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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
リオが大会に出るまで
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ラウンド0 Ⅳ

 そのお守りをファーディがリオの手に置く。彼が聞いてもいないのにご利益バッチリだと教えてくれた。リオはお守りを握って確証がなくとも効果があると感じる。

「そのお守りで俺も幸せになれた。欲しいのならやるよ」

 リオは嬉しい反面、どうして出会って間もない自分にと疑問が湧き出してきた。

「俺は貧民だと馬鹿にした野郎どもに思い知らせてやる。今年で十八だからやっとプロになれるしな」

 リオがファーディを見てみると、凶暴さを秘めてはいるが、人懐っこいのに自分と似た境遇を味わってきた感じを受ける。

「いいから受け取れよ。やるって」


 リオはファーディに改めてお守りを手渡されたので笑顔でお礼をした。

「ありがとー、兄ちゃん」

 彼が照れくさそうにリオの髪を乱してくる。それでも彼の好意を感じて嬉しかった。彼が別れの前にお守りの願望成就のコツを語る。

「しょぼくれるくらいなら前向きな行動を取れよ。意気地なしだと効果が減るぜ」

「僕、どんな理不尽でも良い方に考えることにするよ」

 お守りの効果が気分の上でも効くことを期待するように言葉を出す。


「暗くなっちまったな。心配させる前に帰ったほうがいいぜ」

 もう月や星空が見え始めていた。貧民街の住人は無気力者とむくわれない者が大半であるが、なかには変な人がいるのでファーディに同伴を願い出た。

「一緒に帰ってくれない? 三番街まで」

「へーっ、マシな方だろ」

「あそこが? 修復跡がありまくりの家が多い一帯なんだけど」

「いいさ。三番街も通るから。俺の帰る場所はそれより先だしな」


 リオはファーディの親切には感謝する。でも負けたことは忘れないと心に刻んでいた。

(今度は負けない。もっと強くなってやる)

 早速お守りに願掛けをする。リオはお守りに願望をこめて決意を新たにしていた。三番街でファーディと別れた。リオは三番街から家が近い。問題なく帰宅できた。家でお母さんに特徴を含めてファーディのことを聞いてみる。すると、それらしき人物が貧民街十五番街にいるかもということだ。別人だと考えたかったリオの思いもむなしく、ヤミ金・裏商売(殺人依頼・臓器や女子ども売買)を生業なりわいとしている十五番街の住民だと知った。彼の苦労を考えて同情する。しかし、そんな考えは意味がないのでやめた。



 一ヶ月後のある日、リオは父親の読みかけの新聞スポート・スタッツの見出し記事の『パトリオープン=四大格闘大会の一つ。それに無名武術スクールの一選手が優勝という記事に興味を持つ。

『安っぽい装備のやつが優勝!?』

 新聞記者が書いた記事は悪口ばかりで勝利したのは奇跡だと極論を付け加えている。

『……諸君、少し待っていよう。私達の希望の星がマグレ野郎をすぐに倒してくれるから』

 それからも、ファーディの帝王撃破などの話題になることをスポート・スタッツは無視してその前哨戦(帝王VS女王)で帝王は勢いに乗るはずだったとばかりに意味なく書かれていた。


 リオは彼が格闘一になったのを誇りに思う。そして努力次第で自力で勝ち組になった姿を全世界の格闘選手が夢のものに連勝で夢を与える。ファーディは輝ける者に昇りつめる。この後、二年間、格闘家ベスト三以内に入り続けていた。今は半年ほど前から続く連勝記録と共に一位であり続けている。リオは彼を目標に修行を重ねて十二才になっていた。


 この年、リオは推薦状片手にパトリシアムの前に立っていた。 右手には鋼鉄製の槍が!



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