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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
格闘スクール教官編
38/88

また現れた覆面マントの目的は?

 ちょっと前から降り始めた通り雨かと思われるものでリオは若干反応が遅れた。しかも地面がぬかるむくらいの雨だったのでぬかるみの土に足を取られる。その覆面男の斬撃をリオはこの状態ではこの方法がベストかと槍を遠心力が発生するよう強く回して弾き返す。

「ふんっ、腕は上がっているようだな。だが、まだだ。まだいろいろと足りん」

 先程の斬撃不意打ち、剣よりも軽い衝撃だった。見て納得! 相手は小刀を使っていたのだ。

「お前にはもう少し手合わせ願おうか」

 リオは前からこの謎覆面のやりたい事がわからない。確実に理解出来るのは次の大会出場を厳しくなる負傷をつけられる恐れを抱くくらいであった。

「でもその小刀の動きがわかる。武器で受けるのにも武器強度の限界があるし、反射神経も重要だって事だな」


 リオは覆面マントの小刀を避け続けていた。そうしながらもこう邪魔されては迷惑だと覆面の正体を知るためにぎ取ろうとするのだがのらりくらりとした動きなので捕まえられない。去るつもりだったけど足が止まってしまったメリアが息を呑んでただ見ているしか出来ない間は覆面マントはそんな格好をしている割に見せつけるかのようなマネをしていた。それなのにどうした理由か、中庭へマギーが姿を現した時に去っていったのである。

「お前の力を図るのが目的だ。見せものではない」

 そう言い放ってその場を後にした。


「いけね~。次の授業に使う資料を用意しておかなくては」

 また襲いかかってきた覆面マントの意図と正体が気にはなるが、今はそれよりも格闘スクール教官の職務に戻ろうと切り替えの早さを見せる。

「メリアも早く教室に戻れよ」

 状況の変化の速さに理解が追いつけずにいるメリアに気付いて、リオ先生が優しく声をかけた。


 リオと入れ違いでやって来たマギーが残念そうにする。

「中庭にいる様子だったから親友として少し話せる事もあるかなって思ったんだけどタイミングを逃したか。メリアさん、平気?」

「あっ……ええ大丈夫です。チャイムが鳴りましたしマギーさんも戻った方が」

 次の授業開始を知らせる合図チャイムでメリアだけが急ぎ足で先に教室に戻っていった。

「さて、少し遅れたとしてもしょうがないわな。急な生理現象には勝てないから」


 言葉通りに行くつもりだったが、覆面マントが隠していった変装グッズが風になびいているのが気になって目に留まる。

(人知れず正体不明なヒーローっていうの憧れたなぁ)

 つい出来心でマギーが変装グッズを身につける。そこに忘れ物をしたリオが帰ってきた。

「いけないいけないだよ。俺の大事な武器が手元か武器置き場にないと落ち着かない!! 運悪く悪用される確率もあるし気をつけないと。お前、まだ!?」


(やばっ!? リオの奴が勘違いして――)

 この覆面マントには不意打ちを何度かされていた。その影響からか、リオの体が自然と動いていた。マギーが持ち歩いていた剣でどうにか受け止める。腕にしびれが走るのでさすがに格闘センスの塊の奴の一撃は重いと思う。

「俺はもう何かをする気はない。ではさらばだ」

 さっきの覆面マントとの実力差を悟られる訳にはいかない。リオに無用な心配や、実力差を勘違いさせてしまっての窮地に陥らせる展開は望まない。とりあえず覆面マントが偽者だと悟られる前にと、じりじりと拮抗した雰囲気の隙をついて後退していた。

「隙あり!」

 リオにとってやられっ放しというのは自尊心プライドが許さなかったのだろう、偶然マントがなびいて格闘スクール生徒校章が見えかけたのを抑えた結果、鋭く速い槍攻撃をたまたま避けれらのだとマギーにとって冷や汗ものな初撃があった。


 逃げる算段を練るために攻撃へ転換。前の格闘スクールで修行し合った仲だ。その槍の動作に対処するにはと、得意な交差クロス斬りでリオ自身を狙う。

(何……だと。今始めて見せたはずの槍の技術に対処された? その方法から反撃を狙える奴はマギーくらいだったのに……まさか! 覆面マントの正体って!?)

 もう授業開始時間になっているし、リオが少なからず衝撃を受けている様子の合間をぬう。マギーはスピードだけに意識を集中してリオの視野からいなくなり、覆面マントを脱ぎ捨てて教室に戻っていった。


 覆面マントの正体、あくまでもそうかもしれないという候補の1人にすぎない。鍛錬を積み続けているリオより、力を隠している気配のする覆面マントの実力が上だと認めざるを得なくなった場合はその仮定が崩れてしまうが。

「しまったな~。理由はどうであれ授業時間開始してしまっている。急いで担当クラスに行かないと」

「おや、リオ先生。授業に使う資料でも持って行き忘れましたか?」

 メッレン理事長に見つかって聞かれたので、リオはつい口からでまかせを言ってしまった。


「そっ、そうなんですよー。うっかりミスとか生徒の見本になるべき先生としては大きな誤ちですよね……」

「人間ミスは誰でもあります。その回数を減らせば問題有りません。それはそうと、リオ先生に急用なお客さんが来ているのでお呼び出しするつもりでした。ちょうど良い所で会えましたね」

 理事長が応接室にお待たせしているというのでお客さんの元へ向かおうと思ったが足を止める。

「せめて担当クラスに一言でも……」

「授業を大切にしたいという姿勢は立派ですよ。まっ、心配しなくて良いように私が行こうか」


 受け持ちのクラスに代わりに行ってもらえるのであれば、リオは来客に集中せざるを得ない(別に来客対応が面倒な訳ではない。こんな時期に誰が来たのか不明で少し首をかしげる状況なだけ)

「お待たせしてしまったみたいで……ファーディさん!?」

 一度目にわざわざここまで来てくれたファーディなのだから再訪しても何の不思議もないはずなのだが。理事長とは旧知の仲だからたまには会いに来る事があるだろうとは思う。驚いてしまったのは格闘スクールの予定が決まるまでしばらく会う事はないだろうと前に会った去り際に聞かされていたからであった。


「予定が変更したから報告に来たのさ。『緊急格闘審査会』でパトリオープンのルール変更をはっきりさせるという事。もう1つはホログラムが採用に値するかとかそういう話らしいぞ」

「緊急なんですよね? それならメッレン理事長に出張届を!」

 ファーディがリオに用事があると面会しに来た時点でメッレン理事長は準備を済ませてくれていたみたいだった。ファーディから必要章類を渡されてサインをする。それ《しょるい》を理事長室の机の上に物を置いて固定の上、置いていった。

 リオはファーディに先導されてメッレン武術スクールを後にする。



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