リオ 武術スクール編
メッレン設立の格闘スクール。1年程度だからまだ新築のようにどこもかしこも真新しく見える。ただ、リオの様な実力者の一撃が壁などに当たると強烈な威力で壊れる事があった。それでも格闘家の集まる施設のそういった場所は他格闘スクールの視察でメッレン理事長とメッレンの目にかなった格闘家がこのスクールの先生にスカウトされているのですでに熟知されている。
結局はまだメッレンの望む施設にはなっていないのだ。何度も修繕にかこつけてスクールの生徒も感じている許容範囲の不備は次から次へとリフォーム改善した上で良い設備を追加していく。この半年~10ヶ月くらいかけてこのスクールを満足いくものに王者だった頃の貯金を用いて資金投入援助を理事長自らしたのであった。
いくらより良い格闘スクールにしたとはいえ、若手の格闘教官が欲しい所である。この格闘スクールも教員採用試験の出場者を募集した。だが、まだここの格闘スクールのリオ以外の推薦された約10名――自信がないか実力の足りなさで辞退したのが現実である。その教員採用試験の1ヶ月くらい前にメッレンとの模擬戦闘をする事が決まった。
せっかくの機会なので、槍の攻撃方法を下段のみに固定するという賭けに出てみた。それくらい出来ないようでは、人に教えるなんて未熟なまま出来ないと今からでも断る事も可能なのだから。もちろんそれをメッレン理事長にさとられてはいけない。やはり格闘スクールの優秀生徒になっているリオは他生徒の手本になっているのである。
スクールの授業時間割りで昼の部、6時間目のチャイムが試合開始の合図代わりになる。この世界では剣利用者がメインなので、それ以外の系統武器を持っている人達は全世界人口の2割程度になりつつあった。リオは自分に合ったしっくり来る長槍を極めるつもりなのであまり気にしていない。しかし、そのリオよりもっと珍しい武器を使用しているのがメッレン理事長だ。メイン武器に10年どころか20年以上ハンドアクスを使っているのだから今でもかなりの強敵だと感じ取れた。
試合合図のチャイムは鳴ったものの、もちろんメッレン理事長もハンドアクスの特性など経験値が高いためか最初はリオの出方をうかがう気まんまんである。しかも下段の構えでリオがどんな攻撃がやりやすいのかを探りながら。リオは自分のしようとしている事がバレては心象良くない感じになるだろうと約1年間基本技術に費やしてきた成果を見せようと長槍で突撃する。かなりの速度で近くに来たリオの槍の切っ先をどうにかハンドアクスで弾き返す。
「くっ……なかなかにきつい」
メッレンは防具越しにリオの攻撃を受けた時、蒸れた汗以外の汗も流した。
「よし! これで槍での一番の恐ろしさは突きだと印象づけられたな」
リオの思い描く戦法はどこで足払いをかけて斬りまたは突き上げで勝利を取りに行くかというシンプルなものであった。実戦では想像を超える事もあるので動じない忍耐も必要だろう。こうやって考えている間もそれを狙われる愚を犯す訳にはいかない。だからメッレンのハンドアクスを自由にさせないために長槍で素早く脇腹・弁慶の泣き所・ヒザ付近を牽制も兼ねて狙い続けている。
「そう簡単にいかせるわけには!」
相手側、メッレンの考えもただ単にハンドアクスを振り回さず、リオの長槍の動きを一時的にでも止められたらという思考で動体視力を信じてあわよくば長槍の柄を叩き斬るまでを狙った。
「!!」
長槍を抑えられたリオ。武器を壊されては相当な痛手なのでどうにか長槍をひく。
「ここが狙いどころだ!」
メッレンが自分の今までの格闘実戦から感じ取ってきた自分の感覚を大事にしている一撃を放とうとしている。対するリオには天性の格闘才能があるかもしれなく、メッレンが今になって形勢逆転を図ってくるだろうという事を感じ取っていた。
(わかる! メッレンさんのやりたそうな戦略が)
リオは次なる行動で勝敗を決する事が可能だとイメージが出来ていた。下段の構えでする動きは書物で調べて頭に叩き込んだし、型だけなら万単位で体に染み込ませてた自負もある。しかし実戦でやるとなるとまた違いがあるはずなのだが。
「そんな……バカな」
メッレンの思惑の成功にはリオの正面にせまる必要があった。何をされてもかわしたり、武器をぶつけてそらしたりするつもりでいたのだが単純な戦法にはめられた。
槍の柄を足に引っ掛けられた結果、見事に転ぶ。
「あいててて……」
転げまわってでもリオの長槍の追撃を避けようとするメッレンだったが、落ち着いた気持ちでいるリオに遠目のリーチ内から装備ごと突き上げられてどうしようもなくなる。潔く諦めた。
さて、後何回後にヒロインを登場させられるかな?
次かもしれないし、しばらく先になってしまうかもしれない。
出来るだけ約1ヶ月後には投稿予定です




