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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
格闘スクール教官編
39/88

伝統ある格闘大会の骨格が決まった!

 前にパトリオープン開催闘技場コート横にあると思っていた『闘技総合センター』前は別の通用口から入ったので実はパトリオープン闘技場内にあるというのが案内板に気付いてわかった。会議する場所は変わらないのでファーディがリオにVIPルームを開けるよう促した。

「おはようございます。お待たせしてしまったでしょうか?」

 今回は格闘王のバトメットが肘を机に付けた姿勢で頬杖をついていたので威圧感に圧倒された。その圧力で後ろに下がってしまう。

「どうした、リオ。ああ、でもわかるわ」

 二、三歩後ろに下がってきたリオの動きの意味がわかってファーディは得心した。

「いやいや、どんな部屋でも戦士ファイターの気配を隠しきれない。さすがですバトメットさん」


 ドアの近くの席に腰掛けたリオとファーディを見てバトメットが豪快に笑う。

「はっはっはっ、すまんすまん。私が強い……いや、強すぎるなんて噂が流れてから好敵手ライバルや挑戦者が諦めたのかいなくなってな。ここのセイルグくらいだ、相手になるのは。だから闘気を維持するイメトレをしていたんだよ」

 今回はリオ達2人より遅くVIPルームに入ってきたセグ、マジックス、スリントック、フラナの4人がちょうど同じようなタイミングで入ってきて格闘王バトメットに尊敬の念を抱いている事を主にリオに伝えてきた。


「それだけの実力があるんですよ、バトメットさんは」

「そう。だが俺は特に力で負ける気はない。足りないものを補った方があなたとさらなる名勝負が出来る気もするが。俺は力でねじ伏せるのが好きなんでな」

 

 全員が席についた所でスリントックが一言発した。その後で格闘王から今回の議題が伝えられる。

「……目標がある者こそ強くなる……しかし、誰も思いつかない特訓で強者であり続けるあなたは……最高の指導者たりえます」

 スリントックの自分評が高いというのはわかったバトメット、だが指導者ではなく戦いに身を投じていたい彼はそれ以上を語らなかった。

会議を開始しないと先に進まない。そう考えたフラナが話す内容について確認を取る。

「まずはパトリオープンルールの変更するかしないか、それにホログラムを修行に応用出来るかだったかしら」

 

 話題変更にちょうど良いと賛美されていたバトメットが喜びを表に出す事なく、すぐさまそれについて淡々と応じた。

「おおむねその通りだ。では君達の意見を聞かせてくれたまえ」

 今まで数回に渡ってルール変更を良しとしていなかったセグとマジックスではあるが、どうして心境の変化か『現状変化』を受け入れるといったので少し騒然となった。


「急に男女混合の格闘大会を認める気になったのも理由がある。各地の闘技大会や格闘スクールを見学しに行ったりして混合戦のバリエーションに富んだ戦い方に魅せられてな」

 この意見に反論、あの意見に反論などとやっていたらいつまでも並行線で会議の意味が減少していくとセグ達もわかっていたのであろう。だからこそ行動に移した。もちろんリオやファーディもパトリオープン初回からの歴史見識を深めた上で『ルール変更』を求めるつもりだったから肩透かしを受けたかのようになる。


「意見を言い合う気はないのね? 歴史あるパトリオープンのルール変更に納得したのだったら私からは何もないわ。従うだけよ」

 一方的な意見ではない、全員がルール変更がベストだと考えているようなら彼女フラナはそれに順応するだけだといった様子だった。

「いつも通りフラナも行動で意思を示してくれているようだな。さて、次の話は意見を聞きたい議題だぞ」


 あまり口数の多くないスリントックにバトメットが後を任せたようだった。余計な話をしない分、議題からそれないので意外に適任だったりするのだ。

「……先程の話に異論がない以上こちらの議題に集中出来るな。ホログラム自体は珍しいものでもないが……この話の要は自分のデータと戦ってみたいか、それに様々な地形を体験したいかという事になる」

「分身と戦う感覚という判断で良いんでしょうか?」

 気になった点をリオが尋ねた。

「ホログラムとシミュレーションは似ている部分が多い。ところでリオは格闘スクールの授業でシミュレーションゲームをしたんだったな。それを踏まえてまずは話し合いの価値があるかどうかを聞こう」

「それについては私からもお願いするわ。時間の無駄は嫌だもの」


 セグとフラナの問いかけにシミュレーションゲームを授業に取り入れたリオが応じる。

「いろいろと便利な面が多いのは間違いないですね。ただその方法にも懸念があります」

「ほう。ではそれについて教えてもらおうか」

 マジックスにもう少し掘り下げて話すよう(――というか懸念材料を伝えるよう)言われて、リオがこういう場合という想定のもと例を挙げて説明を始めた。

「所詮はシミュレーションなのでその時のデータ以上の実力を身につけるだけで事足りるのも事実でしょう。でもデータを解析した後に大きな負傷を与えられかねない隙があった場合には? その隙に気づいていない人もいるかもしれません」

「いいや、そんな隙があるとしたら気づくだろう普通は。無用な心配に思えるのだが」

 伝えたい危険性をどう伝えればとリオが困っているとフラナが助け舟を出してくれた。


「リオ、あなたはこういう状況だからそうしたいとかの意見をうまくまとめるのが苦手そうね。伝えたそうな事を簡略化して言ってあげましょうか。弱点の対策をしきれない選手に大怪我の恐れ、それと膨大なデータによる機械の異常を心配しているといったところかしら」

 言いたい事を代弁してもらったのでリオは感謝の言葉を告げる。

「あっ、わざわざありがたい事です」

「早く話を進めたいだけだから気にする必要はないわ」

 

 意見を出すだけ出して脳みそ筋肉なマジックスは話を聞くのに専念し始めた。

「まっ、パソコンとかおじさんの俺にはわからん。若いお前らに任せるわっ」

 一応意見の主張をしあっていたのを見守っていたバトメットがまだ特に何を言っていなかったファーディに「お前はどうなんだ?」と問う。その問いかけにファーディが応じる。

「大体はフラナさんのまとめてくれたのと同意見です。俺の場合は試して判断したいですね」


話している間にある程度の時間が経過していた。これからバトメットは用事らしく会議が締めくくられる。会議終了の時にファーディがすぐに終わりますからとバトメットを呼び止めて何やら二言三言話していた。それだけで何かが成立したようだ。

「リオ、俺とお前のホログラムデータをもらってきたぞ。悪い言い方をすれば実験台だな」

「わざとらしくそんな言い方をしなくても……」

 ホログラムデータを渡してきたファーディにリオは苦笑で返す。そんなのは気にせず彼は去っていった。


            

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