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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
格闘スクール教官編
40/88

格闘大会に最新技術の可否

      ◇         ◇         ◇

 ホログラムデータだけでは格闘スクールのコンピューターで試してみてもリオについてのいろんな資料などを調べればわかる程度の詳細がわかるくらいだった。これでは実験も何もないのだが――

これはファーディまたは、それよりもバトメットに連絡した方がいいのか? とリオが疑問を覚えたその日に大きな機材が運ばれてくる。

「リオ先生、バトメットさんからです」

 メッレン理事長に手渡された手紙を読んでみると謝罪の言葉などがつづられていた。

<先に詳細データだけを渡されて何も出来ずにいた可能性があるので非礼を詫びよう。君たちの属する場所の1部屋をコンピューター室として専用の部屋にしてもらいたい>

 ファーディはファーディできっと属している場所の1部屋でホログラムとの対戦をしているんだろうなと思った。メッレン格闘スクール《ここ》では理事長に話が通り済みだったのだろう、すでに視聴覚室をコンピューター室にしてもらう前提があったのだろうと思われる準備がなされていた。どうでも良い事だが、放課後は離れのここ《この階》を部室としてしばらく使用出来ないように全校生徒に通達されていたそうである。


「やっぱり考えるよりやってみないとどこをどうするか見えてこないよな」

 即行動で思考は後回しなのがリオのタイプのようだ。早速コンピューターにホログラムデータを挿入準備してから起動した。


ホログラムデータ挿入 ホログラムデータ起動 展開中 30%

                           

                          55%


           ホログラムデータ       起動完了


「どれどれ。えっと、場所の選択に条件の選択……そこへ自分の強さを計る影を投影するかどうかまで選べるのか。試してみよう!」


 場所 メッレン武術スクール中庭 条件 雨 槍の特訓 影の投影なし(OFF)


 手始めに現在地の別の場所にいる感覚が味わえるかどうかを確かめる。コンピューターに表示されている文字列に従ってリオはクリックボタンを押していった。すると、大掛かりな事に雨で濡れる感触、冷たさまで体感出来た。そんな最新鋭のホログラムデータ装置に驚かされる。

「これはすごいな! 視聴覚室の広さより広いはずの中庭にいるようだと違和感なく思う。雨の中での槍動作を確認してみようか」


 雨雲がかかってすぐに降ってきそうな雲行きの再現。そして予想以上に強くずぶ濡れになりそうな大雨。そんな天候の中でも汗で手が滑らないように気をつけながら、体力ギリギリまで自主トレに励んだ。


雨の日――


 雨が降り始めて瞬く間にどしゃ降りに変わる。こういう日を実はリオ自身、待っていたのだ。どんな天気でも地面でも対応できるようにしたいので濡れても平気な服装で(ちなみに雨を含んで重くなる防具は選ばないように気をつけた。鉄なら雨粒を弾くかなと思ったりして。その判断が正しいかどうかの真偽は別問題)


 足を踏ん張って長槍で払ったり『突き』を繰り出したりしている。しかし、ぬかるんだ地面ではいくら足を踏ん張る努力をしていても滑ってしまうことがあるものだ。滑ったので体のバランスを崩してしまった。とっさに長槍を地面に突き刺して転ぶのを回避しようとしたが失敗した。しかも運の悪いことに長槍が手から離れて上空へ飛んでしまっていたのである。その長槍がリオの肩より肺に近い場所に重力の働くまま落ちてくる。


 まずは骨を痛める可能性があろうと、命の危機よりはマシなので背中を向けて肩に当たるように調節しかけた。その前に自然と手が動く。神がかり的な瞬間動作と共に、リオは長槍を右手で掴んでいた。ぬかるみでの修行では竹槍を使うなど安全対策をしないと危険と認識した瞬間であった。


「ホログラムデータ活用のためにはもっと他にも試さないと」

 そうつぶやいてまだ心臓の鼓動が早いけど平静を装っているリオが他の場所と条件、影の投影を設定した。


場所 砂漠(砂嵐、アリ地獄注意) 条件 快晴 影の投影 許可(ON)


 砂漠のうだるような暑さ、遠くには流砂があったり毒サソリと思われる生物が砂漠の中に潜りこんでいる所が見えたから本物の砂漠に近そうだ。自分の影はデータだからかいやらしい攻め方をしてくる。攻めに転じるのがなかなかうまくいかないが、どうも危険ゾーンに足を運び込まされている気がしてならない。最初の内はラクダとかまでホログラムデータで再現しているのかと目で追いながら防御という微妙な余裕はあった。だが紙一重で防御という状況にまで追い込まれるとは……。やばい状況に更なる危機と思える砂嵐。そこに連れて行かれてなるものかという足さばきをリオは無意識で行う。そこへ自分のホログラムによる長槍の特徴を活かした必中の技、今の時点ではリオがまだ未熟なので覚えていない長槍の一撃を見舞われた。命の危機だ!

(シミュレーションだから死んだりしないだろうけど、負けるって事が嫌だしな。実験でも自らの身を危険に晒すのはしたくない……でも極限状態の経験回数が多ければ――難しいところだ)

 

今回はこれくらいでいいかと考えてシミュレーション空間の外にでる。それだけで終了、危なかったという状況は体が覚えているので全身から汗が吹き出た。落ち着くまで待って職員専用のシャワールームへと向かう。

 その後はバトメットにデータ使用の有益性などをレポートにまとめて提出するよう言われていたのだ。レポート形式に則ってまずこのような危険性などはあり得ると前置きのように書いて良い点を中心に書いてFAXで送っておいた。


          ◇             ◇

 どうやらファーディもホログラムの良い効力を中心にバトメットへ資料を直接渡しに行ったらしく、格闘王はパトリオープンにシミュレーション採用を決定したようである。いろいろ手続きもあってリオが格闘スクールの教官になって約半年、『パトリオープン』の開催が近づいてきた。今は9月中旬、残り約1ヶ月で参加予定者達は鍛錬に励んでいる事だろう。

「パトリオープン参加予定者にシミュレーション装置を貸しに来たぞ。申請済みなのが男女1名ずつで締め切りの1週間以内に事前申請するかどうか決める者が数名。とりあえず3台ほど貸出で良いな?」




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