決勝戦 2
彼は受け身を封じられた状態で芝生の上に後頭部を強打する。全然足りないとばかりにファーディの顎に全体重をかけた拳をリオはお見舞いするつもりである。そのリオが勝負をかけたと思われる一撃を悟ったファーディは恐怖心によるパニックをどうにか鎮めて一度冷静になった。[経験は最大の武器、だからチャンピオンであり続ける]最善の防御手段を取る。勝機の芽を消されまいと、リオが彼の盾を取ろうとした。
盾を強く前方に押し出して、彼はリオをどかそうとする。その威力にリオの体重はついていけず、後ろに飛ばされた。
その行動を諦めたリオは、他の方法として一番有効だと考えて、少しでも長槍を持ち直しさえ出来ればと勝機の高さを何よりも優先して取りにかかる。読まれてしまうことは自明の理だったかもしれない、非情にもファーディが長槍の前に立ち塞がった。観客達が軽いどよめきを起こしはしたが、十数秒で静まり返る。
(リオ、君はすばらしい相手だったよ。実力も評価できる。だが、勝つのは俺だ)
この神聖なるAコートの勝者は渡さないとファーディがトドメの一撃を繰り出した。
リオは諦める気がない。今までの攻防にも自信を持っていた。観客席からの両親や親友の声援に勇気をもらい、純粋にファーディとの勝負に喜びを感じている。持てる力の全てをかけて、リオが勝利の算段で確率の高い策で最終決戦に向かった。だが、一瞬でファーディからの腹部への一撃に沈む(理由は不明だが、剣ではなく膝をリオの腹にめり込んでいるかのような形だった)その一撃でリオは、不自然な体勢で芝生の上に倒れた。審判がそれで勝敗を宣言しかかったが、リオは起きあがる。
無意識での闘争心の強さ、リオが勝負再開可能と認識したのと、会場の熱気を総合して審判は異例の休憩を入れる決断を下した。休憩中に意識を取り戻したリオだったが、体が思うように動かせない。十五分後、審判から試合再開の声がコート中にかけられる。
長槍へとリオは惨めにも近づいていく。観客達はファーディの相手に対する容赦のなさを垣間見た。リオの手が長槍をつかみかけている。観客達がリオの粘りを期待していた。長槍を持って起きあがれないリオをファーディはただ見ている。審判がリオの状態を見て、きつく唇を引き締め、宣言した。
「……勝負あった!! 勝者、ファーディ」
審判の一声後、医療班がAコートに駆けつけてくる。それでリオが試合続行可能なら観戦し続けたいと感じる魅力があった。しかし、観客の誰もがリオの選手生命を心配して労をねぎらう声と賛辞が響きわたったのである。
大会警備部長ジッツの声明
"田中カルテリオ選手を偉大な格闘選手と称える。彼を貧民だからと軽く扱おうものなら私を含め、彼のファンになった者は黙っていない。これで少しでも差別人種が減るといい。誰もが平等
の世界の世の中になることを願う"
薄暗い通路でリオが意識を取り戻す。
「し…………試合は!? 長槍はどこに?」
「大会本部で丁重に預っているよ。安心して」
担架に載せられているとリオは理解した。長槍の所在がわかって一気に疲れが押し寄せてくる。光が遠ざかっていくのを感じながらリオはまた眠りをついた。
A コートでファーディが観客達の興奮に応えて右拳を掲げる。装備品を欲しがるので観客達に一部を投げた。大人に交じって装備品を入手しようとしている子どもがいる。
「やめろ、ルーリズ。パパがもらってくるから」
「僕は今、欲しいんだ。邪魔しないでよ」
そんな中、コート上では大会役員による表彰の準備が整いつつあった。コート脇でマスコミ陣が拍手を送っている。彼だけのAコートの内にファーディは芝生の上へ手のひらをそえた。
(まだまだここはゆずらない。次も優勝だ)
一度まとめて一部完結な形にしようかなと模索中。




