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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
格闘スクール教官編
31/88

リオ 武術スクール編 3

「おめでとう! こんばんはクラスの皆とお祝いパーティでもするといいよ。<スーヤコ>を予約しておいたからね」


 リオとしては新しいスクールの1年間で同じクラスの人達と親しい関係を作りたい気持ちは大いにあったのだが……パトリオープン準優勝者という事でどの人物にも気後れしてしまうというのがあったのだろう。このクラスにはリオを憧れの存在と見ている人も半数以上いそうなのでくすぐったいが、それも親しい間柄になれなかった要因といえた。


 この歓迎会で少しはクラスの人達との距離が近づくといいなとリオは思った。マギー以外にも親友がほしいという気持ちもある(まだパーラは何回か遊ぶ程度の友達という認識な関係)


<スーヤコ>は武術スクール関係者行きつけの店である。店員のアメリアもパトリオープン前から常連のリオを祝ってくれた。場の雰囲気で1年間共に修行に励んだ級友達とどこか一体感を味わうことが出来た。


 リオの『教官採用試験』はその《武術スクール》1年目最終日だったので、彼は新学期の4月まで各種手続き以外心構えを整えつつ待機している。


「うん、あいつなら1年で教官になれると思っていた。協力を求める事も可能になっただろう」


 メッレンの武術スクール、理事長室から出てきたという事実からしてこのリオを見つめている人物は理事長の関係者だと予測出来る。どうやらリオに目をつけて何かをお願いしたそうだが――



         ◇             ◇              ◇  


             

 格闘スクール史上初の16歳で教官採用試験を合格したリオ。前例もない訳なので困難があっても未来の新人のために日記でも記しておこうかと思う。予定は未定だが。


 全てが初体験となる教官という職業はこれから学ばなければならない。自信がないだなんて言っていられない、リオは入学式に来た新入生のクラスで教授の役目を申し付けられたのでどんな生徒達なのかと気になって見定めようとしていた。


 新しい環境でスタートする生徒達も多いと予想出来る通り不安や戸惑いを瞳に宿していたりはする新入生は多く見受けられる。だけどそれ以上に期待(学校への期待・自分がどれくらい強くなれるんだろうという期待など)それらをリオは新入生を包む空気の中で感じた。


 それとは別に、クラスのまとめ役を引き受けてくれそうな優秀だと第一印象で判断可能な生徒をリストアップしたり、いわゆる問題児っぽい生徒達にはアタリをつけておいて早期発見から解決まで行おうと意気込んでいるのだ。


 そんな生徒はいて欲しくもなかったのだが、精一杯のおしゃれをした多分貧民か中級平民の出と予想可能なまだらなピンク色の髪を染めた女の子が、一応貴族のナリをしている女の子グループ3人組にからかわれているのを見る。少しでもエスカレートしたら間に割って入るかと決めた。


 どうしても人間は自分より弱い者をしいたげる事で自分が優位な気持ちを持ちたがる奴がいるのは事実だ。そういう彼女達をリオは注意深くチェックしておく事に決め、本来なら先にやっておきたかったまとめ役になりえそうな候補を絞り込む。


 そうしてまとめ役の人材を見定めていた時にリオは親友の姿を見た気がしたのだが、その彼は直ぐに席を外したのでしっかり確認できなかった。きっとすぐに戻ってくるだろう、BMSバトルマスタースクールで親友だったあいつがここに来る理由はないはずと、もう一度他人の空似かどうか見ておきたかったのだがメッレン理事長に呼び出されてしまった。


「リオ先生、あなたに重要なお話があるというお客様がお見えになっていますよ」


 新任の先生に大切なお客様? 父か母にでも大変な事態が起こったのだろうか。メッレン理事長にまだ入学式の片付けなどが終わっていませんがと訊ねてみると「あなたもよく知る人物が待っています、そちらを優先してください」と言われた。理事長室のドアをノックして入ると、まさかの人物がくつろいでいる。


「ようっ、期待の星。パトリオープン準優勝者だもんな。まずは教官の座につけたか」


 開いた口が塞がらないとはこの事だろう。理事長のメッレンとは親友だというのがあるから会いに来るのもありだと思える。でも貧民街出身というのと歴史あるパトリオープンで決勝戦を演じた程度の関係でしかない自分に用事がある!? 理由がわからなかった。


「教官になったお前をいつまでも貧民の小僧呼わばりするわけにもいかねえわな。ミドルネームの『リオ』って呼んでいいか?」


 リオは困惑した表情を浮かべながらも、ファーディに聞かれた事に関しては首肯する。


「それで僕に話があるんですよね?」


 戸惑いながらも重要な事をしっかり質問したリオに対してファーディが受け答えした。


「お前が権威ある『格闘総合審査会』の若者代表に選ばれた。だから初めての会合に俺が呼んで連れて行く役目を率先しているわけさ」

「パトリオープンのルール決めまで審議する恐れ多い場所に!? わかりました、助力します」


 ファーディが早速用意を催促してきたので何故かを聞くと、2時間~3時間後に会合が開始されるとの事だ。すでにメッレン理事長に『リオ先生出張』という扱いにするよう進言してあるという説明を受ける。


「ついて来いよ、会合場所まで行くぞ」



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