にあったのに驚く。


「おうっ! メリア。俺ら肉体労働者も格闘大会を見たいからな。早上がりが続くだろうよ」

 普段はメリアがしている料理を今日は母親が作ってくれているようだ。豆腐ハンバーグだけじゃなく他にも鶏がらスープ味の卵ともやしを作ってくれていた。

「これから私が何か作らなきゃって思っていたんだけどね」

「良いのよ。メリアは格闘大会を見据えていれば」

 家庭料理を仕事の影響でなかなか作れずにいた母親が作ってくれたメニュー。メニューは久しぶりのおふくろの味かのようでモチベーションが更に上がった。


 そして格闘大会開始日になった。いつもなら仕事に出かけている父親が食卓で新聞を読んでいるので聞く。

「仕事の時間は大丈夫なの?」

「まあな! そろそろ出かけるがしっかり飯を食ってからいくさ」

 疲れているはずなのに今日の朝食まで昨日の内に作ってくれていた(ちなみにご飯としめじの味噌汁。おかずは焼き鮭)母親に感謝して汁物で口を湿らす。それから温め直した焼き魚を父親の前にも置いて食事を共にした。

「そうだそうだ、母さんは本選まで勝ち進む事を期待していたぞ。この新聞によると『予選トーナメント』があって……途中から応援席で声援送れそうだからな」

 

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